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アリシア帝国-6

 僕たちは、グッドイール商会という奴隷商の建物の前に立つ。すると、店番をしていたらしき男が声をかけてくる。


「坊ちゃん達、ここは子供のくるところじゃないよ、遊ぶなら他に遊ぶところがあるだろう」

「いや、僕達はすでに高等学園を卒業して冒険者をしている。だから、奴隷を購入しようとしてもおかしくはないだろう?」

「まあ、それはそうだが、うちの店の商品は高いぞ?」


 というので、金貨を一枚渡してやる。すると、態度が大きく変わり。


「これは、ご高名な冒険者様なのでしょうか。それでは奥へ、特に優良な商品をご覧いただきたいと思います」


 と、奥へ連れて行かれる。途中で、別の店員が店番に耳打ちをする。すると、


「申し訳ございません。当商会の主人がご挨拶をと申しております。二階までお越しくださいますか?」


 というので、頷いてついていく。


 二階に上がり、奥の部屋へ通される。そこにいたのは、太ったおっさんと、日当たりのよい窓際で水の入った桶に足を突っ込んだ少女。

 少女の髪は緑、肌の色は白に近い。服は葉の模様のワンピース。もしかしたら本当に葉かもしれない。また、腰を蔓で軽く絞ってある。蔓か。この少女の視線はこはるがもった魔法陣に向き、驚愕の表情を浮かべている。

 おっさんが口を開く。


「お客様、当店へはどういったご用件で?」

「この街のお嬢様を呪っているやつに聞いたら、ここに来いって言われてきたんだけど?」

「何をおっしゃいますか」


 と言って笑うおっさん。


「我がグッドイール商会は奴隷を販売させていただいております。呪いなど、そんなものがあるかどうかもわかりませんが、売ってはおりません」

「そうか」


 と言って、こはるに合図をする。こはるは魔法陣をおっさんに向ける。


「ぐぁー」


 と言って崩れ落ちるおっさん。こはるに合図を送ると魔法陣を逸らす。


「こういった呪いだけど?」


 それにと、


「心配ないよ。この呪いを治す薬がキザクラ商会で売っているからね。思い出すまで呪われてみる?」

「貴様ら!」


 と言って指をパチンと鳴らす。すると、部屋に何人かの男たちが入ってくる。が、所詮その程度。

 かなでとミカエルが丁寧に対応し、お引き取りいただいた。おっさんは目を丸くしている。


「何が目的だ!」


 というので、素直に答えておく。


「我が商会の名前を語って、悪いことをしている人がいるっぽかったから、確認に来たんだよね」


 というと、おっさんは驚いて、


「まさか、キザクラ商会か?」


 と聞くので、


「そうだよ」


 と答えておいた。犯人確定だな。


「貴様の、貴様らのせいで……」


 と、どうやら、知らないうちに恨みを買っていたのかな? と思っていたら、窓際から蔓の鞭が飛んできた。


「お前たちがエルフの女どもを攫って無理やり労働をさせているキザクラ商会か?」


 と、少女がすごい形相だ。もはや人とは言えないほどに怒りを表している。あれ?


「えっと、そこのお嬢ちゃん? この街にもキザクラ商会の支店があるよね、見に行ったかなー?」


 少女は怒り口調で


「見ていない。だが、お前たちが、エルフの女どもを攫っているのは事実であろう!」


 攫っているか。


「ちょっとフラン、悪いんだけど、ひとっ走りして、支店長連れてきて」


 と頼むと、かなでは部屋を飛び出した。


「攫ってなんていないよ。自主的に働いてもらっているだけだし、お給料も払っている。里帰りもさせているだろう? 見ていないのか?」


 と言うと、さらに奥の部屋から三人の男が出てきた。エルフの男性、一人はおじいちゃん、二人は青年だ。


「里々に帰ってきたやつらが、女達に有る事無い事拐かしているのだ。脅してやらせているのだろう?」


 と、おじいちゃんエルフ。


「リクルートはやっているけどね、自主的であって強制的ではないよ。で、おじいちゃんは誰?」

「わしは長老のリグリスだ」

「ちなみにおいくつ?」

「七百六十三になったわ」

「よく覚えているね」

「几帳面じゃからの」

「話を戻すけどね。その長老さん達エルフの皆さんは、キザクラ商会に攫われた、言いがかりだけどさ、女性を取り戻したいの?」

「そのとおりじゃ。攫うことも、脅して強制労働させることも許し難い。解放してもらう」

「それはわからないでもないけど、なんで、攫って売るのを商売にしているこいつと組んでいるわけ?」

「私どもグッドイール商会は奴隷を人道的に扱うことをモットーとしている。攫ったりなどしない。だからキザクラ商会のやるようなことは気に入らない。だから協力している。一番手っ取り早いのは、キザクラ商会を潰すことだ」

