第13話 なんかめんどくさい方向に話が進んでる
なんだかんだで時は過ぎ、いつのまにか13歳になっていた。
13歳になる年の初め、1月から義務として学園に通うことになる。
今日は学園に出発する3日前だ。村は雪が少し降り積もって銀世界……とまではいかないけどところどころ白く染まっており、家の中でも肌寒くなってきたころ。
今日もユリアが俺の家に遊びに来て、ユリアの話をだらだらと聞いたり、魔法を教えたりしていたのだが……父さんが何か大事なことがあるような、真面目な顔で俺たちに言葉をかける。
「チー、ユリア。俺と母さんはメイドと話があるから奥の部屋に行ってくる。お前らはこの部屋で遊んでおけ」
「え、あ、はい」
「はい、わかりました」
俺とユリアは軽く返事をして、父さんたちは頷いてから、奥の部屋に籠っていった。
……俺たちは気にせずにいつも通り過ごしていた。……でも気になる。重要そうな話だろうか、わざわざ、俺たちを隔離して何を話そうとしているのか、どうしても気になる。
隠し事は嫌だなあ。気になるなあ。人間、隠されたら知りたくなる、そういうもんだろ?ヨシ。盗み聞きするか。
俺はよっこらせっと立ち上がった。ユリアは……どうしようか。待ってもらうか。ユリア正義感強そうだし。
「えっと、ユリア」
「なに?」
「あの、ここで、その、待っててもらえませんか?」
すると、ユリアは急に肩を急にぴくっとさせた後、首を横に振りながら声を荒げる。
「え、いや、それはいや!」
ユリアの豹変に俺はたじろぐ。急に何があった?俺なんか変なこと言ったか?
「え、あ、どうしてそんなに怖がってるんですか?」
「一人が、怖いから、また、あいつらに、狙われるかも、しれないから……それに、また、言うこと聞かずに勝手に行動したら、メイドに怒られる……」
「……分かりました」
異常に1人になりたくないようだが、何かあったのだろうか。それに、また言うこと聞かずにって、何か起こられたことがあったのだろうか。にしてもここまで怯えるか?
狙われるって誰に?いやまあ、この村ではユリアは人一倍高貴というか、顔も整ってて時々所作も綺麗だったりする。やはり元貴族?まあ興味ないけど。
う~ん、それだとここから離れられないと盗み聞きができない。だったら……。
「じゃあ、一緒に付いてきてください。あ、もちろんソーシャルディスタンスは保って」
「なんで⋯⋯まあ、それならいいけど……ぜ、絶対離れないでね?ていうか、なにするの?」
「盗み聞き」
「へえ、そうな……ん?いやなんで?」
ユリアが肩をすくめて俺をジト目で見てくる。まあこいつ正義感強いし反対されるだろうなとは思ってた。俺は急ぎたいので、ユリアに問い詰める。
「来るんですか?来ないんですか?」
「う、うう……い、行くよ。でも、私は聞かないからね?盗み聞きは良くないと思うから」
「聞きたくなければ、聞かなくていいっす」
よっしゃ。これでユリアも共犯者だ。俺と一緒にいる時点でな。ユリアも道連れにしたことだし、俺は足音を立てずに、奥の部屋の扉の前に行く。そのまま扉で聞き耳を立てる。
ふむふむ。聞いている感じ、どうやら真面目な話をしている。それも、俺に関しての話のようだが?
「それはつまり、チーをユリアの護衛、要は”騎士”として付けるということか」
「はい。ちょうど、チー様と同い年で学園に一緒に入学できるので。それに、チー様はすでに人並み以上に強いと思われます」
騎士?なんだそれ。護衛とか絶対めんどくさそう。え、普通に嫌だ。それは常にユリアに付くってことだよな?つまり社会的リスクが常にまとわりつくってことだよな?護衛する以上ユリアに接触する可能性は免れない。
「痴漢!」「触られた!」って言われた時点で俺の人生は……ぶるぶる。いやそれもそうだが、護衛とかそんな危険なことできるか!俺は平和に生きたいんだよ……
「まあ正直、ユリアが王族の姫だったのもあまり信じられないが……息子が、そんな大役を受けてくれるだろうか。あんな性格だから、めんどくさがりそうなのだが……」
お、よくわかってんじゃん、父さん。俺は引き受けるつもりは全くないぜ。が、メイドの一言で絶望に落とされる。
「はい。問題ないです。チー様は思っている以上にすごい方ですから」
おい!なんでメイドが俺が引き受けてくれる前提で話してるんだ!父さんはなんか言い返せよ!母さんはさっきから何も言わないのか!?
俺は絶対そんなめんどくさそうなこと引き受けないからな。
てか、ユリアが王族の姫だって?俺はユリアをちらっと見る。改めて見ると、金髪に碧眼で顔も綺麗だし、確かに清楚というか、姫っぽいしな……。
貴族かなあとは予想してたけど貴族より上を行く王族とは思わんかったわ……
ユリアは俺に見つめられて目を点にして「?」を浮かべる。俺はすぐに目を逸らし、俺は再びドアに耳を付ける。
「メイドがそう言うのなら、大丈夫なんだろう。ユウは問題ないか?」
「うん。私も大丈夫だと思いますよ。チーはすごいんだから」
父さんも母さんも俺を騎士にする気満々じゃねえか。再びメイドが二人に頭を下げているのが隙間から見えた。
「よろしくお願いします。どうか、ユリア様を」
「まあ、それは俺じゃなくて、チーに言ってくれ」
「そうですね。では……」
すると、メイドがこちらに近づいてくる。あまりにも自然にこちらに寄ってきて、疑問に思う暇すらなかった。そして扉の隙間から目を光らせて覗いてきた。
「チー様、よろしくお願いします。どうかユリア様を」
「ひっ!?」
ドアの隙間から普通にメイドと目が合い、平然と頼まれる。俺は足がすくんで、後ずさりした。怖すぎんだろ、いつからバレていた?俺はこの一瞬で心臓の鼓動が爆速になっていた。ホラーだろマジで……。
しかもメイドはいつも通りの無表情で、怒ってんのか何思ってるのかもわからねえから余計に怖え。
にしても、俺の了承なしで話が進みまくっているが、俺に拒否権は無いのか?と、とにかく、さりげなーく断れないか聞いてみる。
「あの、嫌と言ったら?」
すると、メイドがため息をついて、父さんたちを見る。
「……はあ。少しチー様をお借りしてもよろしいでしょうか」
「あ、ああ」
「ユリア様から目を離さぬよう、お願いします」
「おう。任せといてくれ」
メイドは俺についてこいと目配せし、外へと出ていく。このメイドほんと怖いって。俺はびくびくとしながら、とりあえずついていった。




