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アリシア帝国-7

「さて、茶番はもういいだろう」


 と窓際の少女。


「このままでは話し合いは平行線だが、分かったことは、キザクラ商会とやらがなくなれば、エルフの女たちの職場がなくなるってことだ。なら、そうすればいい」


 と言って、何もしない、と思ったら、何もない空間からウインドカッターが飛んできた。慌てて避ける。こはるがいう。


「ちゃんと目を凝らしておけ」


 と。集中して見回すと、そこには数十になる薄緑色の光の玉が飛んでいる。それが魔法陣を模ったと思ったらウインドカッターを放ってくる。なんと厄介な。


「こはる、これ、どうしたらいいの?」


 と聞くと。手につかんだ魔法陣を見せてくる。


「魔力を纏った拳か魔法でやればいいいだろう? ちょうどいいものを持っているじゃないか」


 と言って、持っていた魔法陣を手で潰した。なるほど。


「ソフィ、あいつらを狩って」


 意識をね。というと、京子ちゃんと護衛のミカエルが飛び出して、おっさんとエルフ男性陣の首に手を当て意識を狩る。それを見届けた僕は魔法銃を構えて


「リライア、これからみることは他言無用!」


 と言って光の玉を撃っていく。


「貴様ら、私の子を」


 え、少女だよね、あなた。とはいえそんなツッコミを入れる余裕もなく、ウインドカッターと魔法銃の撃ち合いとなる。

 流石にこれだけの撃ち合いになると、らいらい研のコートも被弾する。でも、その程度になんとか抑える。

 こはるは拳で殴って魔法陣を壊しているな。魔法陣に接近するスピードは相変わらずだ。魔法陣への攻撃にかなでと京子ちゃんも加わって、こっちが優勢になってくる。

 ミカエルは? というと、盾を持ってリライアを守っている。本人としては京子ちゃんを守りたいところだろうが。


「おーい、窓際少女。そろそろ攻撃していいかな?」


 というと、蔓の鞭が飛んでくる。しかも何本も。流石にこれを撃ち落とすのは難しいか。蔓を引っ張ろうと掴んだところで手を離す。ちっ棘か。少女はニヤッとしている。状況は他のメンバーのところも一緒か。何本もの鞭に苦戦をしている。

 こはるに頼んで吹っ飛ばして貰えば早いけど、少女だし、気がひける。バックステップで一旦距離を取り、ナイフを両手に握る。あの鞭、少女から伸びてくるから、狙うとしたら上からかな。


「フランー、行くよー」


 と声をかけると僕は突進する。近づけば近づくほど攻撃範囲が狭まってくる。思い切って踏み込んで鞭を纏めて切ったところで、飛んで少女の上をとる。

 少女はちゃんと僕を見ていてくれて、上に向かって鞭を飛ばしてくる。

 その隙にかなでが少女に突っ込み、ナイフの柄を幼女の腹に叩き込んだ。もちろん、魔力を纏わせて。

 叩きこまれた少女の腹は葉っぱの服ごとひび割れていき、少女は倒れた。


「フランー、ナイス!」


 と言ってハイタッチを交わす。他のメンバーともハイタッチする。さて、制圧完了。


「リライア、ちょっとお使いを頼まれてくれる? リライア?」


 リライアは、ミカエルの横顔を見てほおけている。うーん。つりばし。


「リ、ラ、イ、ア! この領都の騎士団詰め所に行って、オスカーさん呼んできてくれる? いなかったら他の人でもいいけど」


 と言うと、リライアは我に返り、急いで出ていく。僕達は、商会のおっさん、名前、最後まで聞かなかったな、と従業員たち、エルフの男性三名を拘束しておく。ひび割れ窓際少女はとりあえず、寝かせておく。


