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アリシア帝国-13

 シャスター公爵領に戻って二日。ここまで話を進めた。

 結構時間がかかったというべきか、それともたった二日でよくここまで決めたというべきか。

 ようやくグッドイール商会の会長が決まったので、商談を始めた。


「グッドイール商会で夫婦の獣人を扱っていたと思う。その二人を買わせていただきたい」

「この二人については、店にいなかったのですが、話を進めていいのですか?」

「三日前にここで暴れたときに檻が壊れてしまったらしく、外で震えていたところを僕たちが保護していた。だから、いったんそちらへ戻して、それを買い取りたい」

「承知しました。グレイス様が保護されているのであれば、こちらに戻さずともそのまま手続きを進めましょう。で、購入されるのは、グレイス様ですか? キザクラ商会ですか?」

「キザクラ商会にしておいて。僕はあんまりお金を持っていないから」


 というか、僕のお金はキザクラ商会が管理している。


「承知しました。そのように伝えておいていただければ、こちらから請求書を送っておきます。奴隷の足かせのカギはどうしますか?」

「貸しておいて。後で届けさせるから」

「承知しました」


 と、カギを借りておく。



 公爵邸の訓練場に止めさせてもらっている馬車まで行き、ココとルルの足かせを外してやる。で、状況を説明する。


「ココとルルをグッドイール商会から購入した。これで二人はキザクラ商会の奴隷となった。いい?」


 と聞くと。無言でうなずき返す。


「あらためて自己紹介するけど、僕がキザクラ商会の会長、ソフィとフラン、ミハエルは副会長だから、君たちの上司にあたる。それと、ソフィとフラン、こはる、ライラ、リリィは僕の婚約者、ドライアは客人だから。そこらへんもよく覚えておいて失礼のないように」


 と、同行者の説明もしておく。


「それじゃ、僕、キザクラ商会会長の奴隷として恥ずかしくない格好をしに行こうか」


 と言って、二人をつれだす。フードもなにもかぶせていない。街の中を普通に獣人が歩いている。

 道行く人は珍しいのか、ちらちら見てくる。

 しかし、キザクラ商会会長の奴隷だからという脅しがきいたのか、もしくはそっちが本当の姿だったのか、こことルルは、おどおどすることもなく、堂々と歩いてくれている。

 まあ、子供たちを探しに隣の大陸に来るくらいだ。もともとそれなりのステイタスだったに違いない。

 キザクラ商会につくと、従業員が出迎えてくれた。僕はココとルルを預けることにした。


「二人に執事服とメイド服をお願い。しっぽの部分は加工してね。必要だから何着かほしいし、靴から下着からすべて揃えてね。それらを入れておくカバンや日用品も全部お願い。これから二人をつれて旅に出るから。あ、忘れていた。二人に使う武器も聞いて、それも装備できるようにしといて」


 キザクラ商会にお願いし、僕は二人を置いて公爵邸に戻った。




 公爵邸ではバイオレットと皆が話をしていたので、それに混ざった。

 バイオレットは、体力を戻すためにできるだけ食べて、歩くところから運動を始めているらしい。

 また、かなでとリリィ、ライラが歌とダンスを見せたりしていた。動けるようになったら、歌を歌ってステップ踏んでダンスをするのも楽しいかもしれない。

 とりあえず、公爵家令嬢としては、社交ダンスからではなかろうか。と言ったら、僕に教えろと言ってきた。僕は基本的にかなで流だ。無理。


「バイオレット、僕らは明日には再出発するね。今回はトンボ返りみたいになっちゃったけど」

「はい。承知しています。たった一日の旅路でこれだけ楽しいお話を聞けたのですから、次にお戻りになられるのを楽しみにしています。次回はもっと動けるようになっておきますね」

「無理はしないでね」


 と、京子ちゃん。


「次は一緒にダンスしよう」


 は、リリィ。


「私のことも歓迎してくださいよ、さっきから視線がグレ……むぐむぐ」


 ライラがなにか言っているが、バイオレットに口をふさがれたようだ。


「もちろんですわ、お姉さま。私もいつか、お姉さまのようにいい人を見つけますね」

「もう」


 と言ってライラは笑う。皆もつられる。



 翌日、バイオレットにお別れを言い、公爵たちに見送られて公爵領を後にした。




「バイオレット様、ライラ様に宣戦布告をなさらなくてよかったのですか?」


 と、メイド。


「もう。たとえ命を救っていただいたとはいえ、たった数日で好きになっちゃうなんて、惚れっぽい女の子みたいじゃないですか。今は、こういう気持ちを抱けるようになったことを私は喜んでいます。それでいいのですよ。ねえ、これが恋なのですか?」

