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アリシア帝国-16

 僕はライラのそばにそそそっとより,


「うまくいったね、ライラ。ありがとう」

「いえ、伯爵と夫人が子供好きなのはよくわかりましたから。まあ、ロロ達のことを忘れることはないと思いますが、伯爵達を連れてきてよかったのではないでしょうか」




 お昼の時間になり、子供達と一緒にご飯を食べる。とは言っても、孤児院の食事である。そんな大したものでもない。しかしながら、子供達は嬉しそうに食べている。

 一緒に食事をとった伯爵と夫人は、出された食事にわずかに眉をしかめていたが、子供達の様子を見て、一緒に食べていた。食事が終わると、小さい子はお昼寝の時間。大きい子は勉強の時間だ。僕らと伯爵夫妻はここいらでお暇させていただく。


 伯爵達を送るべく馬車に乗せる。

 そうして、伯爵邸につくとお茶に誘われた。


「グレイス君。今日はありがとう。孤児院で子供達と触れ合うことができてとても楽しかった。朝方とても寂しいことがあったし、忘れることはできないが、子供達に未来があることを改めて実感したよ。ライラ様が一緒にいるのだから、事情は知っているのだろう?」

「はい、ライラにすべて聞いています。子供達を保護してくださりありがとうございます。あの獣人、ココとルルは、ライラについておりましたが、実際にはキザクラ商会の従者となっています」


 伯爵はライラのことを呼び捨てにしたことに驚いているようだ。


「あの、ライラ様を呼び捨てにするのは?」


 と聞くので


「ライラは私の婚約者ですから」


 そう言うとライラが頬をそめる。


「なんと、そうでしたか。あまり外に出なくなってしまったため、知りませんでした。ライラ様おめでとうございます」

「ありがとうございます。ローレル伯爵様からお祝いのお言葉をいただけるなんてとても幸せですわ」

「さて、あの子達のことですが」


 と獣人の子供三人のことを話す。


「ココとルル、三人の子供については、私達が責任をもって、獣王共和国のある大陸近くまで連れていきます。ココとルルについてはそこで奴隷から解放します」

「うむ。よろしく頼む」


 と、伯爵が頭を下げる。僕はそれを止める。


「ところで、私はまだ皇帝との商談が残っていて、出発は明後日になるんです。それで、せっかくお覚悟を決めたところを申し訳ないのですが、あと二日ほど、子供達を預かっていただけませんでしょうか」


 そう、お願いすると、夫人が目を丸くする。


「もしよろしければ、ココとルルも一緒に」


 と、付け加える。伯爵と夫人は顔を見合わせてうなずく。


「もちろんですとも。ココとルルについてもぜひ連れてきていただきたい。子供達の小さいときのことも聞きたいですし、もしかしたら、私達があちらにお伺いすることもあるかもしれません。親交を深めたいと思います」


