第215話 その後の色々
その後、俺たち無名パーティはギルド活動を再開した。
虚無の宴パーティに関してだが、当たり前だが、解散しギルドから追放された。
マーケンは収容所で極貧生活を送っているだろう。しかも、マーケンは俺との戦いでかなり街を破壊して回ったせいで、その損害賠償も請求される始末。ざまあねえな。今も王都の街の復興は続いている。
処刑なんて声もあるな。異世界らしいが、処刑なんてしたらそれで終わりだろう。終身刑の方が苦しめると思うけどな、ぐひひ。
虚無の宴のその他メンバーは、完全に周りからの信頼を失った状態で、どこのギルドにも受け入れてもらえず、誰からの助けも得られず、まるで犯罪者かのように避けられ、食っていくことすら困難になっているくらいだ。
誰からも信頼されず、街に出ては暴言で叩かれ、買い物すらまともにできないシークを見たこともあるが、ほんと良いザマだ。
弱者男性の気持ちを味わえ。人を信じられず、敵意を向けられ続ける苦しみを味わえ。俺は前世でたっぷり味わった。
ただ、その後、極限状態になれば、何をするか分からない。無敵の人になるか、自害するか、全てを諦めひっそりと暮らすか。こいつらの心が擦り切れた時、どうなるかは見ものだな。
で、俺たちは今は気軽に依頼を続けている。誰にも邪魔されず、快適で、クラウドもいつもの調子に戻って、戦いも指揮もキレキレだ。パーティの雰囲気もすっかり良くなった。
パーティが崩壊しかけていたとは思えないほど、俺たちは楽しくギルド活動をしていた。
そして、パーティの評判も上がった。みんなそれぞれに、一定のファンも再び付き始めた。俺の冤罪は晴れたが、ほんの一部の人は疑っているようだ。まあ仕方ない、出る杭は打たれる、俺を良く思ってない奴も多いだろう。
冤罪ってのは晴れたとしても、全てが元に戻るわけではないからな。疑いをかけられれば、その時点で人生は終わりだ。ネット社会の日本なら特にな。とにかく、本当に良かったよ、普通の生活に戻れて。
俺も本気で病みかけたぞ……まったく。
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とある日。
俺たちはいつものようにギルド活動のために、ギルド内に入る。すると、入った瞬間、受付嬢と目が合う。ああ、確かこの人、俺を食事に誘ってきた新人受付嬢の……最近見なかったからなぜか懐かしく感じる。
と、その受付嬢は目をうるうるとさせたと思ったら、急にカウンターから飛び出してきた。
「本当にすいませんでした~~~!!!」
え、何がすいませんなの?勢いのまま、俺に抱き着いて来ようとしたので、ひらりとかわす。受付嬢は、ぼへっ!とそのまま勢いのまま転んだ。うう……このまま抱き着かれてまた冤罪なんて被ったらまた地獄だぞ?ああ怖い怖い。
受付嬢はハッとした後、すぐカウンターに戻り、困惑している俺たちに事情を説明する。
「わ、私、私ぃ……あの時無名パーティの方々が強奪された時……あの人に脅されてて……証拠がないと言わないとクビにするって……怖くて逆らえなくて、無名パーティに罪を着せてしまってえええ!」
またあわあわと泣き始める。なんだこいつ、逆にうぜえんだけど。
「そ、それで、無名パーティの方々が解散手続きに来た時も、本当は私、無名パーティはそんな人たちじゃないって、言いたかったのに……勇気でなくて……病んじゃって、しばらくお休みを頂いてて……うう。本当に合わせる顔がないです……すみません……」
なるほど、そういう事情が。あの受付嬢ってやばい上司だったんだな。いるよなあ、ああいうの。権利を主張してもみ消したり都合のいいように動く。
会社だろうが学校だろうがどこにでもいる。腹立つわ~。逆らえないのを分かってて立場が弱い人をそうやってコントロールするんだよ。正直仕方ねえよ。
いじめもそうだが、いじめを傍観してたやつも罪なんて言うが、俺はそうは思わん。権利を持つ奴に逆らえば、自分が狙われるかもしれない。逆らうってのは怖いんだよ。
俺はクラウド達仲間と顔を見合わせるが、お前が慰めてやれよ!みたいな視線が俺に注がれる。いやなんでだよ!今この瞬間もなんか知らんけど俺がいじめてるみたいじゃねえか!勝手に泣かれてなぜか俺に愚痴ってきて!
ユイもシオリーも助けてくれないし……。はあ、ここは共感でもしてやるか。
「ああ、大丈夫です。俺もその、分かるんで。うざいですよね、権利を笠に着て逆らえないのをいいことに立場が弱い奴をコントロールする。でもあの人がクビになってよかったですね」
「え?……そ、そうなんですよ!聞いてくださいよ!この間なんかあの人私の弁当盗み食いしたんですからね!?クールな無表情キャラ演じて実際はあんな性格悪くて!授業料よ、とかふざけないでくださいよ!ほんと、いなくなって清々しました!」
お、おう……ま、まあ元気になって良かったのか?地味に目立ってるしやめてくれない?すると、周りの視線を見て少し顔を赤くした後、深呼吸をして落ち着く。
「はあ……お見苦しいところ見せてしまいすみません。吐き出せて少しすっきりしました。その、本当に申し訳ないと思ってて、わ、私は真面目に今後も働くので、何かあったら言ってくださいね!」
「え、あ、はい」
いつもの笑顔に戻り、俺に微笑む。少しドキッとしてしまう……クソ、男の性欲ってのはチョロすぎやしないか?ただ可愛いだけなのに……俺にはユイとシオリーがいるんだぞ。
受付嬢は少し上目遣いでうるっとさせながら、俺を見る。
「それにしても、チーさんはやっぱり話しやすくて優しくて……ユイさんたちが羨ましいですよ」
「チ、チー君はまだ渡さないよ!?」
「まだ?」
ユイ、ちょっと何言ってるか分からないぞ。