「さあ、私にはわかりかねます」


 と言って視線を逸らすメイド。


「ふふ。こんなに心躍るものだったのですね。ちょっと寂しいですけど」


 バイオレットはメイドに聞く。


「ねえ、あなたの恋話をしてくれないかしら?」


 突然のお願いに、顔を真っ赤にするメイド。


「いえ、私はメイドなのでそのようなことは」

「えー、一つや二つあるんじゃないの?」

「お嬢様、そろそろ、えーっと」

「予定なんてなにもないじゃない。ねえったら」


 これ以降、メイド達が顔を赤らめる被害が続く。




 僕達は帝都に向かって動き出した。当初の予定よりずいぶんと遅れちゃったけど、仕方ないかな。

 帝都まで三日の道のりだ。今度は時間調整の必要もないので、まっすぐ行くことにした。

 ココとルルがケルベロス馬車を操作してくれるので、御者台から追い出されてしまった僕らはケルベロスの背に乗った。


 予定通りに帝都につく。調整してもらって夜中に帝城に入った。この日は客室に通されて就寝。


 翌朝、朝食をいただいた後、僕とライラはココとルルを連れて応接室に向かう。応接室に通してもらうと、まだ誰もいない。

 僕とライラはソファーに座り、後ろにはココとルルが立つ。

 しばらくしていると、皇帝陛下と宰相がやってくる。僕たちは立って出迎えようとするが、手で制される。

 皇帝陛下と宰相は僕たちの後ろに立っている二人を見て一瞬固まったが、何事もなかったかのように対面のソファーに座った。


「この度は、バイオレットを助けてくれたこと、感謝する。すでに詳細は聞いている。ハミルト男爵のもとへはすでに兵を送っている。そっちもすぐ終わるだろう。報酬などは後で宰相と相談してくれ」

「今回は本当に大変だったんです。相手にものすごい魔導士がいて。見てください」


 と言って、傷つけられたままのコートを見せる。


「宰相が報酬に色を付けてくれるだろう。それで許してくれ」


 僕は苦笑いをして


「えっとですね、お約束でしたのでまずはこちらからお願いをいたします」


 と、ライラを見る。


「今回の解決をもって改めてライラとの婚約を許していただくことになっておりました。もう一度お願いをいたします。ライラをとの婚約をお許しください」


 皇帝は覚えていたか、と苦い顔をしたが、ライラが怒りマークをおでこにつけたにこやかな顔をしているので、仕方ない、というかのように、


「わかった許可する。ライラを幸せにしてやってくれ」


 と言った。僕は、


「それと、私の方からのお願いだったのですが、あの魔法のことをお教えいただきたい」

「それについては宰相に任せる。後日、聞いてくれ」


 皇帝がそう言って、その話は終わった。ついで、皇帝は


「そのあと、遅れたのはなぜだ?」


 と聞いてくる。


「後ろに立っている獣人のことは後にしますが、いったん公爵領に戻ることになりました。そこで主犯の一つだったグッドイール商会をどうするかという話を公爵として、キザクラ商会の傘下としました。表向きはグッドイール商会のトップが変わっただけでキザクラ商会とは関係ないように見せています。それに少し時間がかかりました」


 と、グッドイール商会はこっちの手の内に入ったよ、と言っておく。


「わかった。それから?」


 とココとルルに視線を向けて話を促す。


「立てなおったグッドイール商会で、二人の獣人をみかけたので、購入しました。それが後ろのココとルルです」


 ココとルルが軽く会釈をする。


「この二人は事情があって獣人の住む南西の大陸から旅をしてきたそうです。ですが、途中で路銀がつき、いったん奴隷となったとのことでした」

「なるほど、自ら奴隷になったものを購入するのはいいが、そこまでそばに従わせると目立つのではないか?」

「確かにこの大陸では獣人は目立つでしょう。しかし、できることもなにも変わりませんので、区別して扱う必要はないかと考えています」

「まあ、お前がそういうならいいが。それで、事情とは?」


 僕は、


「聞きますか?」


 逆に聞く。


「いいから話してみろ」


 と言うので話をする。


「この二人は獣人の住む大陸の北東部、つまり、人が住む大陸と近いところの町に住んでいたそうです。彼らには子供がいるのですが、その街に遊びに来ていたとあるやんごとなきお方の子供と一緒に行方不明になりました」


 このやんごとなき、というところでココとルルの目がわからない程度に反応した。


「そこで、彼らはこの大陸に三人の子供を探しに来たということです。もしかしたら奴隷になったのも情報収集のためにわざとかも?」


 と言って二人をチラ見した後、「しれません」と説明を終えた。


「その子供達が我が国にいるとでも?」

「さあ、どうでしょうか。で、心当たりはあったりします?」

「いや、ない」


 と、皇帝が言うので、まあ、ここでこの話も終わった。


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