アリシア帝国-12
獣人達は、人間が住んでいる大陸の南西にある別の大陸住んでおり、この二人は、その境目近くの街に住んでいた。二人は夫婦で、一人の子供がいた。
しかしながらある時、自分達の子供を含めて三人の子供が行方不明になった。そこで代表して二人が探しに出た。
フードをかぶって獣人とばれないように人間の街を巡ったが、全く見つけられなかった。
さらにアリシアの帝都に向かう途中に路銀も尽きてどうにもならなくなったところで助けてもらった人に、一度奴隷になって食事等の生活を得ることで体力をとりもどして、もう一度探しに出ることを勧められた。
二人で希望して奴隷になったものの、二人一緒にという条件が合わず、なかなか買い取ってもらえなかった。
買い取ってもらえないこともあり、食事等も制限され、そろそろ逃げ出そうかと思っていたところで、店が爆発。しかも、青いファイアバレットが何発も飛んできて死ぬ思いをした。
一方で何本かの檻が焼き切れたため、逃げ出すことができた。それで西の森に逃げ込んで、今に至る。ということだった。逃がしたのは僕らか。
「話は聞いた。だが、興味ないな。お前から死ね」
と言って指を組んで祈りをささげる格好の女性獣人の額に銃口を突き付ける。すると、京子ちゃんが。
「はい、そこまで」
と、僕の頭に軽いチョップを当てる。僕は魔法銃をしまって。
「まあね、ここまで脅しておけば」
と言って、女性獣人の目を見て、
「しゃべらないよねー」
殺気をのせて確認する。すると女性獣人はうんうんと頷いた。
「それくらいにしなよ」
と念を押す京子ちゃん。
「ところで、助けてくれとは?」
と言ったが、思い直す。
「いや、やっぱり話さなくていい。ここで別れよう。めんどくさいことはしたくない」
と言うと、女性獣人はさらに泣き出した。京子ちゃんはやれやれ、と、
「お子さんを探しに来たんでしょ? で、何をしたくて何を助けてほしいの?」
京子ちゃん、聞いちゃうんだ。
「先ほど話したとおり、ここまで子供達を探してやってきました。しかし、見つからなかったので、帝都まで行こうと思っています。しかしながら、生きるために奴隷となったものの、売り物の奴隷のままでは身動きが取れません。買ってもらってもいつ開放してもらえるかの条件がどうなるかわかりません。そこで、私たちを雇って帝都まで連れて行ってほしいのです」
「だめだ。それはできない」
と言うと、女性獣人はどうして? と泣き顔になる。そもそも、雇った奴隷の要望を聞いて帝都に連れていくのはおかしい。これには、京子ちゃん達も否定できまい。
「君たちは、グッドイール商会の商品だろ? お金を払わずに僕たちの奴隷にしたら、僕らが君たちを盗んだ犯罪者じゃないか」
残念ながら、事実だ。女性獣人は「そんな」と言って泣いている。
「さてと、シャスター公爵領に戻るか」
と僕。今朝、バイオレットと別れたばっかりだよね。どんな顔で戻るべきか。
「君達のそれを外すことはできない。僕らは自分達を守るために、最悪、君らを逃亡奴隷として差し出すからだ。ただ、そうならない道を探ろうとは思う」
と伝えると、「お願いします」という返事をもらった。
男性獣人を起こすと、「なにがあった」という顔をしているので、女性獣人に説明してもらった。特にしゃべってはいけないことがあるというところは強調して。二人は、ココとルルというらしい。男性がココ。二人は金属の玉をもってついてきた。
湖につくと、ドライアが僕たちに気づく。
「もういいのか?」
と聞くので。シャスター公爵領に戻ること、ついてきたのは獣人のココとルルという説明をした。
「出発するよー」
と言うと、猫たちは馬車の中へ。ケルベロスたちは馬車を引く準備を始める。皆でキャンプをした後を掃除して、湖畔をきれいにする。ココとルルはケルベロスを見て固まっている。手伝え。
「ディーネ様、たいへんお世話になりました。たくさんの魚もありがとうございました」
とお礼を言う。
「いや、かまわん。ドライアにあわせてくれてありがとう。また、いつでも来なさい」
と言ってくれた。とてもきれいな場所だし、魚はおいしいし、必ず来る、と言って別れた。
シャスター公爵領へ向かっている間に、ライラに聞く。
