第117話 ついに始まる地獄の学園祭
神声教団の学園襲撃後、またいつもの日常に戻った……わけでもなく、ちょっとだけ面倒くさいこともあった。
まずブルーは実の父親を殺して先生になんか色々と問い詰められていたが、相手も神声教団だし、正当防衛として罪には問われなかった。
一応、この世界でも殺しは罪となる。が、剣と魔法の異世界らしく、結構ガバガバなところはある上、死が身近なのもあって、正当な理由があれば意外と何とかなるようだ。
そして荒れたグラウンドや魔法科の教室の修復作業のために、今日の午後からの授業は、全生徒を対象に中止となった。これは思わずガッツポーズしたよね。まあ宿題は出たけど。
後のごちゃごちゃは教師たちに任せるとして、俺とユリアは二人で寮に戻ることになった。
あと、どうやらブサとリオに何かがあったのか、さっき普通に会話をしているところを見た。あれ、確か、リオってブサの事めちゃくちゃ嫌ってなかった?きもいし弱い奴には興味ないとか。
う~ん、まあいいんじゃない?ブサがまたリオが俺の事……見たいに勘違いさえしなければ。
ひとまず部屋に帰ろうと廊下をユリアと歩いていると、ユリアは思い出したように俺に話しかける。
「あ、そうだ、チー君。あの長髪の男、なんで逃がしたのか説明してよ」
「え?あ、まあ……えっと、あの人は神声教団の振りをした、ただの戦闘狂でした」
「戦闘狂?え?どういうこと?」
「強い奴と戦うために、あー、神声教団に入って、声に従う振りをしているそうです。で、俺を見るなり、戦ってくれたらユリアを開放するよ、と。えっと、そしたらびっくり仰天。本当に開放してくれましたよ」
「そ、そうなんだ……じゃあ、と、とにかく、敵ではないんだよね?」
「断定はできませんがね」
「へえ。変わった人もいるんだね」
うん。本当に変わった人だったな。青龍とかいう奴は味方にしておいた方が今後も動きやすいだろう。まあ、裏切りも無く、敵にならなければの話だが。
「あと、今回も助けてくれて、本当にありがと」
「え?あ、まあ、その……騎士ですから」
「そうだね。本当に、私、チー君にこんなにしてもらってるのに、何もしてあげられてない」
ユリアはぽつりとつぶやく。いや、俺はそうは思わない。
「いや、ユリア、えっと、俺はユリアに色々してもらってますから」
「え?ほんと?例えば?」
「そりゃ、えっと、料理とか、朝起こしにとか……あとは……」
「あとは?」
う~ん、ユリアの存在自体が俺にとっては救いではあるんだけど、そんなことは絶対言えない。セクハラって言われる。もう少しオブラートに言うとすると……。
「こんな捻くれた俺にも、接してくれるところ、みたいな……」
「……あはは、確かにチー君捻くれてるけど。私が好きでやってることだし。でも良かった、チー君、私のお節介とか嫌だと思ってそうだったし。ほんと、優しいよね、チー君は」
ユリアはなぜか、満足げに笑っている。俺そんな上機嫌になるようなこと言ったかな。
ひとまず、ユリアへの説明も済ませたし、部屋に戻ってゴロゴロしたい。疲れたわ。
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1週間後、学園は復旧し、再開された。
あの青龍戦の後くらいから、ユリアからのスキンシップが増えた気がした。
ただ、リスク管理としてちゃんと避けたり、直接やめてもらったりしているが、そのたびにぷく顔で不機嫌になる。それはそれで可愛い。
やっぱ、ネクラの言う通り、俺に気があるのだと勘違いしてしまいそうだ。本当に、マジでやめてほしい。やめてほしくないけど。
今日もユリアとレッドの3人で学園に登校し、教室でネクラと合流する。教室はすっかり修復されていて、机も綺麗に整列されている。
しかも、新品になっていて前よりもピカピカで綺麗だ。綺麗好きにはたまらないね。
そして久しぶりとも感じるホームルームで、リーファが軽く今後の動きについて話す。
「よし。学園は復旧した。今日からまたいつも通り授業を再開するところだが……。お前らお待ちかねの学園祭が今年も始まる。
ある程度クラスメイトとも顔も知れたことだし、団結して成功させるように。明日から、クラスでの出し物を決める。やりたいことがある奴は考えておくように。以上だ」
はいきましたクソ行事。去年に関しては、俺はネクラと一緒に逃げ切って不参加を貫いてやった。レッドの剣技大会だけは観戦してやったけど。まあ、それはそれで青春だったぜ。
すると、ユリアが俺のわき腹をツンっとつつく。突然の刺激に反射的に声が出た。
「あんっ!?」
「チー君きもい。じゃなくて……今年はちゃんと参加してよ?手伝いもしてよ?」
今さらっとキモイって言われなかったか?まあさすがに急にわき腹つつかれたら変な声も出るわ。とりあえず今年もさぼりたいので否定する。
「はい、もちろん、――」
「さすがチー君!」
「嫌です」
「一瞬参加してくれると思った私がバカだった。ねえ、去年は許したけど、来年は絶対出てって約束したよね?ね?」
怖い怖い怖い。ユリアさんなんか声が低くなってるって!目のハイライトつけ忘れてるぞ?……はあ。
「分かりましたから……」
「やった。さすがチー君!あのね?もう2年生だよ?学園祭は今回含めてあと2回しかないんだよ?今を楽しまないと!」
「え……あと2回も……?」
「なんでそう言う考えになるかなあ……とにかく、参加!」
はあ。別にいいけどさ。
前世の学園祭では、何もせず誰とも関わらず、ソシャゲだけして学園祭が終わった。正直言って、何が楽しいの?
陰キャには陽キャどもが騒いでワイワイしてるだけにしか見えない。なんか体育館に集まってひたすら陽キャの謎のダンス見せられる拷問は辛かった……。
見たい奴らだけで見ればいいものの、ほぼ強制だからな。リアル充実アピール見てて本当に苦痛だったわ。まあ俺は寝てたけど。
学祭はな、人間関係を構築している奴らには楽しいが、陰キャにとってはただの拷問でしかないんだ。そこ、理解してくれ……。