「うーんと、この商会にもね、キザクラ商会から買ったもの、いっぱいあるんじゃない? いいの? 潰しちゃって」

「商会なんてものはな、換えはいくらでもあるし、なければ作ればいいのだよ」

「まあ、わかった。それで、両者はキザクラ商会を潰すことで協働していると。キザクラ商会の敵になると」


 と悪い顔を浮かべたが、もう一個聞きたいことが。


「で、なんで領主のお嬢さんに呪いを?」

「領主やお嬢様に気に入られる正義のヒーローになるためには、悪役が必要だろう? な、キザクラ商会」

「そっか、お嬢様を苦しめ続けるキザクラ商会を潰してね。で、後ろにいるのは誰? まあいいけど、後で聞かせてもらうから」


 さてさて、せっかく来てもらったのに放置も失礼。


「ごめんね、支店長さん。ちょっとお話を聞きたいんだけど、とりあえずお名前は?」


 と言うと、支店長が前に出てくる。それを見て、青年エルフの一人。身内かな? が驚いている。


「リライアと申します、会長様」 


 あれ、会長だってよくわかったね。かなでに聞いたかな? リライアは黒のタイトスカートのスーツを着用している。キザクラ商会の制服だ。やっぱりエルフに似合うな。


「それで、私をここに呼んだ理由はなんでしょうか」

「ごめんね、忙しかったでしょ? ちょっとキザクラ商会で働くってことがどんなことか、実際に働いている人に聞いてみたかったんだよね」

「何一つ不満も不自由もございません。このような仕事を与えてくださったことを感謝しています。しっかりと休みをいただけますので里帰りも旅行にも行けます。何より、このキザクラ商会の制服にしても、キザクラブランドの服にしてもステータスを感じております。今は、この服に相応しくなるため、スポーツをしたりサロンに行ったりして、自己を磨いております。こういった私どもを応援してくださる施設も提供してくださるこの商会は理想の職場です」


 とうっとりした表情で話すリライア。


「そんなのは嘘なんだろ、言わされているんだろ。帰って来ていいんだぞ」


 という青年エルフ。


「違いますわ、お兄様」


 兄さんだったのか、なんて偶然。


「私は、私たちは、このキザクラ商会のおかげで輝けるのです。私たちの寿命は長い。私もあと五百年は生きるでしょう。死ぬまでずっとこの美しさを維持して見せます。いいえ、もっと美しくなって見せます。それを実現してくれるのがこのキザクラ商会なのです。だから帰りません。絶対に」


 と力強く言い切る。

 それに、と続けるリライア。


「私たちの前には信仰する神が現れました。ロッテロッテ様という二柱の神です。私は本店での研修中に神々の舞をみることができました。なんと美しかったことか、神々は人の姿をとっていながらなお、私たちエルフを魅了したのです。私は美の神ロッテロッテ様を信仰し、一生を捧げます。そのロッテロッテ様に一番近い場所、それが、このキザクラ商会なんです」


 と胸の前で手を組み祈りを捧げだすリライア。すごいな、母上とシャルロッテ様。エルフ達をも魅了するか。


「戻ってこいリライア」


 と、兄。二重の意味だな。


「洗脳されているのではないか? 俺達が守ってやる」

「守る? 何をおっしゃいますの? お兄様。このキザクラ商会の制服は最強でしてよ」


 とリライアは断言する。意味が通じるといいなー。


「そんな服ごときが最強なわけがあるまい。どれ、試してやる。ウインドカッター」


 おい、爺さん。やっぱり誤解しているか。


「なっ」


 と言って回避しようとするリライア、その前に盾を持って構えるミカエル。ミカエルの盾で簡単にウインドカッターが消滅する。そのミカエルの行動に頬を染めるリライア。

 リライアは「はっ」と我に帰り、


「長老、危ないじゃないですか。何をするんですか。この美しい肌に傷がついたらどうするんですか」


 と激昂している。肌に傷ね。服だって切れるぞ。


「そんなに言うなら、キザクラ商会の制服が最強だと言うことを思い知らせてあげます」


 と言って、僕をみる。やれやれ。僕は人差し指を天井に向けて


「こはる」


 と一言。すると、「ドゴーン」と吹っ飛ぶ屋根。


「わーわしの店がー」


 と叫ぶおっさん。まだいたんだね。目を白黒させるエルフ男性陣。リライアは彼らにドヤ顔で言う。


「これがキザクラ商会ですわ」


 ふふん、と。リライアが笑う。


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