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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第5章 ギルド編

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第211話 パーティの崩壊

 



 翌日も無名パーティはチー抜きで依頼をこなしていた。


 今日は依頼は、Aランク、レベル5のウッドトレントの討伐だ。


 最近、北の森ではあたりの木々の生命力が非常に弱っていた。原因はウッドトレントだ。ミドルトレントの上位種で、辺りの木々から魔素と生命力を奪い、成長していく。そのため、体長約8mにも及ぶ巨体だ。


 ミドルトレントと同じ、火が弱点のため、サンの上位火魔法をとどめに立ち回る。


「いくぞ!」


 クラウドの号令で、ユイは全員にバフを付与し、レッドが速攻トレントに飛び込んでいく。伸縮可能な長く鋭い木の幹を、次々とレッドに向かって飛ばしていく。レッドはすべて見切り、幹の攻撃を足場にしながらトレントに近づいていき、次々と斬っていく。


 クラウドはチーがいない分、後衛を特に注意しながら水流型で受け流して戦う。


 途中、トレントはリンゴを振り落としてくる。そのリンゴは衝撃が加わると起爆する。そうなる前に、シオリーは風魔法ですべてトレントに跳ね返す。トレントはもろに爆発を受け、ダメージを負っていく。


 サンは火魔法の詠唱を続ける。


 ここまで順調に見えるが、これまでチーが平然とこなしていた死角からの攻撃への対応を、今は誰もできていない。


 クラウドの足元に、地面を潜らせたトレントの幹が迫る。クラウドは、未だ本調子ではないが、何となく地面の違和感に気づいていた。クラウドは地面に意識を向けたその瞬間。どこからか飛んできた弓矢がクラウドの足元の地面に突き刺さる。


「ぐっ!?クソ、誰だ!?」


 その矢に気を取られたクラウドは、そのまま地面から飛び出してきた幹の攻撃を食らう。幹の先端は鋭く、槍のようにクラウドの腹に深く刺さった。血が噴き出し、クラウドの視界は一気に赤に染まる。


