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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

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第129話 異世界のご都合主義展開




 今日もいつも通り、魔法、剣技と授業を受ける。ユイと付き合ったからといって授業は別にいつもと何も変わらない。


 それと、ずっともやもやしていたものがすっきりした感覚がある。


 片思いってのは辛いものだ。実際に付き合ってしまえば、そのもやもやもすべて消える。なんだか清々しい気分だ。イケメン最高。


 ああ、モヤモヤするからといって、自分から告白するのは超絶リスクだ。まずフラれた時のショック。これはまだ個人差あるとしても、フラれた際の今後の気まずさ、そして告った、フラれたなどのうわさが学校中に広がるリスク。


 やっぱりこれが一番怖いよな。フラれた上にそれが広まるとか、ショックと恥ずかしさで死にたくなるわ。


 今回はユイの方から告白してくれたからよかった。まあ結局俺とユイが付き合ったという噂、というか事実は広まってしまった。普通に嫌だけど。ただなあ、サイコカップルはちょっといくらなんでもひどすぎでは?そのおかげか、ユイと廊下を歩けば自然と道が開くのだ。


 前世なら舐められて道を譲るやつとかいなかったのに、まあそう考えれば嬉しいが。




 ------




 やっとすべての授業が終わる。放課後、俺はいつもの癖で図書館に行った。ユイも、まるで雛鳥のようにちょこちょこと俺に付いてくる。


「えっと、ユイは帰らないんすか?」


「私もチー君に付いていきたい」


「いいっすけど……あ」


 俺は図書館の扉の前に着いて、ふとあのことを思い出す。図書館にはシオリーがいる。あの時のシオリーの告白の日、散々な別れ方をしたままだ。


 正直、図書館に入るのは、きまずい。このままの関係なのが良くないのはわかってはいるけど、やっぱり……怖い。俺はユイに振り返り、図書館から離れる。


「やっぱり、今日はやめます」


「チー君?」


 ユイは不思議そうに俺を見つめ、首をかしげる。すると、ユイは一旦俺を引き留める。


「ねえチー君、私はどっちにしても、このまま図書館に用事があるから、チー君は先に帰ってて」


「え、あ、はい。一応騎士ですから、図書館の前で待機してます」


「う、うん。わかった。ありがと」


 ユイは、少し嬉しそうな顔で図書館の扉を開けて入っていく。


 にしても、ユイは元から図書館に用事があったのか。俺は気まずいから図書館には入らないが……いや、俺はシオリーという現実から逃げたいだけなのかもしれないが。




 ---




 しばらくして、ユイは図書館から戻ってくる。


 少しだけ俯いていてなにか考えているようだったが、すぐに俺を見つけ、少し笑顔が戻る。


 待機していた俺は、ユイと一緒に俺の部屋に戻る。なんだか、ユイの表情は硬かった。


 俺の部屋のドアを開け、俺とユイはそのままリビングのソファに隣同士で座る。ユイは真面目な顔になる。さっきからずっと表情が硬いし、何かあったのだろうか。ユイは口を開く。


「チー君、私はね、シオリーちゃんには、幸せになってほしいと思う」


「あ、はい」


 いきなり何を言っているのだろうか。そりゃ、シオリーの過去のことを考えれば、彼女には幸せにはなってほしいさ。


「でもね、今のシオリーちゃんは見ていられない」


「……えっと、どういうことですか」


「図書館に行ったら、シオリーちゃんはいなかった。代わりに図書委員の先輩がいて、何気なくシオリーちゃんのことを聞いたんだけど。

 そしたら、『シオリーちゃんは2週間前から明らかに元気をなくしてて、一昨日あたりに学園には来たけど、図書委員は今日は休みたいって言って、奥で眠ってるの。フラれちゃったんだと思うけど、私も見ててつらいの』って言ってた」


 かなりあの告白の出来事が響いているようだ。想像すると少し心が痛む。


「チー君には、私のことはこのまま好きでいてほしいと思ってる」


「そりゃ、まあ」


「だから……シオリーちゃんのことも、同時に愛してあげることって、できないかなって」


「……はい?」


 何を言っているのかわからなかった。それは、二股、浮気、ハーレムということになる。


 しかも、一番それを嫌いそうな女性の口から、そんな提案が出るなんて、正直信じられなかった。


 というか、今まで俺はユイの嫉妬の感情を見て来た。内緒でシオリーに魔法を教えてもらったあの日、ユイはシオリーを見た瞬間に恐ろしいオーラを発してたり。あの時は意味わからなかったが、今考えればあれはやきもちとか嫉妬の類だったんだろう。


