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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

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第111話 陽キャの時間稼ぎ




 ネクラ視点続き


 ああ、師匠……俺、死ぬっすわ。早く戻ってきてくれないかな……冗談抜きでマジで死ぬかも。このおっさんに攻撃を与えられるビジョンが全く見えない。


 でも、俺の役目は師匠が戻ってくるまでの時間稼ぎ。攻撃は与えられなくてもいいんだ。とにかく逃げながらでも、時間を稼いで、師匠に繋ぐんだ。


 俺はすぐに、教室の隅に転がっている吹き飛ばされた短剣を拾いに走る。すぐに構えを取り、戦闘態勢に入る。


「ほう……諦めていないか」


 ルーは感心しながら、ゆっくりと近づいてくる。意味はないと分かっていても、俺は制服に仕込んだナイフを、奴の死角からシュッと投げる。


 もちろん、空間すべてを把握しているルーは、剣を振ってそのナイフを打ち返した。


 その打ち返したナイフが足に突き刺さり、ブスッと鈍い音が耳に響く。その瞬間、灼熱の痛みに襲われた。俺は叫びそうになるも、何とか堪えて、ナイフを思いっきり抜き取り、腰から暗殺家業で支給された高級ポーションを出して、刺さった足にぶっかける。緑色の光に包まれ、傷がどんどんふさがっていく。


 痛みはふさがったものの、大量出血により、少し頭がクラクラして上手く焦点も合わない。


 何とか目を凝らして奴を見る……ルーは未だに余裕の表情を崩すことは無い。今の間に奴は俺を殺せたはず、こいつはまだ、俺で遊んでいる?俺はそんなに弱いのか?


「言っただろう。この空間のすべてを把握できると。どこから攻撃が来ようと、無駄だ」


 んなもん分かってる。お前に勝とうなんて思ってねえよ。


 ……にしても、どれくらいたっただろうか。もう10分はたったか?師匠は無事ユリアを連れ戻せたかな。あともう少しぐらいは動かなきゃ。


「さて。もうそろそろ消えてもらおうか。貴様、わしの頬に傷をつけたこと、誇りに思って死ぬがいい」


 ルーはそう言って、俺の首を狙って剣を振りかざす。躱さなきゃ……でも体は重く、上手く動かない。そして音もなく、俺の首は吹き飛んだ――と思ったその時だった。


「させるか!」


 ガキンという金属のぶつかり合う音が響く。その時、俺の目の前に赤髪の人影――レッドが現れ、ルーの剣を受け止めていた。


「チッ。またジャマが入ったな」


 ルーは不機嫌そうにつぶやく。レッドは剣を思いきり薙ぎ払い、ルーを後退させる。レッドは振り返り俺に話しかける。


「ネクラ、無事でよかったぜ。ったく、昼になっても屋上に来ねえから、心配したんだぜ?そしたら、知らねえおっさんとお前が戦ってるじゃねえか。しかもチーもユリアもいねえ。一体何があったんだ」


 レッドは俺とはそんなに接点はない。主にユリアや師匠と話すことが多いしな。だけど、こんな根暗な俺を助けてくれた。


 この陽キャ、意外といい奴なのか。これなら、もう少し時間稼ぎができるかも。


「あ、えっと。説明してる時間は無いんで、一緒に戦ってくれると助かるっす。師匠はきっともうすぐ戻ってくるんで、それまで、足止めをしてほしいんすよ」


「……よくわからないけど、とにかく戦えばいいんだな」


 レッドはすぐに納得して、剣を構えた。俺も立ち上がる。


「はあ、ゴミがもう一人増えたところで、わしを殺せるとでも?」


 ルーはめんどくさそうに頭をかきながら、ため息をつく。まあ、ルーに比べちゃ俺たちはゴミ扱いだよな。と思ったら、レッドはブチギレていた。


「ゴミだと?取り消せ!俺達はゴミじゃねえ!ゴミって言ったやつがゴミなんだ!バーカ!」


「……ああ?」


 ……レッドは煽り耐性が無いらしい。ルーは予想外の反応に言葉が出ないようだった。そしてレッドはすぐに地面を踏み込んで、奴に接近した。


 レッドは力強く剣で薙ぎ払う。もちろん、ルーはそれを難なく受け流す。


 レッドはすべて受け流されても、何度も何度も剣を振り続ける。そんな単調な攻撃じゃ、意味がない。


 レッドが、剣聖に稽古をつけてもらったと聞いていたが、何も変わっていないように見える。それに、レッドの炎舞型は水流型とは相性が悪い。


 しかし、戦いをよく見てみると……ルーは押されているように見える。なぜだ?


 剣と剣がぶつかる金属音はどんどん激しさを増していく。余裕で捌いているように見えるルーだが、実は違った。


 レッドの剣撃の反動が大きすぎて、反撃の隙すら作れないのだ。レッドの剣を受け流すたびに、ルーの腕にどんどん衝撃が積み重なっていく。レッドはこんなに強かったっけ?


 ただ、ルーも歴戦の剣士だ。パワーだけの単調な攻撃などすぐに対応してくる。パワーを受け流すように、衝撃を逃がす剣さばきへと変えていき、余裕の表情を取り戻していく。


 レッドは今度はさらに、体術も組み合わせてきた。剣に拳に蹴り――その猛攻はさらに加速していく。


 ルーの表情はまた険しくなる。押してる……本当に?すごい……。これが、チー師匠の剣聖の父との稽古の結果か?


 しかし、かすかに希望が見えたこの二人の攻防に終止符が打たれる。ルーはレッドの蹴りを片手で受け止める。レッドは足を掴まれても止めずに、裏拳を繰り出すがそれも片手で止められる。


 そのまま足と手を拘束されたレッドにルーは腹に蹴りを入れ込んだ。レッドは吐きそうになりながらその場に倒れ込む。やばい、助けに行かないと……でも今飛び込んでも間に合わねえ!


 だが、その瞬間、ルーの足元に炎の柱が現れる。なんて威力……教室天井まで炎の柱は伸びていき、ルーを包み込んだかのように見えたが、驚異的な反射神経で後退して躱していた。


 ただ、ルーは躱し切れているわけではなく、少し手を焦がしていた。そして、その炎魔法を放ったであろう何者かが、バリィン!と窓を突き破り入って来る。ルーはそいつを見ながら舌打ちをする。


「チッ。また邪魔が入りやがった、次から次へと……」


「やはり、教室の外からの攻撃なら察知できないようだな」


 凛々しい女性の声……ああ、こいつは見たことがあるな。学園首席のリオだ。魔法を放った杖を腰にしまい、今度は剣を鞘から抜く。


 その間に俺はレッドを回収し、対峙するリオとルーから距離を取る。


 レッドは苦しそうにせき込みながらも顔を上げ、俺を見る。


「くそ、すまねえ、ネクラ、なんもできなかった」


「い、いや、一瞬でもあいつを追い込んだんすから。まだ、立てるっすか?」


「いや、無理かもしれん……思いっきり腹に入った……」


「そっすか」


 レッドはもう戦闘不能だし、俺もポーションを使ったとはいえ、利き足が上手く動かず思い通りに戦えない。サポートくらいならできるだろうが、ここはリオに任せるしかないのか。




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