「お、おい!?クラウド!?クラウドオオオオ!!!」


 それに気づいたレッドがすぐにその幹をぶった切り、クラウドを背負って遠くに避難する。


「撤退だ!クラウドが重傷だ!サン!詠唱をやめろ!ユイ!治癒魔法の準備はしておけ!」


「わ、分かった!」


「今行くよ!」


 レッドがすぐにその場で判断をし、指示を出す。レッドはクラウドを背負いながら森を駆けていく。ユイとシオリー、サンもそれを追いかけていった。


 無名パーティは、初めて依頼に失敗した。



 ------



 無名パーティは俺の家に来ていた。ユイはクラウドの治癒をしている。


「ふう、何とか応急処置はできた。一応、今は大丈夫。ただ、クラウド君はしばらく安静にしなきゃダメ」


「すまない、俺の、不注意で……」


 クラウドは申し訳なさそうに謝る。


 クラウドの負傷――それは、このパーティの柱が折れたに等しい。最近のクラウドは全く本調子じゃなかったし、もしかしたらと思っていたが。


 今、非常に空気が重い。誰もあれからしゃべらない。まさかここまで、虚無の宴が俺たちを潰しに来るとはな。


 このパーティももう崩壊寸前だ。自称リーダーの俺、そして柱だったクラウドの負傷、そして評価の大幅な下落。こんな状況で、立ち直るなんて無理だ。


 しばらくして、ユイが俺に手招きをする。俺はベッドから出てきて、ユイについていく。2人きりになれる庭へと移動する。空は透き通るほど綺麗なのに、心は晴れない。


「チー君。相談があるの」


「はい」


「もう、このパーティ、解散しようと思う」


「あ、え……?」


 まさか、ユイからそんな言葉が出るとは思わなかった。いや、ユイも考えた結果だろう。俺もそうなるかもしれないと覚悟はしていた。仕方ない。


「……そうですね。奇跡でも起きなければ、このパーティは再起不能です」


「……うん。解散の手続きに行くから、付いてきてくれないかな。手続きにはリーダーがいないとだめだし」


「分かりました。……ヘルメット付けていいっすか」


「もう……受付の時は脱いでよ?」


「え、まあ、はい」


 怖いからさすがにね。ユイは覚悟を決め、みんなのところに報告に行く。


「みんな聞いて。……このパーティは、今日で解散する」


「は!?おまえ、何言ってんだ!」


 いち早く反応したのはレッドだった。ユイは反論する。


「リーダーのチー君も同意見。私もそんなことしたくないけど。これ以上やれば、みんな精神擦り切れちゃって、みんな壊れちゃうから……」


 それでもレッドは負けじと反論しようとするが……。


「待て、俺はまだ!……やれるか……どうか……」


 レッドは急に勢いを衰える。レッドも、限界だったのかもしれない。みんな、俯いている。


「これから、チー君と一緒に解散手続きに行く。……みんな、ありがとう。これからも、よろしく……ね?」


 ユイは泣きそうになりながらも、そのまま振り返り、家を出ていく。俺は、ただ、ユイに付いていく。



 ---



 ギルドに着いたユイと俺はさっそく受付へと歩く。


 俺たちが入った瞬間、場が沈黙に包まれる。恐ろしいほどの敵意を帯びた視線。ユイも震えている。俺はヘルメットで顔を隠していても、やっぱり怖い。早く帰りたい。


 やばい、怖い。手が震える。足が震える。鼓動が速くなる。吐き気がする。息が苦しくなる。こいつらは俺を見て笑ってる。バカにしてる。幻聴が聞こえる。もう何も見たくない――


「チー君、大丈夫……」


 ユイは俺の手をぎゅっと握る。俺は少しだけ、落ち着いた。それでもまだ息遣いは荒い。何とか冷静さを保つ。


 ユイは解散手続きの書類を持って受付に出す。今日の受付クールな方の受付嬢だ。受付嬢は一瞬だけ、にっと薄く口角を上げた。でも淡々と手続きをこなす。


「解散手続きですね。了解しました。リーダーはどちらに」


「あ、えと、俺です……」


「……あの、ヘルメットは脱いでください」


「え、あ、はい」


 俺はヘルメットを脱ぐ。その瞬間、俺に集まる視線。もう耐えられない。


「それではここに、指にインクを付け、この部分に指紋を押してください。手続きはこれで完了になります」


 俺は言われたまま、インクに指を付け、紙に押し付けようとした、まさにその時だった。


 急に後ろからドゴーン!という音とともに俺の後頭部に鈍器がぶつかる。マジで痛い。


「いってえええええ!何だてめえ!!!」


 やべ、我慢できずに素が出て叫んでしまった……。ん?俺の足元には、ギルドの玄関扉の破片が転がっていた。これが俺の後頭部に当たったん?なんで生きてんの俺。


 俺は玄関の方を見てみると、黒髪の人物が、足を蹴り上げたままたたずんでいた。あれ?この人って、チハル……?


 チハルはそのまま、俺の方にズカズカと歩いてくる。


「何だてめえ!!!って言った?」


「あ、いや、そのまじですんませんほんとにチハルさんとは思わなくて……」


「冗談だよお、ごめんな?まさかそこにチーがいるとは思わなくて……」


 いやそもそもドアを破壊して入ってくんな!まあそんなダイナミックな登場だからか、いつの間にか周囲はざわついていた。


「あの人ってSSランクパーティのリーダー?」「チハル様?」「すげえ、本当にいたのか!?」と口々にざわめく。


 チハルは有名だったようだ。ただ、SSランクパーティの存在は噂でしかなく、実際に見たのは初めてという者が多かったようだ。


 そしてチハルは、言い放った。


「おい受付、その解散手続き、一旦やめろ」


「え?」





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