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私の文字を読んでもらうのが、怖い

作者: うーた

小説も書いたことがないのに、漫画なんて描けるんだろうか。

いや、小説をなめているわけじゃないんだ。ただ作品を作るための作画コスト、小説ならば描写に掛かる工数が明らかに漫画のほうが多いからだ。

漫画が作画と原作で別れて制作されることが普通であるのに、一人ですべて描くのはそれだけ大変だと思う。

プロの漫画家はアシスタントを雇って描いているしね。

とはいえ、投稿するための読み切り作品は一人で描いているのがほとんどだと思うから、時間を掛ければ全然可能なことだとは思う。

製作時間を気にしなければ。

小説ならば1日で進む話が、漫画だと1週間、下手したら1か月かかってしまうこともあり得るとさえ思う。

ただそれはどれだけきれいに描くかによって変わるだろうから、少し雑に進めればそんなにかからないかもしれない。

そもそも小説だって、推敲を重ねていけば終わりはないだろう。芸術に究極の完成形はないんだから。作品は作者が完成と決めたそのときに完成する。


さて、つらつらと文章を書きなぐってみたが、これは私の思うままに書いただけの誰に見せるでもない文章だ。想定読者は自分だけ。

自分に見せると決めているだけ、文法や誤変換には気を付けて書いているし、最低限の読めるエッセイにはなっているだろうが、読者に伝えるための、エンタメ的な文章とはやっぱり全然違うだろう。

では、何が違うのだろうか。

それがわかったとき、整理できたときに私はまずエンタメ創作家としての第一歩を踏み出せると思った。

いや、第一歩はこうして随筆している時点ですでに踏み出している気はするが。


最終的にはエンタメ漫画を描きたいと考えている。漫画が描きたいなら漫画を描け、なんていう正論はわかりきっている。私は文字先行の人間で、へ理屈と理想論が得意などうしようもない詭弁家で、漫画なんか作る才能は全くないことは自覚している。

小説だって、実はこうして使っている哲学的な思考回路が全く役に立たないとは言わずとも、ほとんどがゴミであることはわかっているつもりだ。


私は高校を中退して独学で美少女イラストレーターになろうとした。一生懸命やっていたころは、月5万円稼ぐことができたのは今でもわずかな自信となっている。

絵を始めた理由は簡単だ。学校の勉強についていけなくて、逃げたかった。下手に中学の成績がそこそこ良くて、進学校なんかに入ったのが今思えば間違いだった。

絵じゃなくて音楽でもよかった。ただ簡単に金になりそうだったのが絵だっただけだ。


私は高校卒業程度認定試験を受けて、札幌にある漫画専門学校へ入学した。

一生懸命やっていたけれど、周りとプロの原稿を見て、自分の技術のなさからしてプロは無理だと諦めてしまったのと、親が払ってくれていた学費が2年目は相当厳しいだろうってことが分かって途中で辞めてしまった。

そもそも私ははじめは学校に行くつもりはなかった。母が、学校に行かないのは不安だったんだろう。200万円掛けてくれるなら、そのお金で暮させてもらう間に独学で学ばせてくれ、というのが本音だった。子供の頃から描いているわけではない私は、まず足りないのはたくさん自由に描いて学ぶはずの自力だとわかっていたからだ。私は専門学校が搾取される現場、馬鹿らしい費用だということはわかっていたからこそ、バイトをしながら、これまでの人生でそれ以上ないほどに一生懸命やったが、まあ当然、学校に行ったからどうという分野ではなかった。


専門学校の講義で印象に残ったものの一つに、講師から「誰のために創作するか」と投げかけられた場面がある。

AKIRAの漫画家・大友克洋の担当をやっていたという、なかなか威圧感のあるおじさんだ。

その質問は二者択一で、曰く、「自分の作りたいものを創作するか?」または、「周りが望むもの、ウケそうなものを創作するか?」といった内容だった。

多くのクラスメイトが前者で挙手する中、私一人が後者で手を挙げた。逆張りしている感覚はあったけれど、自分が間違っているとはみじんも疑っていなかった。どちらも正解という話だと思って聞いていた。

けれどもその講師は若干怒気と呆れを含んだ声で、「そうか、君は向いていない」のようなことを言った。

そのころ受注でイラストを描いていた私は、呆然としてしまった。商業作家とは、そういうものだろう。読者に媚を売って、ポルノを描いて、作家性なんていうのは勝手に出てしまうものだろうと思っていたからだ。

はっきりいって、今でもその考えは基本的に変わっていない。

ただ、今思えば私には彼の求める才能はないんだと思う。物心ついたころから漫画を描いて売れる天才は、たしかにみんな自分の作りたいものを描いていると思うからだ。

ただ絵を描いて最低な給金でいいからなんとか暮らしたいなんて考えていた私はそういう観点ではたしかにゴミで、メガヒットの芽なんて最初からない。

そう、私はポルノでよかった。エロ漫画で良かった。だってみんなが一番求めているのはそれだろう?


……。若干私小説じみた内容になってきた。それが少し嬉しいんだ。私小説だって小説だろう?

私はただの哲学的物書きから、小説家に近づいたんだ。そして書き進めているうちに、若干の心境の変化が訪れた。

なんと、読者のことを考える余裕が出てきた。

つまりは、この文章を読んだらどんな感覚になるかな、なんてことをちょっとだけほくそ笑みながら考えることができるようになったんだ。

もちろん読者の気持ちなんてまだほとんどわからない。ここで評価されていない数多のなろう作家でも、私よりもっとずっとはっきりと読者を想定できているだろう。私は小説家赤ちゃんみたいなものだ。まだ血の通った登場人物の一人だって書けていない。そう思うともはや胎児かもしれない。自分を直接描いたってそれはグロくてオナニーみたいなもんだから、ノーカンだ。

ほら、陳腐で気持ち悪いメタファーでうすら寒いギャグを書いている。


これで私が少しだけ成長したということにして、そろそろ疲れたし、この文章は終わろうと思う。

中に出てくる人が成長してたら、物語なんだから。

私はひとまずとても満足だ。もっと書きたいと、思った。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 講師の方が向いていないと言ったのは、単純に書きたいものがなければ続けられないからだと思いますよ〜(*´艸`*) 狂気にも似た根源的な満たされない欲求を持っているかどうか。 イラストで稼げる…
[良い点] 美少女イラストレーター♡ [一言] 小説も漫画もイラストもどれも夢があって素敵なお仕事だと思います。 現実は、夢を押しつぶしてくることがあるのかもしれませんし、詳しく事情を知らない私があれ…
2024/03/27 16:16 退会済み
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