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拗らせ陰キャの異世界自己防衛ライフ 〜イケメンに転生してもガチ陰キャ〜  作者: 玉盛 特温
第3章 学園2年編

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第105話 かつての自分を見捨てられなかったわ




 俺は空き教室で男子生徒に囲まれているブサを見かけて、聞き耳を立てる。


 囲んでいる男子は、簡単にメガネ君と、イケメン君と、ギザ髪君と呼ぼう。ネーミングセンス無い?ありがとう。


「君さあ、昨日金持って来いって言いったよね?無いんだったらお前の杖を売ってでも持って来いと言ったはずだが?」


「お前気持ち悪いくせに、剣も魔法も勉強もできねえんだから、俺らがお前でも役に立てるようにしてやってんのに」


「とりあえず、金持ってこなかったんだから、分かってるよな?」


 ……おいおい、まさかのテンプレ展開。どの世界でも気持ち悪い存在ってのはこき使われるもんなんだなあ。前世ではさすがにそこまで直接的にいじめをしてくる奴は少ないが、この世界では実力主義なのか、明らかに暴力的な奴とかは多い。逆に前世は晒しとか陰口とか陰湿なものが多かった気がする(俺調べ)。


 さすが剣と魔法の世界だ。……と感心している場合ではないのだが、とりあえずブサが何を言うのか気になる。言い返すのか、やり返すのか……いや、チー牛がやり返す勇気なんてあるわけねえだろ(お前が言うな)


 しかし、ブサは言い返した。


「俺は嫌っていったんですけど。そもそも金ないって言いましたよね?」


「は?お前みたいな雑魚が俺たちに口答えすんの?」


「どうせ俺が何言っても口答えって言うんだろ?親もそうだったわ。逆らえないようにしようと――」


 その瞬間、ブサはギザ髪君に殴られて、鈍い音がこちらまで響いてくる。ブサはそのまま壁に打ち付けられる。結構本気で殴ってなかったか?ブサは大丈夫か?


 だが、ブサは一瞬苦悶の表情を浮かべるが、すぐに無表情に戻す。強がっているのか?


「おい、落ちこぼれのくせに俺たちに逆らうなよ……すげえイライラするんだけど」


「まあまあ、ギザ、落ち着けよ。こいつは努力もせずほざいているだけだよ」


 メガネ君はギザ髪君の肩をポンと置いてなだめている。その間に、頬を抑えながらブサはよろめきつつ立ち上がって言う。


「いいよな。お前らみたいな容姿にも才能にも環境にも恵まれた奴は……」


 それを聞いたメガネ君は、プッと笑いながら言い返す。


「ハッ!お前の努力不足じゃないか!そうやって人を妬んでばっかりで強くなろうともしないお前が悪いのに、そうやって才能とか人のせいにしてるから雑魚なんだよ!」


 へえ。言うねえ。俺はこれを聞いただけで、血管がブチ切れてしまいそうなのを、拳を握りしめて堪える。どこの世界も同じか。ブサも言い返せよ。何黙ってんだ。


 俺はお前が才能ないなんて思ってねえ。俺はブサに魔法を教えてやって、初級魔法すら発動できなかったのを、今では初級までなら詠唱短縮までできるようになった。お前なら多分だけどその3人くらいなら蹴散らせるはず。それとも、恐怖で動けないのか。だが、言い返す度胸はあるのだからそれはないはず。


 普通なら見て見ぬふりをして教室を去るところだが、やはり、前世の俺と同じように困っている奴はどうしても見過ごせなかった。基本的に人助けはしたくないが、明らかな弱者男性は別だ。それに俺も少しは自信もついた。


 俺はもう我慢ができなくて、手作りのマスクで顔を隠してそのまま教室に凸した。マスクするのは顔を覚えられないようにするためだ。俺は思い切ってドアを開ける。ドアを開ける音に、ブサたちは一斉に俺の方を向いてくる。


「だ、誰だお前!ドアには開けられないように鉄の棒で挟んでいたはずだぞ!?」


 イケメン君にそう言われて俺はドアの方を見る。あ、ほんとだ。ドアに挟まれていた鉄の棒がぐにゃりと曲がっていた。だからドアちょっと重いなって思ったのか。むしろドアの頑丈さを称賛するわ。


「てかなんで顔隠してんだよ!」


 ギザ髪君は俺のマスクが気になるらしい。だって顔知られたくないし、恥ずかしいし、でも黙ってらんなかったし。しかし、メガネ君は俺を見て、目を丸くする。


「君は、チーオンターマだね?噂になってますよ、わざと80点を取って舐めプをしていると。またの名を、”80点のチー”と」


 キッショ。誰だよそんなあだ名付けた奴は!そのまんま過ぎるわ!ていうかマスクで顔の大部分隠してんのにこのメガネはなんで俺の正体分かったんだよ!さすがにきしょいわ!お前と会ったことすらねえぞ!?


 ていうか期末では怪しまれないためにちゃんと点数ばらけさせたわ!俺はすぐさま否定する。


「いえ、人違いです」


「名札に書いてるじゃないか」


 しくじった。名札外すの忘れてた。ああもう、まあ名前は知られても顔を知られなければ……。


「いやあ、俺も尊敬してるんだよ。君みたいに学年でも上位を取れるほど努力をしている人は。君は確か魔剣士科に行ったんだよね?本当に素晴らしいよ」


 メガネ君はさっきのブサへの態度とは真逆に、俺のことを称賛してくる。ていうか、なんか変な気持ちだ。前世はチー牛チー牛と舐められていたのに、こんな知らないやつにまで俺は認められるようになったのか。


 やっぱり、今世はすべてに恵まれていると実感する。俺個人では頑張ったつもりもない。でも、すべてが上手くいくし、認められているのだから。いや、こいつらの嘘でただの社交辞令かもしれんけど。


 まあ俺のことは置いといて、一つだけお前たちは勘違いをしている。


「あの、俺は努力なんてしてませんが」


「……はい?うーん、まあそれは君の感想だろう。人は努力を努力と思わない人もいるし。ああ、あと君もこいつが努力不足だと思わないか?何か言ってやってよ、まあ、何言っても無駄だろうけど」


 メガネ君は急にブサの方を指さし軽くバカにする。バリ髪君もイケメン君もくすくすと笑いを隠さない。


「いや、俺はそうは思いませんけど」


「は?」


「だから、俺はブサが努力不足なんて思ってませんって」


「……」


 メガネ君は予想と反する回答に動揺しているのか、引き笑いをしながら続ける。


「は、はは、君は優しいんだな、正直に言っていいんだぞ?」


 俺はそれでも真顔で言ってやった。


「正直に言ってます。この世界は、環境と才能と運ゲーです」




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