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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

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第108話 この俺が告白されるわけがない




 ※今回は特にチーの優柔不断な独白長いんで覚悟してください(笑)


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 俺は体育館の裏に足を運んだ。ここは影になっていて薄暗いし湿っぽいし、あんまり人が来る人はいない。廊下ほどの広さはあるとはいえ窮屈に感じる。ただ、俺はここでいつものトレーニングの日課をしている。誰にも見られないからな。人がいる日は諦めてるが。


 さて、一体こんなところでシオリーに何をされるんだろうか……。


 周りに人はいないし叫ばれても問題ないとは思うが……いやいやその時は速攻風魔法で気絶させる。シオリーだろうが関係ない。って何を考えてんだ俺は。


 俺は体育館裏を見渡していると、あの図書委員の言っていた通り、シオリーは木の下のに寄りかかって待っていた。明らかに緊張している様子だった。俺はおそるおそる、シオリーに近づいた。


「あ、先輩……」


「えっと、シオリー、何か用ですか」


 シオリーは途端に顔を赤くし、俯いてもじもじし始める。小声で「あ」とか「えっと」とかずっとつぶやいてるし。てか、人気も無いこの場所で、このシチュエーションって……絶対俺の勘違いだと思うけど、告白イベントにしか感じない。


「あの、チー先輩……私……」


 シオリーは、何かを決意したような強い目で、俺をまっすぐ見つめてきた。ざ、雑談だろ?そうだと言ってくれよ……?


「私……チー先輩のことが……す……好きですっ……!付き合ってください!」


「え」


 そう言ってシオリーは俺に頭を下げてきた。まるで時が止まったかのように静かな沈黙が数十秒と流れていく。俺も思考停止してピクリとも動けずにいた。だが、すぐに正気に戻って冷静に分析モードを開始する。


 ――好きです?好きって他に同名で意味あったっけ?隙?鍬?いやいや俺のことを隙ってどういうことだよ。隙がありすぎだって言いたいのかな?だが、どこに神声教団がいてもいい様に常に髪の毛1本から神経を研ぎ澄ましている……は言いすぎだけどそれくらいには隙は無いと思っている。


 てことは、シオリーのいたずら?クラスの罰ゲーム?まさか俺、地雷踏んだ?


 俺は念のため、気配察知能力を最大限に使って再び周りを見る。……一人この近くを歩いた人の気配はしたが、それ以外は特に誰もいない。つまりいたずらという可能性も低いだろう。


 え、じゃあつまり、本当の告白?前世も含めて、人生初の告白ってことになるぞ?前世なら絶対にあり得ないってのに。やっぱりイケメンは罪だ。こんな性格でも告白されてしまうのだから。ていうことは、念願の、初の彼女を手にすることができるチャンスということ。


 本音で言えば、俺はシオリーとの付き合いを受け入れたい。シオリーも可愛いし。俺だって男だ。


 でも、やっぱり信じられない。理由は二つ。


 誰が、こんな性格の俺を好きになるっていうんだ。シオリーと出会ってまだ半年くらいだし、シオリーが俺のことを好きになるまでの理由が、俺には見えてない。女子ってそんな簡単に人を好きになるか?俺は女じゃないから女の心なんてわからない。


 イケメン補正はあるが……それでも、やっぱりあり得ない。


 もう一つ。シオリーは俺を何か利用しようとしているのか、可能性は0ではない。騙されたくはない。付き合いもまだ短いし、俺自身、そう簡単に人をまだ信じることができない。