「獣人の子供が奴隷になる可能性はある?」
「先ほどお話したように、奴隷は理由があってなるものですので、子供が自ら奴隷になることは考えづらいです。聞いた限り、食い扶持を減らすためでもなさそうですし」
「じゃあ、なっている可能性は?」
「それこそ犯罪ではありますが、さらわれたケースなどは可能性があります」
「需要があるの?」
「ごく一部の嗜好家が子供の獣人を求めるということは聞いたことがあります。しかしながら、そういった人は獣人の子供にしか興味がありませんので、大きくなるともともと不法入手なので再度売ることはできませんし、悪い場合は」
と言って、ライラは言葉をつまらせる。なるほどね。もふもふを好む人はいるよな。僕も猫たちやケルベロスたちをもふもふするのは好きだ。
「なるほどね。可能性はあるわけだ」
「しかしながら、獣人の子供をめでること自体があまり人に言える趣味ではありませんので、ほとんど表には情報が出てこないと思います」
さて、どうするか。
シャスター公爵領についたのは結局夜だった。
裏口に立っている門番にお願いして、シャスター公爵に取り次いでもらい、中に入れてもらった。
シャスター公爵に、ケルベロスたちを預かってもらうことにして、僕たちはキザクラ商会にでも世話になろうと思ったのだが、結局公爵邸に泊めてもらうことになった。
夜遅かったので、バイオレットに挨拶しないで寝ようとしたのだが、バイオレットは僕の部屋へメイドさんとやってきた。
そこで、なぜか僕の部屋にいるドライアに京子ちゃん達を呼んできてもらい、少しだけ話をした。だって、まだ一日しかたっていないし。
それでも湖であったことを話したら喜んでくれた。
獣人のことはまだ内緒にしてある。ちなみに、獣人の二人は馬車の中だ。馬車の中には食材も風呂もトイレもあるのでそれなりには過ごせるだろう。
翌日、シャスター公爵からグッドイール商会について聞いた。
この商会、実は奴隷商会としてはそれなりに大きかったらしく、各地に支店をもっているらしい。
そんなに奴隷に対する需要があるのかと驚いた。だが、ラノたちを購入したのって、もしかしてグッドイール商会だったのかもしれない。全然覚えていない。
それで、今回の件で、当然のことながら、会長をはじめ、従業員は処罰される。
しかしながら、この商会をつぶしてしまうと、社会的な影響が大きいことが予想され、どうしたものかと悩んでいたとのこと。
そこで、僕は、グッドイール商会について、このシャスター本店の従業員を一新することで、何もなかったかのようにすることを提案。つまり、キザクラ商会がグッドイール商会を買い取るということだ。
商会名を変えるとそれはそれでいろんな影響が出るので、それもそのまま。一見何も変わらないが、裏にはキザクラ商会がいる、という構図になった。
買い取りにあたり、公爵には、誘拐などの犯罪は絶対に行わないこと、奴隷を人道的に扱うことなど約束した。
早速、リライアとその部下を呼んで、手続きを取らせた。
グッドイール商会の屋根を吹き飛ばしてしまったので、商会の建物は全体的に立て直しとなった。
当然お金がかかる。これについて、僕の名前でキザクラ本店に何とかしてくれるように手紙を書いた。
それと、グッドイール商会のトップと本店の従業員をどうするかで悩んだ。
僕はエルフ男性陣でもいいんじゃない? と言ったが、結局ここしかポストがなく広げられる可能性がないこと、エルフを雇うとキザクラ商会との関係性を疑われるということで却下された。しかたないので、グッドイール商会の商品だった奴隷たちを奴隷のまま雇用した。
もちろん、奴隷とわからないようにして。奴隷が奴隷を売るというのはおかしな構造だが、仕方ない。
従業員はそれでよかったが、会長はこの商会の顔である。奴隷に任せるわけにもいかず、シャスター公爵の知り合いの商人からその息子を紹介してもらった。
その上で親会社はキザクラ商会なので、リライアを上に置いた。また、会計業務もキザクラ商会で行った。
各支店についても、グッドイール商会からキザクラ商会への委託という形で監査に入らせた。これで悪いことはできまい。キザクラ商会の業務に会計監査行と経営コンサルタント業が加わった。また、女性エルフを雇わないとね。




