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アリシア帝国-11

 僕たちは僕たちで目的があって魔獣狩りに来ている。その目的とは、リリィとライラに魔法銃の使い方を教えるためだ。

 リリィとの付き合いはもう三年以上になるが、教えていなかった。というか、このメンバーでは僕ら四人しかもっていなかった。

 魔法銃のことは、こはるも昨日戦ったドライアも知っている。

 ちなみに、こはるは遠距離はブレス、近距離は母親譲りの格闘ができるので、今のところ母親を除けばほぼ最強ではなかろうか。

 ドライアに関しては、昨日の戦闘を見る限り、近距離戦では蔓が使えるし、遠距離に至っては精霊を使って魔法を打ち放題だ。呪いまでかけられる。僕ら四人でも一対一ではかなわないだろう。集団でかつ魔法銃を使ってなんとか、って昨日のドライア戦で感じた。

 ちなみに、こはるには、魔獣が出ても僕らでなんとかなりそうだと思ったら任せてもらえるよういつもお願いしてある。じゃないと、頼っちゃうし。


 で、昨日のこと。夜中に押し入ってきたリリィとライラの二人だが、屋敷に置いて行かれたことを悔しがっていた。まあ、魔法陣が見えなきゃ危ないと思ったしね。で、僕らについて行けるように強くなりたいってことだ。

 だけど、これにはものすごく悩んだ。だって、対人戦なんてあんまりさせたくないし、することがあるとしても強くなるためには訓練しかない。対魔獣戦も同じ。これらは僕らといつもやっているし、こはるにも訓練をお願いしている。

 だからリリィはそれなりに戦えると思っている。ライラは……ケルベロスを呼ぶとか? 魔法はそこそこ使えるようだけれどね。

 だけど僕は、何と対戦するにしても魔法は発動までのスピードが魔法陣にかなわないと思っている。魔法の便利なところはイメージ次第でホーミング機能とかつけられるところだけど、戦闘中にそんなことを念じていたらその前に切られてしまうかもしれない。

 結局のところ、今回のようにキザクラ商会関係で狙われることがあるかもしれないこと、いざというときに身を守ってもらう手段が欲しいこと、それとなにより、このメンバーで隠し事はなしかな。と思ったし。

 ちなみに、らいらい研メンバーでは、ジェシカ、ベティ、ビビアンは黒薔薇に入ったのでもう扱っているはず。

 魔法銃を見たリリィは「三年間もこんなものを隠して」と複雑な顔をしていた。必要なかったでしょ、と言い訳しておいたけど。

 とりあえず、予備の魔法銃に使用者登録をして、その使い方を覚えてもらう。今日はアイスバレットの方をつかう。ファイアバレットはへたをすると森林火災を起こしかねない。昨日はグッドイール商店のなかで撃ちまくったけどさ。


「まず、絶対に人に向けちゃだめだよ。危ないからね、で、ここの安全装置をマルマークの方にして。これ、撃ち終わったらかならずバツマークの方にしておいてね。そしたら、まずは両手で持って、照準を合わせて」


 と二人に教えていく。十メートル先の切り株の上にちょっとした岩をのせてある。


「このレバーを指で引き込むとアイスバレットが飛び出すからね、三、二、一で行くよ」

「三、二、一」


 パシュ。まあ、最初から当たるわけもなく。


「何度か練習してみよう、魔力が続くまで撃てるから」


 リリィとライラは魔法銃を見ている。


「えっと、これ、いま、アイスバレットでたわよね」

「そう言ったよね?」

「いや、そうだけど、こんな簡単にアイスバレット出ていいの?」

「部室争奪戦の時、僕らがやらかしたのは覚えているでしょ。あれは水だったけど、これは氷。それだけの事だよ」

「それだけの事って。魔法じゃ水を飛ばすことはできても、氷を作ること、それを飛ばすことなんて、それなりに難しいのに。それをこうも簡単に」

「だからさ、人には教えたくないんだよね。ちなみに魔法銃のことを知っているのは、ローゼンシュタインとグリュンデールと歴代国王と宰相くらいかな。だから、よっぽどの時しか対人戦では使ってほしくないし、完全に魔獣相手か護身用だね」


 と説明する。ライラも恐ろしさをわかったらしい。


「これは、こんなものが出回ったらこれまでの戦争を変えてしまいます」

「そのとおりだよ。だから、気を付けてね。それと、知っておいて欲しいんだけど、僕やソフィがバッタの大軍を燃やした広範囲爆発魔法あるでしょ? あれ、魔法陣で作ることになった。しかも、要望する国に提供するつもり。ただし、対バッタ専用で、人に向けたり戦争に使わないという条件で」


