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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

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第112話 首席の時間稼ぎ




 ネクラ視点続き





 リオとルーはしばらく互角の戦いを繰り広げていた。


 リオは炎舞型と水流型を器用に使いこなしている。リオから攻めてルーに受け流されれば、ルーの反撃を水流型ですぐ受け流す。

 リオは度々距離を取って魔法の詠唱を始めるも、ルーは詠唱をさせまいと、そばにあった机を叩き割り、その破片をリオをめがけて足で蹴り飛ばす。まるで弓矢の弾速くらいの速さで木片がリオに迫る。しかしリオはすぐに詠唱を中断し、横に転がり込んでそれを躱す。


 魔法の詠唱は精神力を消費するために躱しながら詠唱することは難しく、中断するしかないようだ。リオは詠唱を再び再開すると、再びルーは机の木片をリオに蹴り飛ばす。


「それはもう見える」


 リオは詠唱を再び中断し、その木片を剣で器用にはじき返した。はじき返された木片はルーへと迫るも、体を横に左にずらして躱す。リオは左に避けるのを読んで、一歩大きく踏み込んでルーに接近する。いくら空間をすべて見えていても、少しでも重心が傾いた今は攻撃のチャンス。


 すごい、ルーを追い詰めた……?ように思えたが、ルーは下に落ちていた木片を、床をどしんと踏み込むことで、弾ませた。はじき飛んだ木片はちょうど踏み込んだリオの顎にヒットし、リオはよろける。


 そのままリオに踵落としを食らわせ、床にたたきつけ、ダウンさせる。


「がはっ!?」


 リオは床に這いつくばり、動けなくなる。


 ルーの戦闘センスは、リオのそれを遥かに上回っているのが分かる。レッドでも、俺でも手も足も出なかった……ルーには、誰にも勝てないのではないか、もしかして師匠でも……。


 ルーはふうっと一息ついて、剣をリオに向ける。


「これでもうわしに歯向かうやつは全員大人しくなったか?今日は久々に楽しめたな。う~む、貴様らをこのまま殺すのは惜しいが、声の主に逆らうわけにはいかん。だからこのまま死ね」


 くそ、レッド、リオと奇跡のように助太刀が現れていくが、さすがにこれ以上現れることはないか?リオがルーに殺される……いや、俺たちも死ぬ?い、いやだ……。死ぬのは嫌だ!


 俺は動かない足を無理させてリオをつき飛ばそうと飛び込もうとしたその時。


 何者かの黒い影が急に現れ、リオに飛び込んでいき抱えていった。そのままくるっと空中で体を回転させ、ルーの方を向き杖を構えた。その瞬間、まぶしい光が教室を包んだ。


「なっ!?」


 ルーは思いっきり真正面から光を見てしまい、目を腕で覆い隠す。ルーは反撃を恐れてすぐに飛び退いた。


 そしてその黒い影は俺たちのもとへと着地する。ま、また助太刀?さっきから奇跡が起きすぎじゃないか?なんかこのままピンチからの助太刀展開、何度も続きそうな気が……。まあいい、それよりも、こいつは……?


 リオを助けたそいつは、俺に目を逸らして、小声で話しかけてくる。


「あ、えっと、リオさんにこのポーションを飲ませてください。俺、リオさんに多分嫌われてるんで……」


「え?あ、はいっす……」


 そいつは意識がもうろうなリオを床に寝かせ、俺にポーションを渡してくる。俺は言われるがままにリオにポーションを飲ませる。ていうか、こいつって、チー師匠が最近魔法を教えてあげてる奴だよな?落ちこぼれのやつじゃなかったっけ?ブサとか言う名前の……。


 驚きなのは、リオでさえ、動きながら魔法を放つのは難しいというのに、ブサは一瞬で詠唱をしながらリオのもとに飛び込み、抱えながらルーに光魔法を放ったことだ。なんて器用さだ、落ちこぼれなんかじゃない。


 魔法の威力は低いかもしれないが、味方になれば驚異のサポート能力で味方を援護できる才能を持っている?


 俺はブサを見ると、わずかに足をがたがたと震わせていたのが分かった。俺やレッド、リオは戦闘経験もあるし戦い慣れているが、ブサはそんなことはないはず。そんな緊張状態で、あの速さで魔法を撃てたんだ。これは、チー師匠の特訓の成果?