「あ、フランごめん、ケルベロスちび呼んで。可哀想なことしちゃった」


 とかなでにお願いすると、かなではケルベロスちびを呼び出した。ちょっと拗ねてる感じだったが、かなでがわしゃわしゃしてやると落ち着いたようだ。




 しばらくすると、リライアがオスカーと数人の騎士を連れて戻ってくる。


「お前たちは人使いが荒い!」


 とオスカーは怒っていたが、グッドイール商会の者たちを連れて行った。エルフ男性陣三名と少女はとりあえずキザクラ商会の支店へ連れて行く。男性陣を抱えるのは嫌だったので目を覚まさせて歩かせた。少女はケルベロスの上に乗せて移動した。ちびに乗せられるほど軽かった。


 支店に着くと、エルフ男性陣と少女は別々の部屋に連れて行かれる。店の中を歩くと、男性陣は従業員、全て女性、から白い目で見られていた。キザクラ商会はそもそも商社なので、普段からあまり客がいるわけではない。なので、臨時休業とし、皆で話し合いという名の説教と説得の時間となった。前者は男性エルフ、後者は少女である。


「長老! 私たちは里には帰りません。私たちはここに生きがいを見つけたんです」

「だが、ここまで女達がいなくなると、里の存続の危機なのだ」

「我々は何百年も生きますから、男性だけでもしばらくもつと思いますよ」

「しかし、このままでは子供も生まれないし、里は潰れるだけだ。お前達はそれでいいのか?」

「いいのです。私たちは、ロッテロッテ神に全てを捧げ、美を磨くのです」

「なんのために磨くのだ。神のためか? 自分を磨いてよく見せるのはより良いパートナーを探すためではないか!」

「何をおっしゃるのですか? 長老。里に帰れっていうのだって、長老達、自分達のためですよね。私達のためじゃないですよね。それに、自らを磨くのは、自身のためです。私達は美を身に纏い、自分達に自信をつけ、この社会で活躍する。いえ、この社会に貢献する。それがロッテロッテ神の教えだと思います」


 と。あれ、キザクラ商会が宗教化してしまった。まあ、社会貢献はキザクラ商会のコンセプトだし、形は魔道具や設備だったりアイドル活動だったり様々だけど、人々に喜んでもらう、というところは間違っていない。それに、従業員が自分に自信を持って働いてくれれば、それだけ企業としても魅力的に見える。従業員は企業の顔だ。なんか、ちょっと方向性として違う点もあるけど、もっともな話だ。

 それを聞いていたリライア兄が自信なさげに聞く。


「なあ、リライア、我々男性陣に働く場所はここにあるのか?」

「ないわね」


 一刀両断。


「ここは男も女もない世界だと思うけど、男にできることは女にもできるわ。だから、男に見つけてあげられる仕事はないわ。森で猪でも狩ってドヤ顔しているといいわ」


 とリライア。きついな。とはいえ、事実か。社会貢献が自分の使命と働く女性陣に対して、何をしていいのかわからない男性陣か。そりゃ、いらんな。


「我がキザクラ商会は輸送業もやっているの。冒険者には護衛の仕事を頼むこともあるわ。街には森にはない色々な仕事がたくさんある。全て社会貢献だけどね。そういうのに生きがいを感じるのなら探してみたらいいんじゃないかしら。ちなみに、我が社のモットーの一つは、働かざる者食うべからず、よ」


 リライアは続ける。


「里に帰った時だって、私達は女の子達に社会貢献や、自分自身の美を含む自己研鑽の素晴らしさ、やりがい、そして、ロッテロッテ神様の神々しさを伝えているだけよ。女の子達は、みんな目を輝かせて聞いてくれるわ。男どもは知らない顔をしているけどね。里の男どもはいつも獲物をとってきてドヤ顔し、雑用を全て女性に押し付ける。あそこに女性が活躍する場、女性が輝く場はないわ。女性だってね、私たちだってね、誰もがヒロインであるべきなのよ。それにね、知っていると思うけど、人との間に子供ってできるのよ」


 リライアがミカエルに視線のみを送って言う。ミカエル、よかったな、春がきたぞ。相手、何歳か知らないけど、多分僕らより長生きだぞ。


 その視線とリライアの態度に何かを察したのか、男性陣はもう、何も言わなくなった。男性陣はこの街に一泊して帰るらしい。


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