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転生ー5

 アンが僕を抱き抱える。なんか騒がしかったな。なにかあったのだろうか。とはいえ、これは魔力切れの影響だろうか、まだ眠たい。もうちょっと寝ていよう。




 リーゼロッテとシャルロッテは食堂で朝食をとる。

 リーゼロッテの食事はものすごい勢いだった。まるでこれまで取れなかった栄養を補うかのようにおかわりを繰り返している。

 その細い体のどこに入るのか。などと考えながら、シャルロッテは食事をとっていた。

 すると、屋敷が騒がしくなってくる。誰かが屋敷内を走っている。そんなことを許されるのは一人だけだ。リーゼロッテは、我関せずと食事を続けている。

 リーゼロッテは自分を見ているシャルロッテの視線に気づく。


「ん? どうした。もっと食べなくていいのか?」

「はい。もう十分いただきました」

「そうか。ではお茶でももらっていなさい」


 と、リーゼロッテはシャルロッテに提案した。が、次の瞬間に、フォークをチキンに刺そうとして動きを止める。


「そういえば、さっき、鏡台を持ってきたシャルの動き、見事だったぞ。黒薔薇に入る気はないか?」


 と、なんとも恐ろしいことを提案した。

 メイドたちが恐れ慄く騎士団だ。シャルロッテは丁寧にお断りをする。


「お誘い嬉しく思います」


 と、思ってもいないことを、まず返す。


「私はグリュンデールの人間です。申し訳ないのですが、そのお誘いに乗ることはできません」

「そうか? 残念だ。まあ、旦那様を放っておくわけにもいかないよな。すまん。忘れてくれ」


 リーゼロッテは食事を続ける。

 すると、バンっと音を立てて食堂の扉が開く。こんな行儀の悪いことを許されるのも一人だけ。


「リーゼ!」


 この家の主人、フリッツ・ローゼンシュタイン辺境伯である。

 フリッツは、リーゼロッテを見て固まった。それはそうだ。突然変貌したのだから。

 リーゼロッテは、チラッとフリッツを見て、また食事に戻る。

 いいのかそれで。


「リーゼ!」


 と、フリッツが動き出したかと思ったら、リーゼロッテに抱きつきそうな勢いで飛びついた。

 気持ちはわかる。

 二十歳そこそこの超絶美人に自分の妻が戻ったのだから。

 リーゼロッテの左側からフリッツが飛びついたものの、リーゼロッテは冷静に左手でフリッツの頭を抑える。アイアンクローって言ったっけ。フリッツは抱きつくこともできずにリーゼロッテの腕をタップしている。さすがはリーゼロッテだ。

 フリッツは冷静になり、服を正すと、


「リーゼ、子供を産んでくれてありがとう。母子ともに健康で嬉しい。それで、子供はどうした?」

「今、アンが面倒を見ています」

「そうか」


 フリッツはリーゼロッテの容姿について色々聞きたいのだろうが、聞きづらい様子を見せる。


「えっと、その服、懐かしいな。しかも似合っているよな」


 リーゼロッテはニヤリと笑みを浮かべる。


「旦那様。お願いがございます」


 フリッツは嫌そうな顔をする。


「黒薔薇騎士団の再結成をお願いします」


 あー、言われた、というフリッツの顔。


「しかし、しかしだな」

「よ、ろ、しい、です、よ、ね!」

「うむ」


 言わされた感満載のフリッツ。


「ありがとうございます。」 


 と、リーゼロッテは満面の笑みを見せた。

 リーゼロッテは、食事はもういいのか、デザートを食べ始めた。

 シャルロッテは自分の旦那様への対応として参考にすることを誓った。


「子供の名前なのだが、ところで、男の子か? 女の子か?」

「男の子でグレイスと名づけました。」


 フリッツは、タジタジだった。

 フリッツは諦めて子供が集められているアンのところへ行こうとした。

 食堂の入り口には、王都から連れてこられたと思われる司祭がいた。フリッツは司祭の肩をたたいてねぎらった。ここまで来てもらって申し訳ないと。司祭は仕方ない、むしろ健康になってよかったと、食堂を出て行った。


「お姉様、私も子供たちを見に行ってきますね」

「うむ、グレイスのこともよろしく頼む」


 シャルロッテは、「子供の面倒見る気あるのかな?」という顔をしたが、食堂を出てメイドたちの部屋へと歩いて行った。




 僕はアンに連れられてメイドたちの部屋へ。そこには三人とも揃っている。

 また同じようにベビーベッドに寝かせてもらう。

 わかっているメイドは僕たちの手を繋がせる。


「陵さん、昨日の夜、大きな魔力を放出、もしくは大きな魔法を使いませんでしたか?」


 と、ミカエル。


「あれ、気づいたの? おかげで眠たくてさ」

「陵くん、魔法使ったの? どう? どんな感じ? っていうか何したの? どうやるの?」


 って京子ちゃんは矢継ぎ早に聞いてくる。かなではさすがです、って呟いている。


「京子ちゃんは気づかなかったけど、二人は気づいたってこと?」


 京子ちゃんがちょっとまずいっていう雰囲気を出す。


「私ね、寝ちゃうと起きないでしょ? 知っているでしょ?」

「私たちは、自然エネルギーの流れを感じました。お屋敷の方へ集まっているようだったので」


 と言うかなで。


「それに、野性の鳥たちや野良の犬猫が騒いでいましたしね」


 とミカエル。


「うん。おかあちゃんが死んじゃいそうな雰囲気だったから、ちょっと治癒魔法が使えるかなって。寝息が落ち着いていたから、成功したんじゃないかと。あとは眠っちゃったし、さっきのさっきまで寝ていたからどうだったのかよくわからないんだよね」

「あー、メイドたちの話だけどね、昨日、陵さんが奥様の部屋に泊まったことに、箝口令がしかれたみたいだよ。しかも奥様が超若返ったっていう話じゃないか。奥様が若返ったのは神様のせいにするみたいだけどね。陵さんがやったんだよね?」

「そっか。若返った、と言うのがよくわからないけど、まあ、おかあちゃんが元気でよかった」

「陵様、そういえば、メイドさんたちが陵様の名前をグレイス様って呼んでいましたけど」

「そうなんだ。今日、父ちゃんがくるはずだから、もう来て名前をつけたのかな? じゃあ、グレイスってことでよろしくね。僕、もうちょい寝るよ」

「「「えー」」」


 こうして僕たち四人は無事に、一緒に、生まれ変わりを果たした。



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