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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

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第120話 言いたいけど言えないよね




 学園祭ではクラスの出し物の他にも行事は多い。


 たとえば屋外イベント。グラウンドには、この世界の食べ物の屋台や、射的のようなものまで色々とある。まるで夏祭りみたいなもんだな。今の時期は暑すぎず寒すぎない、ちょうどいい季節だ。


 他には魔法科限定だが、魔道具コンテストなんてものもある。優勝者は、魔素保有量を伸ばせる魔導石のネックレスが貰えるらしい。へえ、それはかなり便利そうだな。


 個人的に欲しい代物だが、コンテストに出るということは目立つということ。人目にさらされるということだ。つまり……嫌だ。


 それに、魔道具の発明のネタがあまり思い浮かばない。前世の家電製品とかを参考にすれば、それなりのものは作れそうだが。今のところ出る気はない。


 剣技科のイベントは前回、ブルーが、まるで初心者狩りでもするかのように、優勝をかっさらっていた剣技大会だ。ブルーは今年は出ないらしいが、もし出ると言ったら必死で止めていた所だ。


「今の俺に剣技大会に出る意味などないからな」


 だとさ。それって、お前らが弱すぎて相手にならないってことじゃね?……って思っちゃう俺がクズってことかな。


 1日目はクラスの出し物。2~3日目は魔道具コンテストと剣技大会。4日目は屋外イベント、みたいなスケジュールのようだ。だりいなあ。もちろん、王都からも人が集まるので非常に恐ろしい。人酔いには気を付けなければな。


「ね、チー君」


「あ、はい」


「お願いがあるんだけどさ」


「はい」


「最終日の屋外イベントさ、一緒に回らない?」


「え、いや、俺じゃなくても、レッドとかサンとかいるじゃないですか」


 俺はさりげなく断ると、ユリアはむぐ~と唸ってぷく顔したと思ったら、すぐに盛大なため息をつく。そして蚊の鳴くような声で何かを呟いた


「ほんと分かってない」


「はい?」


「なんでもない。そりゃ、レッド君たちも誘ったんだけど、みんな他の人と回るんだってさ」


 意外だ。レッドが俺たち以外と絡んでるところって見たことないんだけどな。まあ、他に周る人がいないんなら、仕方ない、よな?


「まあ、分かりました」


「やった……約束だよチー君!」


 ユリアは小さくガッツポーズとして、嬉しそうに顔を近づけてくる。なんだよそのしぐさ、可愛すぎて発狂しそうだ。


 くそ、屋外イベントが地味に楽しみになってしまったじゃないか。


 でも、恋が叶うはずのない片思いの幼馴染と、2人で回るのは、


 少しつらいけどな。





 ---




 準備も順調に進んだ学園祭前日。


「うわあ!かわいい!こういうの着てみたかったんだよねえ」


「すごいフリフリ、超楽しみ!」


 どうやらメイド服が届いたようだ。女子たちがメイド衣装を箱から出してワイワイはしゃいでいる。男子たちはその光景を、温かい目で眺めている。


「あ、男子達、今から着替えるから教室出ててよ!」


 チッ。お前らが他の場所で着替えろやクソが。なんで男が出ていく前提なんだよ。こういうのがすげえ腹立つ。


 ……とキレているのは俺だけで、他の男子達は楽しみにしながら教室を出ていく。俺も最後尾で出て、ドアを閉めた。


 あれ、そういえばユリアも確かメイド役だったな……。やめろ、想像するな!興奮するじゃないか!


 俺が悶々としていると、今度は男子達が小声で相談し始める。


「なあ、教室にミリ単位の穴開けて覗こうぜ」


「お前天才か!?誰か錬成得意な奴は!?」


「お前は?たしか土魔法得意だよな?」


「いや、そこまで緻密な錬成は無理だ」


「くそ、どうすれば」


 ほんと男子ってバカだよねえ。性欲の塊。どこの世界でも同じだよねえ(俺が言うな)。


 ちなみに、暇を極めし俺の錬成練度なら、教室の壁にミリ単位の穴くらいなら余裕で開けられる。俺はそれをみんなに伝えたい……。健全な男子達の役に立ってあげたい!正直俺も見たい!


 でも陰キャの俺には立候補など無理だったので、結局言えなかった。こ、これは、そのだな……能ある鷹は爪を隠すって言うんだよ。


 隣にいたネクラは首をかしげて聞いてくる。


「師匠って錬成超上手いっすよね?」


「え?いや、超なのかは分からないですけど……」


 い、いいんだよ。声をかけられればできるって言えばいいじゃねえか。俺から言ったら、なんか、ナルシストみたいじゃん!?


「おい」


「ひっ!?」


 俺は急に後ろから声を掛けられてビクッと跳ねる。必死な顔の男子が俺に期待の眼差しを向けている。


「お前は?錬成できんのか!?」


「え、あ、その」


 いきなり声を掛けられビビる俺。せっかく声を掛けてもらったのに、底辺のコミュ力によってどもってしまう。できるって言いたい。言いたい……。いいた……。いい……。


「いえ、無理です」


「そっか、いきなり声かけて悪かったな」


 今日の脳内反省会の議題が決まったな。畜生。


「師匠、できるって言わなくてよかったんすか?」


「いや、その……」


 ただ、言えなかったことを後悔するが、よーく考えてみる。万が一覗きがバレた場合、黙ってれば俺が開けたなんてバレない……と思うじゃん。


 でもあそこには魔眼持ちのユリアがいる。つまり、魔素の流れからユリアに俺がやったとバレる!あっぶねえ!手伝わなくてよかった!バレたら社会的に死んでたわ。


 くそ、魔眼チートめ……。


 すると教室のドアがガラっと開き、女子たちが現れる。


「お待たせ、もう入っていいよー」


 とりあえず、再び最後尾から教室に入っていく。すると、そこには男子にとっての天国が広がっていた。


 女子たちのメイド服姿は、控えめに言って……すごく良かった。可愛かった。


 正直、女子の服は制服が一番好きなのだが、メイド服もこれはこれでありかも知れん。だって、可愛いんだもん。


 男子達が盛り上がっている中、こそこそとユリアが人混みをかき分け俺のところにやってくる。そしてくるっとドレスを揺らして立ち止まる。


 スカートが一瞬ふわっと浮いて、見えそうになる……やめて……健全な男子生徒にそれはキツい……。


 にしても、ユリアのメイド服……新鮮すぎて、純粋すぎて、可愛すぎて直視できない……。


「チー君、どう?似合ってる?……って、ちょっと、ちゃんと見てよ!」


 目を逸らす俺に怒鳴るユリア。でもな、ユリア……健全な一般高校生男子の気持ちを考えたことはあるのか?あ、前世と今世合わせたら精神年齢的にはおっさんだよな。あはは。


 とにかく、理性が保てなくなるほどにその恰好は、ダメなのだ。くそ、俺は頑張って重い首を動かして、ユリアを見る。ダメだ可愛い。だが、俺は冷静になって、無表情で感想を言う。


「いいんじゃないですか」


「そう?なんかリアクション薄いけど、ありがと!明日これで頑張るね!」


「あ、はい」


 可愛いなんて言おうもんなら、最悪セクハラ扱いだ。本当は言ってあげたい。でもやっぱり怖い。俺もまだユリアを信用しきれてないところがあるんだろうかね。


 だから、否定もせず、可愛いとも言わず、具体的なことは言わずに「いいんじゃない?」っていうのが一番賢い。さすが俺。


 そして、明日、ユリアが客どもにその姿と笑顔を振る舞うのだと思うと、ほんのちょっとだけ……嫌だと思ってしまう。





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