 なのに今度は同時に愛せだと?そもそも、そんなことしたら、俺は社会的に死ぬのは間違いない。それはできねえ。


「それは、浮気になるので、できないっす……」


「う、浮気?それって……浮気ってことに、なるの?」


「はい?」


「え?」


 いくら元王族の姫とは言っても、これは常識なんじゃないのか?普通は浮気だよな?……会話が、全然かみ合ってない気がする。


 するとユイは衝撃の事実を口にする。


「浮気って、勝手にほかの異性と隠れて付き合うことでしょ?だって、男性が複数の女性を妾にすることって、多くはないけど、けっこう普通だよ?王侯貴族ではよくあるし、田舎の村でも珍しくないもん。もちろん、双方の同意の上で認められるわけだけど。」


「な、なんだって?」


 そうだ。ここは異世界。地球の常識と異世界の常識は異なるのだ。


 もちろん、前世でも一夫多妻制の国もあるとかないとか、聞いたことはあるが、この世界では、それが認められている、ということになるのか?


「そ、それは、本当なんでしょうか?」


「うん、チー君の村にもいたよ?」


 まじか。まあ、俺は人目が怖くて周りなんて見ていなかったし、人と関わらなかったから、村にもハーレム家族がいるなんて知らんかっただけだが。


「いやそれは知らないです」


「あ、あはは、そういえば村にいた時のチー君、私とチー君の家族以外としゃべってるとこ見たことなかったかも」


 人が怖いからな、今ほどではないけど、前世の記憶を引き継いでいるのだから仕方ない。


「ねえ、シオリーちゃんのことは嫌い?」


「い、いや、そんなことは無いですけど」


「正直に言っていいんだよ?」


 な、なんなんだ?なんかシオリーを好きと言え、って脅されてる気がするんだが……。


 一応、ユイに刺されないか警戒しながら本音を語った。


「確かに……人としては、好き寄り……だけど……。でも、なんか違うじゃないすか。可哀そうだから、付き合うみたいなのは。ユイだって、モヤモヤはするんじゃないすか?」


「そりゃあ……モヤモヤはするけど。私はチー君の一番だって自信があるもん。そこは絶対譲らない。誰よりも私はチー君のことが大好きだもん。……もちろん、チー君もだよね?」


 なんじゃそりゃ。俺はどんだけ信頼されてるんだ、どんだけ前向きなんだよこの子は。

「え、あ、俺もユイが一番なのは間違いないですけど、ユイは、それでシオリーが本当に納得できると思ってるんすか?」



 以前の告白のとき、シオリーはおかしなことを言っていた。『二番目でもいいから』と。そんなことを言う女が存在するのか?いや目の前に存在するけど!?

 と、あのときは思った。



 今思えば、これは、シオリーがこの世界が一夫多妻制ということを知っていての自己犠牲的な妥協だったのかもしれない。きっと、俺がユイに好意を持っていることも分かっていたんだろう。


 だから、答えに詰まった俺を見て、シオリーは二番目にすらなれないと勘違いして、傷ついて、フラれたと思ってしまったんだ。


 だったら、シオリーとも付き合えば、それがハッピーエンドになるのかもしれない。……でも、なんか、納得いかない。


 もちろん、村にいた時からの付き合いも長いし、ユイが一番なのは変わらない。優劣をつけたいわけではないが。……正直、複雑すぎる。


 一夫多妻制の異世界で、俺の一番は譲らないユイ、二番目でもいいから俺といたいシオリー。都合が良すぎるかもしれないが、俺が両方愛すことが、一番の解決法、なのかもしれない。俺は――もう一度、ユイに、答えを委ねることにした。


「本当に、これが、最適解なんすかね」


「心配しすぎだよ。シオリーちゃん、2週間もあんな状態のままで……見てられないよ。きっと学園祭も参加しなかったんだろうし、シオリーちゃんが本気でチー君の事好きなのは私でも分かってる。だからと言って、私だって絶対チー君の一番は譲らない。……チー君、このまま、シオリーちゃんのことを放っておくつもりなの?」


 ……いや、少なくとも、せっかく仲良くなれたシオリーと、こんな気まずいままは、嫌だ。付き合うかは別問題として、放っておくという選択肢は取らないほうが良い。


「……そうですね。分かりました。今はまだ、俺に付き合う気はありませんが、もし付き合ったとしたら、後ろから刺してきませんよね?」


「刺さないよ!?」


「訴えて社会的に殺しませんよね?」


「訴えないよ!?」


「……まあとにかく、俺は今はユイとの時間を大事にしたいので、その、でもシオリーとこのままってのもあれなので、えっと、行ってきます」


「うん。シオリーちゃんのところに行ってあげて?」


「はい」


 俺は、不安を抱えながらも、重い腰を上げた。そして、シオリーのいる図書館へと向かうために、部屋のドアを開けた。


出ましたご都合主義展開。異世界だからってなんでもやっていいのか!?


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