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アリシア帝国-8

 さて、窓際少女の方か。こっちが落ち着いたところでタイミングよく、


「ドライア様がお目覚めになりました」


 と従業員がやってくる。ドライアって名前か。リライアと似ているな。まあ、どうでもいい。ドライアがいる部屋へ皆で向かう。


 ドライアは頬杖をついて窓の外を見て、不貞腐れたようにため息をついていた。


「ドライア様。私はリライアと申します」


 とリライアが中心となって話を進めるようだ。


「この度は、私どものことを憂いてこのようなところまで来てくださり、感謝の念が絶えません。しかしながら、私どもはこのように、自らの生きがいを見つけ幸せに生きております。どうか、ご安心ください」


 と。

 ドライアはポツリと話し始める。


「あの者は、キザクラ商会を潰せば、多くの女達が解放されると言っておった。それ以外に、協力してくれれば自分が囲っているエルフ奴隷も解放するとな。話は聞いたぞ。キザクラ商会の女達は自らの意思で働いておるのだろう? これもエルフの男性陣が誤解したことだろう? 初めから私が両者から話を聞いておれば、このようなことはならなかった。なあ、お前、キザクラ商会の会長と言ったか?」

「グレイス・ローゼンシュタインです」


 と一応丁寧に言ってみる。


「グレイス、すまなかった。お前たちに刃を向けたこと、謝罪する」


 と言って大きく頭を下げる。


「いえ、誤解が解けたならそれで結構です」


 と返事する。


「ありがとう、感謝する。それと、頼みがあるのだか。領主の娘にも謝らなければならない。とりなしてもらえないだろうか」


 と。

 もちろん、承諾する。ドライアが動けそうだったので、ケルベロスちびに乗せて部屋を出る。さらに店を出る時、


「これからも自身の意思で幸せに暮らせ」


 と、ドライアはリライアたちに言葉をかけていた。リライアたち従業員は丁寧に頭を下げて見送った。



 もうすっかり夕方になっていた。さっきケルベロスちびにドライアを乗せてキザクラ商会に行ったので、もういいかとケルベロスちびをそのまま歩かせる。なるべく周りを囲うようにして。


 シャスター公爵邸に着くと、公爵自ら出迎えてくれた。バイオレットの容態が良くなったそうだ。今は寝ているが、明日の朝には話ができるのではないか、と言うことだった。僕達は、食事をいただき、その後、公爵の執務室で話をした。


 まずは、キザクラ商会のトラブルに巻き込んでしまったことに対して会長として正式に謝罪をした。これについて、逆に、問題を解決したことに感謝をされてしまった。

 この件はそもそも、グッドイール商会が商品となる女性エルフを得られなくなってしまったことが発端となっていたようだ。それで妬まれたキザクラ商会に対する不信感を公爵や領民に持たせて潰そうとしたとのことだった。まあ、商会は信用が一番だ。しかも、公爵に睨まれたら、この国で商売はもうできまい。

 で、なぜ公爵家が巻き込まれたかというと、おっさんが発言していたヒーローの部分らしい。これには、ハミルト男爵が関わっており、シャスター公爵に恩を売るため、手を回していたとのこと。これらについては、全てグッドイールのおっさんが話しており、後は帝国として処理をする、とのことだった。

 最後にバイオレットの件だが、ドライアが公爵に頭を下げていた。騙されていたとはいえ、自分がきちんと調べてから行動すべきだったと。それと、バイオレットに会わせて欲しいとお願いしていた。今日は寝ているので明日にとなった。

 ということで、与えられた客室で今晩は休むことになった。僕はもう一仕事あったけどね。ただ、その仕事をなかなかさせてくれない一団が。ライラとリリィだ。

 僕の部屋に押し入り、何があったのかを聞いてきた。さっき、公爵の執務室である程度話したよね。聞いていたよね。でも足りなかったらしい。置いて行かれたこともちょっとは不満だったらしいけど。まあ、ドライアと対峙するのは、普通の令嬢には難しいと判断したのだ。僕らは普通の人だけどね。魔法陣、見えないと危なかったし。正しい判断だったと思う。

 最終的には、京子ちゃんとかなでがやってきて、二人を連れて行った。さて、行動しようか、と思ったところで、大きな緑の光の玉が部屋にやってくる。光の玉は、僕に近づくと、弾け、少女の体が現れた。


