第123話 珍しい組み合わせの二人を見かけた
ネクラが帰った後、再び仕方なく手をつなぎ、また道を歩いて行く。
ユリアが小さく笑って、俺に話しかけてきた。
「チー君って時々口悪くなるよねー」
「あ、いや、すいません」
「いや、むしろ意外な一面が見れて楽しいけどね。さっきの『待てやゴラ』って、ちょっと面白かった。チー君も男子だなーって」
ああ、確かに女子って、こういうギャップ萌えしやすいんか?真面目そうな人がいきなり言葉遣い悪くなる、かっこよくなるみたいな?知らんけど。逆に冷める場合もあるし、まあ運だよね。
でもな、ブサイクが「待てやゴラ」なんて言ったら……馬鹿にされるしキショいって言われるからな……理不尽……。何度も言うが、この世界は何をするかじゃなく、誰がするか、なのだ……。
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で、しばらく歩いていると、チョコバネネの屋台に再び見知った顔を見つける。まさかの……レッドとブルーだった。
レッドって剣技大会でブルーにボコされて仲悪いイメージあったんだけどな。意外な組合せである。てか、レッドの言ってた一緒に周る人ってブルーの事だったのか。
っと、彼らに会う前に、つないだ手をそっと離しておく。……が、ユリアが笑顔でがっちり離さない。どっからそんな力が出てんだよ。
「はぐれちゃうから、ね?」
俺はちょっとだけピキっと来て、説得を試みる。
「じゃあなんすか、ユリアは女子同士でも、はぐれちゃうからってずっと手を繋ぐんすか?しませんよね?あと付き合ってもいないのに何で手を繋ぐんすか?カップルだって思われるの嫌なんすけど。あと別に人と会う時くらいは手離しても良くないすか?恥ずかしいしやめてくださいお願いしますまじで」
「めっちゃ早口……。むー。そこまで言うなら……。じゃあ、そのあとはずっと繋いでてよ?」
「え……まあ、人目のないところなら」
そしてゆっくりと手を離す。
なんでユリアはそんなに手を繋ぎたがるんだろうか。ユリアは俺のことが好きだと勘違いしてしまう。
前世でも、ちょっとクラスの女子と話しただけで勘違いしそうになったし、現実は女子にその気はないってのがほとんどだ。むしろ、「私の事そんな目で見てたの?きも」と失望されるのは目に見えてる。
俺は、女子とちょっと接点があっただけで欲情するような男子とは違う。現実を見ているんだ。悲しいけどな。
そして、チョコバネネの屋台にいたレッドとブルーに会いに行く。
「あ、チーとユリアじゃん」
「……」
レッドは俺とユリアに気づき、手を軽く挙げる。俺とユリアも軽く会釈する。ブルーは相変わらず無口……というか、めちゃくちゃ食ってて喋れないだけか?
手に数本のチョコバネネを持っている。父を殺して自由を得たブルーが、こういう人の多い場所で気軽にいろんなものを食べられるようになったのは、良いことなのかもしれない。
前から思ってたけど、ブルーって甘いもの絶対好きだよね?