 二人ともわかったと頷いた。


「さて、練習再開して。まだ当たってないよね」


 ぴえんな顔をする二人。それでも練習を続けて当たるようになってきた。そこで、二人を伴って森を散策する。すると、少し開けたところでホーンラビットを発見。


「狙ってみて」


 と二人に言うと、魔法銃を構えて撃つ。撃つ。撃つ。あたらない。ホーンラビットは後ろ足で頭をかいている。

 キーっとリリィが剣を抜くと、ホーンラビットは逃げていった。げんなりする二人。


「まあ、練習して少しずつうまくなればいいんじゃない?」


 といって慰めておく。


「さて、もう少し歩いたら戻ろうか」


 と言って、歩き出した。かなでに斥候として先を歩いてもらう。

 しばらくすると、かなでがハンドサインを送ってくる。何かが二匹いるらしい。リリィとライラにかなでの下へ行くように言う。そして銃をかまえる。かなでが指で合図を送り、二人が発砲する。何発も。

 二匹の何かが動かなくなったので、リリィとライラが見に行く。近づいたところで、その二匹がバーッと飛び出したかと思ったら土下座をした。


「すみませんすみません、命だけは」


 と。リリィとライラはまだ魔法銃を構えている。が、それが何かわかったところで魔法銃を隠した。魔獣のように見えたもの、それは獣人だった。しかも二人。


「すみません、攻撃する意思はありません。助けてください」


 と懇願し続ける二人の獣人。リリィが剣に持ち替え、かなでが鎌を取り出して牽制している。

 僕はというと、初めて見る獣人に固まっていた。思考がぐるぐるする。獣人っていたんだ、なんでこんなところに、なぜ今まで、いったいどこから、ところで何獣人……犬? 

 完全に要領をえていない。しかも、このパーティは僕が動かないと誰も動かないらしい。僕より先に硬直から解放された京子ちゃんが僕の脇腹をつついた。はっ!


「えっと、状況が全くわからないんだけど」

「どうか殺さないでください。確かに逃げましたけど、訳ありなんです」


 と懇願する獣人。

 すると、ライラが気が付いた。


「この二人、奴隷ですね」


 と。え。獣人の奴隷?


「アリシアでは獣人を奴隷にするの?」


 とライラに聞く。なぜなら見たことがなかったから。


「いえ、ほとんどしません。というか、獣人の奴隷はほとんどいません。そもそも奴隷は、借金のかたとか、口減らしとかで売られたり、自分で生きていけなくなってそれでも食事など生活の糧を受けるためになるものなんですが、この国にはそもそも獣人はいませんから」


 僕たちが首をかしげていると、


「獣人が住む隣の大陸からなにかの事情でこっちの大陸に来て、路銀に困ったとかそういう理由で奴隷になったのかと思います」


 獣人はうんうん頷いている。


「へー、何らかの事情とは?」


 と聞くと、獣人はだまる。


「路銀がなくなったなら母国に帰ればいいのに、奴隷になってもなお、この国に滞在する理由があると」


 獣人はなにも言わない。


「ライラ、で、こいつらが言う、殺さないで、というのは?」

「はい、逃亡奴隷は処罰、というか、処分されます」


 なるほど。


「で、ライラは何で奴隷だってわかったの?」


 と聞くと、獣人の足を指さす。なるほど、足に金属の輪がはまっており、そこからチェーンが金属の玉につながっている。ああ、典型的な奴隷だな。


「でもさ、こんなのをつけていたら働けないじゃん」

「いえ、まだ売られる前だったのだと思います」


 僕は、二人の獣人を見ると、頷いている。ライラやほかのメンバーに聞く。


「どうする? ほっとく?」


 と。なにやら訳ありらしいが、逃亡奴隷は処分されるらしいし、それは気分的にいやなので、ほっとくのがいいんじゃないかな。


「そうね。見なかったことにするのがいいんじゃない」


 と京子ちゃんが同意してくれる。


「よし、見なかったことにして戻ろう」


 と皆に提案して湖に足を向ける。皆がやれやれと歩き出したところで、


「ちょっと待ってください。お願いします。話を聞いてください。助けてください。それと、さっきのアイスバレット飛ばしたのなんですか?」


 と。見られていたか。僕は全力で踵を返し、殺気を全開にして獣人の口に魔法銃を突っ込む。


「見ていたか、仕方ない、処分される前に死ね」


 と言って引き金を引く。と同時に、京子ちゃんが僕の魔法銃に掌底をあてる。銃口が獣人の口からはずれ、アイスバレットが地面につきささる。死を免れた獣人は泡を吹いて気絶し、倒れた。もう一人の獣人、よく見ると女性だ、は、涙を流して


「ごめんなさい。何も見ていません。何も話しません。だから、だから助けてください」


 と両手の指を組んで懇願する。僕は倒れている獣人の眉間に銃口を当て、その女性に問う。


「ここにいる理由をすべて話せ。聞くに堪えなくなったら撃つけどな」


 と。すると女性の獣人は泣きながら話し出した。


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