 それと、その二つの理由とは別に、俺の脳裏にうっすらと浮かんだのは……ユリアだった。


 最初は警戒するに決まってる。あんな可愛い女子が、俺に優しくするなんて、怪しい以外の何者でもなかった。


 でも――あいつはずっと変わらなかった。どれだけ俺が卑屈になっても、疑っても、怖がっても、あいつは俺を見捨てなかった。


 気づけば、俺の心の中で、ユリアが特別になってた。……たとえ、ユリアのそれが演技だったとしても、俺は救われた事実は変わらん。


 ユリアがいなかったら、豆腐メンタルの俺はどうなっていたか分からない。


 それに、あいつは前世で見てきたどんな女子とも違ってた。まるで、男の理想を具現化した二次元のヒロインが、そのまま現実に現れたような――そんな存在だった。


 俺みたいな闇を抱え続けたクソみたいな人間に、何年も寄り添ってくれたんだぞ?惚れない方が、おかしいだろ。不可抗力だろ。


 そんな完璧な彼女が俺なんかに絶対惚れるわけない。なのに、ユリアを諦めきれていない自分がいる。目の前に告白してくる女子がいるというのに、別の女子を考えているのは、なんて幸せな悩みなんだろうか。弱者男性には一生持つことのない悩みだな。


 前世でも、チー牛に告白する罰ゲームみたいなものも何度か見て来た。気の弱いシオリーなら、その罰ゲームに利用されていてもおかしくない。ガチ告白、俺を利用するため、罰ゲーム、この三つの可能性があるが……。


 ダメだ。これは今決められることじゃない。


 シオリーの言葉が嘘か本当かも分からんし、俺もまだ不安が残っているような状況で決められん。俺は申し訳ないと思いつつ、シオリーに保留にしたいと答えようとした。


 しかし、体感5分ほどだろうか、それだけ長く悩んでいた俺を見て察したのか、シオリーが先に言葉を返した。


「……ユリア先輩……ですよね」


「え」


「ユリア先輩がほんとは好き……なんですよね」


 ……まあ、まだ完全に信頼しきれていないとはいえ、好きっちゃ好きだ。シオリーも、何となく察しているってこと。


 俺とユリアは幼馴染でずっと一緒にいるし、誰から見ても、付き合っているようにしか見えないよな。でも、恥ずかしいし、あいまいな返事をする。


「いや、別に……人としては……」


「嘘です。先輩はユリア先輩といる時は少し違いますもん……。なんとなく分かってましたけど……。それでも、いいんです。2番目でもいいんです。お付き合いして、いただけませんか……」


「はい?2番目?」


 2番目でもいい?どういうこと?それって、二股しろってことになるよな?俺を社会的に殺そうとしてないか?この子。でもこの子の目を見る限り、ガチっぽいのが余計に意味が分からない。


 そもそも、ユリアとは付き合ってないし、付き合えるわけもないから、2番目もクソも無いのだが。


 それよりも、シオリーが”2番目でも良いから”って、意味が分からない。普通は嫌だろう。そこまでして俺と付き合いたいのか?


 あり得ないだろ。やっぱり、シオリーの本心が見えない。何か脅されているのか?俺と付き合えないと何かされる、みたいな。さっきからもう半分パニックで一生分悩んでるんじゃないかってくらい疲れてるかもしれん。


 再び俺は考えていると、シオリーは薄く笑いながら、低い声で口を開く。


「……2番目でも、だめですか」


「え、いや、その、意味が」


「いいんです。お時間をいただき、ありがとうございました」


「いや、ちょっとま……え?はい?」


 シオリーは顔を背け、逃げるように走っていった。俺も追いかけようとしたが足を止める。それよりも何よりも、意味が分からなくて、頭の中で混乱しているのだ。俺は優柔不断で、慎重すぎて、疑って、考えすぎてしまう。前世でそうせざるを得ない人生を送ってきたから。


 結局、考えさせてほしいの一言すら伝えられなかった。


 ……でも、仕方ないよな、振られるなんて、誰にでもある。それがシオリーだっただけ。


 みんなフラれたりして、そうやって乗り越えていくんじゃないの?知らんけど。


 俺も、そりゃ、できるなら彼女(性格の良い)は欲しい。でも、振られるという恐怖は別にまだいいにしろ、その人と釣り合わない自分、振られた後の噂、いじり、性格の豹変、自由な時間の減少……とにかく先のネガティブなことばかり思い浮かんで、行動できないんだわ。多分、この先もずっと。


 だから、シオリーとも、ユリアとも、このままの関係が一番いいのかもしれない。この関係が壊れるのは、怖いから。





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