「なあ、なぜグレイス達は精霊たちが見えて捕まえることができたのだ?」

「うーん。わからないけど、魔力を込めて見ると精霊? あの光の玉のことだよね? が見えるし、手に魔力を高密度に集めることで掴むことができたよ」

「そんなことをできる者が人におったのか?」

「どうだろうね、他にもいるかもよ。ちなみに、僕ら四人は魔力が人より多いらしいし、こはるに至ってはドラゴン族だ。だから、多分ドラゴン達は見えるよね」

「そうか、あのちみっこはドラゴンだったか」


 少女がちみっこ言うな。


「無詠唱の砲撃はブレスだったのだな」


 と納得した様子。

 説明を聞いて僕も納得した。僕らが使う魔法陣は確か魔力だから、つかんだりできないはずだけど、あれは精霊だったんだなと。同じ魔法陣でも全く違うものだった。


「で、それを聞きにきたの?」

「まあ、それもある。私達精霊は人に見られないが、見られるようにすることもできる。今のようにな。だが、基本的には見られたいとは思っていない。だから、今後は気をつけるように子供達に言っておかないといけないからな」

「エルフ達にも見えないの?」

「ああ、エルフは私達精霊を祀っているから、時々姿を見せてやるようにしている。その程度だ」


 ところで、とドライアは話を変える。


「一つ相談がある。私はここの娘に対して償いをしなければいけない。私ができることといえば、生命力を与えることだけだ」


 生命力ってなんだ?


「生命力は、お前たちの言う魔力のようなものだ。お前たちは怪我や体力を魔法で治すであろう? それと同じことをする。それだけだ」


 要はヒールをかけるってことか。


「しかしな」


 とドライアは続ける。


「私自身、このように傷を負ってしまった」


 と腹を指差す。


「服に当たる部分のひび割れは治したものの、中はまだひび割れておる。それを治すのにも時間がかかりそうなのだ。それくらい私が持っているエネルギーは減ってしまった。とはいえ、娘を治す方が優先されるべきだろう」


 ちょっと意識が逸れる。魔法陣を使って働きかけるエネルギーってもしかして精霊自身や精霊を構成するエネルギーかと、勝手に納得する。ドライアの話は続く。


「あの娘を元の元気な姿にするため、私は自分の持つエネルギーを全て使ってしまうかもしれない。そうなったら私は消えてしまう。その時は、エルフたちに伝えてはくれんか。もう私を祀る必要はない。自由に生きろと」


 うーん。


「話はわかったが、断る」


 ドライアはしゅんと視線を落とす。僕は、ドライアの頭に手を置いて、


「じゃ、行こうか。それは僕がやるから」


 と言って二人で部屋をでた。バイオレットの部屋の前にはメイドさんが立っていた。夜中なのにご苦労様です。


「ドライア、あのメイドさんを眠らせる魔法なんてある?」

「簡単だ。だけど、立ったままかけると倒れるぞ」


 と言うので、


「任せて」


 と言っておく。ドライアが眠りの魔法をかけると、メイドさんは倒れる。が、その前にダッシュでメイドさんの元まで行き、支えて座らせる。

 さて、こっそりと部屋に二人で入る。バイオレットは寝ているようだ。顔を覗き込むと、呼吸は安定していても外見は病人のままだ。

 さて。


「ドライア、これからすることは内緒にしておいてね」


 ドライアは頷いて返事をする。

 僕は、体の中の魔力を込め、元の元気な姿をイメージしてメガヒールをかける。バイオレットの下に魔法陣が広がり、光が縦に登っていく。その光が弾けるとバイオレットの体が光出す。その結果を見て、


「よし。これで終わりだから、寝ようか」


 とドライアに声をかける。ドライアは驚いたのか固まっていた。僕が頭に手を置くと、動き出し、部屋を後にした。

 今回はバイオレット自身にあまり余剰エネルギーとなる脂肪とかがなかったから、よけいに細身になっちゃったかもだけど、これから鍛えればいいかな、と思った。それにしてもやっぱりメガヒールはかなり魔力を消費する。それぞれ部屋に戻って寝た。




 翌朝、当然のように一騒動起きる。バイオレットの容姿が細いながらも健康を取り戻したように見える。肌艶はよく、髪も光沢を持って輝いている。その変化に公爵邸内は大騒ぎだ。

 その騒ぎで目を覚ましたのか、リリィとライラが僕を起こしにくる。

 なぜに? 僕は疲れているのに。リリィが僕を揺さぶっていると、僕のお腹のところがぽっこりしていることにライラが気づく。

 リリィは意を決っして僕の布団を剥ぐと、そこには丸くなって寝ているドライアがいた。リリィは、ドライアが自分たちよりずっと年上であることを知っているが、説教を始める。


「なんて羨ましいことを」


 と。僕は聞かなかったことにする。それを横目に布団に入ってこようとするライラ。だが、もちろん未遂に終わる。京子ちゃん達がやってきた。

 京子ちゃん達はこれらの光景を見て、いつものことかと、ため息をついていた。


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