 伯爵は夫人ともう一度目配せをして


「それと」


 と、続ける。


「孤児院のことですが、これからもお手伝いをさせていただきたいと思うのですが、私どものような年寄りにできることはありますでしょうか」

「それはもう。今日のように一緒に遊んだり訓練をしたり、本を読んだりですね、それに、勉強を教えていただけるだけでも、子供達の未来は変わっていくかもしれません」


 と言ったところで僕は「ですが」と。


「ローレル伯爵領にも孤児院はあるのではないですか」


 と聞くと、伯爵は「はっ」と息をのみ、夫人と目を合わせる。仲いいなこの夫婦。


「ターチャ」


 後ろに立っている執事のことだろう。執事はみなまで聞かなくても答える。


「この帝都と同じく教会に併設されております。代官様が支援をなされているかと思います」


 伯爵はホッとした顔を浮かべていた。


「子供を亡くした悲しさからあの地を離れていた。一度もどってみるか?」


 と夫人に聞く。


「はい」


 と答える夫人。


「自領の子供達の未来を開いてやれずしてなにが貴族だ。こんな老いぼれであってもまだまだやれることは多そうだな」

「そんな伯爵様をキザクラ商会は支援いたします」


 と言うと、


「商売上手だな」


 と伯爵は言う。僕らは笑いあった。



 この日、晩御飯を伯爵家でいただいた。ココとルル、子供達も一緒にだ。僕は伯爵と子供達の行く末について語り合ってしまった。よって後で京子ちゃんに


「完全におじいちゃんの発想だよ」


 と突っ込みを入れられてしまった。


 食後、僕達は、ココとルル、子供達を置いて帝城へ戻った。ココとルルには、


「ロロがおじいちゃんおばあちゃんと呼ぶ人に対してうやうやしくしてはいけないから、奴隷という身分は忘れるように」


 と言っておいた。




 翌日、帝城の訓練場に皇帝と宰相に来てもらった。バッタ対策のためだ。


「訓練場をお貸しいただきありがとうございます。私ども、というか、マイリスブルグから提案がございます。前回のバッタ騒動の時はいかがでしたでしょうか」

「こっちでは、周期が早まったせいか小型化したことが幸いし、大きな被害は出なかった。しかしながら、おかげで周期がわからなくなってしまった。次はいつ来るのか、どのくらいのサイズで来るのかな」

「マイリスブルグでは、一年遅れになったため、逆にバッタが大きくなり、大変でした」

「聞いておる。ドラゴンやワイバーンまでやってきてバッタを退治したと。本当か?」

「はい。本当です。五十ものドラゴン、五百のワイバーンも参加しました」

「それは、マイリスブルグはドラゴンに保護されていると取っても?」

「……多分そうではないと思います」


 僕は、ちょいちょいとこはるを呼ぶ。


「この子はこはるといいますが、私の婚約者の一人で、その、ドラゴンです」


 というと、皇帝も宰相も一歩引いて固まる。


「ですので、マイリスブルグというよりは、ローゼンシュタインに敵対すると……」


 と、そこまで言うと。皇帝は復帰し、


「わかった。もう言わなく良い」

「そうはいっても信じます?」


 といって、指を上に向けると、ドゴーンとこはるが空に向けてブレスを撃った。帝都中の空気が震えたのは言うまでもなく、この帝城では地面まで揺れた。僕が「ねっ」と皇帝に視線を向けると。皇帝はひたすらうなずくだけだった。


「さて、話を戻しますね。バッタ対策ですが、そんな理由で、どこの地域でもドラゴンたちの力を借りられるわけではありませんよね。この国ではどのように対応したのですか?」

「魔導士に火の魔法をひたすら撃たせ、魔法が撃てないものは、たいまつを持たせた。そうやって網に追い込んではつぶしの繰り返しだ」

「広範囲に広がる火の魔法などはどうでした?」

「そんな魔法を使えるものは少ないし、魔力切れを起こしてしまうからな。気にせず撃てるなら使いたい魔法だがな」

「そんなあなたに魔法陣です」


 聞いている全員が固まる。


「魔法陣のいいところは、だれでも使えるところ、詠唱なくすぐに撃てるところです。バッタ対策に有効だとは思いませんか?」


 と、プレゼンを始める。皇帝はうなずく。


「ソフィ、お願い」


 僕がやると匂うからだ。いや、匂わせないこともできる。

 ソフィは、一歩前に出て右手を前にかざし、訓練場の真ん中で広範囲に火が広がる爆発魔法を披露する。こはるのブレスに比べればかわいいものだ。それでも、無詠唱でそれだけの魔法を撃ちこんだ京子ちゃんに皇帝達は驚いている様子。


「この魔法を組み込んだ魔法陣を、バッタ対策のためだけに作りたいと思っています。これはマイリスブルグの総意でもあります」

「これを誰でも魔力が続く限り撃てるのであれば有効だろう。しかし、これは……」


 その先を察した僕は、


「さきほど申しました。これを作るのはマイリスブルグの総意ですが、実際に作るのはキザクラ商会、つまりはローゼンシュタインです」


 僕はためを作って、


「この魔法陣をバッタ対策以外に使うことは、ローゼンシュタインが許しません。わかりましたか?」


 と。

 皇帝は、


「なんて素晴らしいバッタ対策のためだけの魔法陣だろう。我が国としても配備できるのであればさせていただきたいと思う。して、どのくらいの値段になるのだ?」


 と、顔を引きつらせながら言う。


「いえ、バッタ対策は人の生活にかかわることですし、無料で提供しようと思っています。先ほどのような条件付きですが」

「そうか。それはすばらしい。ぜひ頼みたい。段取りは宰相と頼む」


 と言って宰相に丸投げするようだ。


「それでは、同じようなお話を、機会を見て他の国にもしたいと思っております。機会があればではありますが」

「わかった」


 と皇帝。他には? と聞いてくるので、


「例の魔法についての資料を見せていただきたいのですが」


 と言うと、


「ああ、例のな。宰相に頼んである。この後みせてもらえ」


 と言って、皇帝は去ってしまった。


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