 リオは回復し、ゆっくりと体を起き上がらせ、ブサの方を見つめる。


「お、お前は確か……あの時の凡人……?」


「え、あ、まあ、そうです。どうせ俺は雑魚ですよ」


 ブサはリオに急に話しかけられ、目を逸らしながら自己否定を始める。……少なくとも俺には凡人には見えない。


 リオは凛々しい顔をかきながら、ギリギリ聞こえるくらいのか細い声で言った。


「……いや、雑魚なんかじゃない。あの時はお前を悪く言ってすまなかった。実際、今こうして私はお前に助けられたのだからな。……感謝する。だ、だが、勘違いはするな。少しはお前を認めようと思っているだけだからな」


「……え?」


 ブサは予想外の反応に目を丸くしてリオを二度見する。よくわからないけど、リオとブサは一回何かあったのだろうか。


「ああ、そうだ。お前の名前を聞いていなかったな」


「あの、前言ったんですけど」


「私は興味のない奴の名前は覚えないからな」


 この人めっちゃはっきり物言うなあ。


「え、あ、俺はブサです」


「ブサか。ひとまず脳の片隅にだけでも覚えておこう」


「俺はどうせ片隅レベルですよどうせ」


 ブサがいじけた。ていうか、今はこんなやり取りをしている場合じゃ無くね?俺は一応、光魔法で視界を奪ったルーの方を警戒していたが、どうやらルーは視力が回復し、目を開けてこちらをにらんできた。俺は一瞬感じた殺意満ちた眼光にビクッと体を震わせる。


 てか、今のうちにルーのことやれたんじゃねえのか!?いや、よく考えれば、ルーは目を閉じていても、空間把握だけでこちらの攻撃を視ることができるから意味がないのか……。


 ルーは何度も何度も邪魔をされたせいか、額に青筋を浮かべ、イライラを前面に出して激昂する。


「貴様らあ!いい加減にしろやあ!何度も何度も何度も何度も……ああもううぜえ、早く終わらせてアジトに戻るんだ……貴様ら覚悟しろやあ!」


 あまりの剣幕に、俺たちは動けなくなる。剣聖を本気で怒らせてしまった。このままじゃ俺たちは本当に終わる。レッドはこの間に体を十分回復させていて、鞘から剣を抜いて立ち上がろうとする。リオとブサもつられるように立ち上がる。こいつら、まだやるつもりなのか?


 リオは冷静に俺たちに指示を出す。


「私とレッドはとにかく攻める。で、お前は……」


「ブサです」


「ああ、ブサは私たちが死なないように、先ほどみたいに魔法でちょっかいをかけながら私たちのサポートをしてくれ。そして、ネクラだったな。お前はその素早い身体能力を生かして私とレッドが作るわずかな隙を確実に仕留めてくれ。暗殺一家のお前になら容易いだろう?」


 俺はなぜ俺の名前や家業を知っているのか疑問は残るが、ひとまず頷いておく。だが、4人がかりでもルーに敵うビジョンが、今も全く見えないままだ。俺たちでは超えられない、高すぎる壁……。正直諦めているが、でもやらないと殺されるのは確か。どうせ逃げられない。


 そう覚悟を決めて、俺も立ち上がる。ルーは立ち上がった俺たちを見て、にやりと笑う。


「フン、4人がかりだろうが、ねじ伏せる。才能の差というものを味合わせて絶望させてから終わらせてやる……」


 そうしてルーは剣を構えたそのときだった。


 静かすぎる教室の中、非常に小さい、ガラガラと教室のドアを開く音で、俺たちは一斉にそっちを向いた。俺はその扉を開けた人影を見て、胸が高鳴るような、安心感を覚えた。やっと、来てくれた。


 その背の高い黒髪の青年は「ひっ!?見ないで……」と小声でつぶやきながら恐る恐る教室に入ってくる。


 そしてその隣の白髪の少女は「恥ずかしがってる場合じゃなくない?」と青年にツッコみを入れる。このやり取りもなんだか懐かしく感じるほど、俺たちは緊張状態だったんだろう。俺は思わず、つぶやいた。


「し、師匠……来てくれたんすね」





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