第119話 緊急会議
とある日。
ユリアは放課後に自分の部屋にレッドとネクラ、サンを呼んで緊急会議を開いていた。ここにチーはいない。チーは今、いつもの日課のトレーニングのために、人気のない体育館裏に行っている。
なぜユリアはチーを省いて会議を開いているのか……。
「あの、あのね?すっごく恥ずかしいんだけど、その、皆に相談したいことがあるの!」
「お、おう……?」
「え、はいっす……」
「任せてよ!ユリア!」
ユリアは勇気を持ってみんなに話を切り出す。レッドとネクラはあまりの剣幕にたじろぎ、サンは無い胸を張る。
ユリアは横髪をいじりながら、徐々に赤面して、ついに話始める。
「その……私、実は、チー君の事、好き、なんだよね……」
『知ってる』
「なんで!?」
ユリアは分かりやすく動揺する。彼女はチーへの好意を隠していたつもりだったが、意味がなかったらしい。
「だって、そりゃ……な?ネクラ」
「まあ、根暗の俺でもさすがに分かりやすいっすよ」
「サンも分かってたよ!勘だけど!」
ユリアは顔が沸騰しているかのように熱くなっていき、両手で隠し始める。3人はそんなユリアに癒されながら温かい目で見守っている。
ひとまず、このままだとずっと沸騰していて埒が明かないので、レッドは話を切り出す。
「で、ユリア。お前は何を相談したいんだ?」
「はっ!?それなんだけど、あのね?チー君が後輩の女子に告白されてるの見て……私取られちゃうかもしれないって焦って!で、私考えたの。そんなの嫌だ、どうやって告白すればいいのかなって。でも……うう……私考えたのに……何してもチー君に振られるイメージしか湧かなくて!本当は相談なんてしたくなかったんだけど、もう分かんなくなっちゃって!それで勇気出して、相談したいと思ったの……」
「あ、ああ……まあ、確かに。てか、俺にその相談すんのかよ」
「その、レッド君には、あの時の事もあるし申し訳ないって思ってるけど……その、レッド君って交友関係も多いし何かわかるかなって」
「恋愛の話だと俺じゃあなぁ」
「ごめんね?」
「いんだよ、お前が幸せになってくれりゃ。その、嫉妬はしてるけど、もう吹っ切れてる」
ユリアとレッドの少し気まずい雰囲気にネクラとサンは首をかしげて見ていたが、聞くことは無かった。レッドはもうこのことは忘れたいかというように、急にネクラに話を振った。
「で?ネクラはどう思う?」
「え?普通に告ればいいじゃないんすか?師匠、ユリアの事好きだと思うし」
それを聞いたユリアとレッドがすぐさま反論する。
「私だってそれが普通だと思うんだよ!でも問題はそこじゃないの!」
「ネクラ、お前だって分かるだろ?チーがどれだけ慎重で拗らせてて逃げ腰で否定ばかりして自己肯定感ないか……」
「ネクラ君、もし私がチー君に告白したとする。そしたらチー君はどんな反応すると思う?」
ネクラは質問されて初めて、ハッと気づいたようだ。
「し、師匠なら……確かに、絶対信じなさそう……」
「でしょ!?」
「多分、これはいたずらだろとか、俺に釣り合うわけねえとか、訴えられるとかめっちゃ屁理屈こねるぞ、あいつ」
みんな、チーの性格を理解しているため、それはもう苦笑いしながら文句が出るわ出るわ。
ユリアは改めてみんなに助けを求める。
「だから、その、普通に告白してもダメだと思うの。何か、いい方法とかない?本当に好意を信じてもらえるような……」
皆は考える。一人を除いては。
「そんなの、アタックしちゃえばいいんだよ!」
「サンちゃん……だからそれでチー君が信じてくれると思う?話聞いてた?」
「だから、身体でアタックしてしまえばいいんだよ!襲っちゃえ!」
「さ、サンちゃん!?」
「ユリアまあまああるし、胸とか押し付けちゃえばいいんだよ!そしたらチーもいちころでしょ!」
「ば、ばか!ばかばか!そういうのは付き合ってからじゃないと……はわわわわ」
「落ち着けユリア。こいつの言うことは聞くな」
サンの爆弾発言に、ユリアはもう爆発寸前のところを、レッドがなだめる。そしてレッドがサンに現実を押し付ける。
「チーはな、ユリアのスキンシップを全部躱してんだぞ。訴えられるからって。そんなことしたら逆効果に決まってるだろ」
「そ、そだよ~!?さすがレッド君!分かってる~!?」
「ユリア、テンションおかしいぞ」
ネクラは納得しているが、サンは未だに「なんで?」という顔で納得がいっていない様子。アホの子には通じないようだ。
次に、ネクラも意見を出す。
「レッドとユリアが付き合ってるふりして嫉妬誘えばいいんじゃないすか?」
「う~ん、ありかもしれんが、恐らくどうせ俺なんかってなって自己肯定感また下がるんじゃねえのか?てか俺をおとりに使うんじゃねえ」
ネクラの意見も却下された。
「俺も、特に思いつかねえんだよなあ」
レッドも頭を抱えてギブアップ状態だ。この時、4人は思い知った。チーの、とてつもないガードの固さを……。『拗らせすぎだろ!』と。
それから30分話し合うも、特に解決策が決まることもなく、時間が過ぎていった。ユリアは申し訳なさそうに頭を下げる。
「その、ごめんね?皆の時間奪っちゃったのに、結局何も解決できなくて」
「いんだよ。まあでも、そうだな。学祭の屋外イベントに誘ってみるのはどうだ?ほら、あるだろ?なんだっけ、俺も聞いたことしかないけど、学園祭マジック……だったっけ」
「ああ、私も聞いたことはある。学園祭の魔導花火中に告白すると恋が実るみたいな……でもジンクスでしょ?」
「まあ、あいつにはもうジンクスに頼るしか方法はねえんだよ」
「う、うん。分かった。ありがと、レッド君。あとみんなも。それじゃあ、また明日ね」
ユリアは再び頭を下げて、皆に別れを告げる。
「そ、それでは、お邪魔しましたっす……」
「頑張ってねユリア!」
ネクラとサンは立ち上がってそのまま部屋を出ていく。レッドも別れる際に一言だけ告げる。
「まあ、あいつも言葉だけじゃ絶対信用しないだろうから、お前の気持ちを行動で示すのが一番かもな」
「こ、行動?」
「まあ、サンが言ったようなことまではしなくても、信じてもらうためにな。まあ、頑張れよ」
「う、うん」
そのままレッドも部屋を出ていった。そして、部屋はシンと静まり返る。
「行動か……。と、とにかく頑張らないと」
ユリアはぎゅっと拳を握る。結局いい方法は浮かばなかったものの、皆が応援してくれて、少しだけ勇気をもらえたのだった。