「なんか意外だよね、レッド君とブルー君って、仲悪そうなイメージあったし」
ユリアが疑問を呟く。俺も思ったことなのだが、レッドは困ったように答える。
「いや、俺も正直よくわからない。いきなり俺のところに来て、『剣技大会のときはひどいことを言ってすまなかった』って謝ってきたんだよ。しかも、俺をこの祭りに連れてってくれって。甘いものに興味があるってさ。今まで無表情で誰とも関わらなかったブルーが、何か変わったのか?」
するとさっきまでもぐもぐしていたブルーが、飲み込んだ後、答える。
「チーが俺を変えてくれた。感謝はしている」
「まじかよ」
俺、ブルーにそんなに何かしたわけじゃない気もするけど。言うてクッキー渡しただけだろ。レッドは意外そうな顔だ。
「ブルー君って甘いもの好きなんですか?」
ユリアが、俺も思っていた、直球な質問をした。
「いや……精神統一には糖分が必要だからだ。それだけだ」
「にしては取り過ぎだと思うけど……」
「そ、それだけだ……見るな……」
今までクールキャラを貫き通していたブルーの意外な一面だった。
「で、お前らはやっと付き合い始めたのか?」
レッドが急に恐ろしいことを聞いてきた。なんでネクラもこいつもこぞってこういうセクハラ発言をしてくるんだよ……。
「付き合ってません(即答)」
「はあ、まだだったか」
「はい?何がまだなんですか」
「いや、なんでもねえよ」
レッドは何かを隠しているっぽいが、まあ人間隠し事の一つや二つ、百は普通に持っているだろうし、詮索はしねえけど。だが、レッドは俺の手を急に引いてきて、俺を引き寄せて来たので、俺は注意をする。
「あの危ないんで、興奮しないでもらえます?」
「してねえよ!」
ていうか何なんだ、急に。レッドはユリアたちに聞こえないように耳打ちしてきた。
「ユリアを泣かせんじゃねえぞ」
「……はい?さすがに泣かせないっすよ。その、泣かれたら社会的に終わるんで」
「なんだそりゃ、まあでもそれでいいわ」
一体何だったんだ?レッドの奴。まあいいけど。レッドは先ほどの態度とは一変して、いつもの明るい雰囲気でユリアに声をかける。
「で、ユリアはチョコバネネ食わねえの?」
「あ、私もたべ……いや、やっぱりやめとく」
「そうか」
「それじゃあ、私たちもいくね?」
「おう。頑張れよ、ユリア」
何を頑張れなのか知らんけど、レッドは俺たちに手を振って見送る。俺も軽く会釈だけしてその場を立ち去る。
「あの二人、仲良さそうでよかったね」
ユリアはあの二人を見て感想を漏らす。え?なにが?あの二人そんな仲良さそうに見えたか?ただ一緒にいただけのようにしか見えんのだが。
レッドとブルーと別れたあと、俺たちは再び散策を始めた。
小腹も減っていたし、屋台で少量食べ物を買い、食べながら散策。ユリアはさっきもなぜかチョコバネネを断っていたのも不思議だが、あまり食べ物を口にしていない。腹でも壊したんか?
他にも、糸が商品につながってるタイプのくじ引きみたいなのもあったが、まあ、最低でも何かしら当たるタイプだったので、試しにやってみた。
まあ、予想通り一番下の賞のただのお菓子だったが。ユリアも同じくお菓子だった。
屋外の祭りイベントも、楽しいっちゃ楽しいけど……やっぱゲームが恋しくなるな。
中学の唯一のオタク友達とは結局、夏祭りに行ったけど、すぐ飽きて二人で携帯ゲームで遊んでたっけ。
趣味が同じってだけの接点だったけど、元気にしてっかな。中学でも軽くいじめられたりはしたが、あいつがいたからなんとかなったようなもんだ。
高校は別々になって、俺は完全にボッチになったけど。
そんな前世と比べれば、今世は本当に恵まれてると思う。
やっぱり顔。イケメンってだけで違う。性格は陰キャのままでも、顔が良いだけでこんなにも楽しい人生を歩めるとはな。転生させてくれたあのよくわからん神には感謝だな。
なんて考えながら、もうすぐ花火の時間のようだ。
「ね、あそこなら人も少なくて見晴らしもいいよ?」
「あ、はい、って屋上じゃないっすか」
「前みたいに風魔法で連れてってよ」
ああ、屋上に風魔法でユリアを飛ばしたやつか。さて、今日のスカートの中は何色かなあ……という冗談は置いといて、建物の屋上なら、人目も気にせずに花火を特等席で眺められるので、賛成だ。
俺達は風魔法で屋上へと飛んだ。屋上はもちろん誰もいない。そして光も少なく、地上から、祭りを楽しむ人たちの喧騒は小さく、異様なほどに静かだ。逆に、屋上からの景色は、光の魔道具による夜景が広がっていて綺麗だった。




