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アリシア帝国-5

 庭に出ると、こはるが言う。


「どうする? まだちょっとタイミングが早いの。猫達も帰ってこんしの」


 と。


「でもそいつ、どうするの?」


 というと、


「投げて遊ぶか? 回している間は自由がきかないっぽいぞ」


 と。なるほど。


「ただし、魔力を高密度で纏わんとすり抜けて逃げられるから、気を抜くなよ」


 と言って、僕にフリスビーの要領で投げてくる。

 危ないじゃないか。と言って、僕はキャッチする。そ、れを京子ちゃんに投げる。

 京子ちゃんも緊張感を持ってキャッチする。それをこはるに投げる。

 と、キャッチボールならぬキャチフリスビーを楽しんだ。意外と楽しめた。今度、木で作ってみよう。

 しばらく遊んでいると、シロタエが帰ってきた。ではいくか、と思ったが、公爵に一点だけ伝える。そのためにバイオレットの部屋まで戻る。公爵に耳打ちする。


「ちょっと出かけて来ますが、僕たちが帰ってくるまで、バイオレットが良くなった、ということは言わないで、悪いままだということにしておいてください。気づかれたら面倒です。それと、奴らは、ローゼンシュタインに敵対しました。僕としては、処分してしまいたいところですが、ここはアリシアです。捕まえたら、引き取ってもらえますか?」


 と。公爵に快諾してもらったので、改めて出かける。

 僕たちの前をシロタエが歩いていく。そして路地裏に入ったところで、ポンチョを被り、仮面を顔につける。

 しばらく行くと、大きめの家、というか、小さめの屋敷の前にでた。僕らは物陰から覗く。リッカ、サキガケ、ライコウは、屋敷の周りに陣取っているのだろう。


「シロタエ、中に何人いる?」


 と聞くと、右足で四回地面を叩いた。四人か。失敗したな。初めから連れてこればよかった。


「ちょっと、オスカーさん連れてくるわ」


 と、僕は公爵の屋敷に戻る。騎士団の詰め所に行くと、オスカーさんを呼んでもらい、事情を話す。


「地味な目立たない格好をしてついてきて」


 とお願いすると。オスカーさんは、そこらの地味な町娘みたいな格好をしてきた。「意外とかわいいですね」と言うと、オスカーさんはほほを染めて背中を殴ってきた。


 さて、オスカーさんを連れて戻ってくる。


「逃げてない?」

 

 と聞くと、京子ちゃんがうなずく。


「とらえたいから素手でやろうか。でも危険だったら発砲を許可」


 ここは小声。


「それと、動けなくしたら縛ってね」


 それと、オスカーさんに、


「縛った奴ら、連れていって欲しいから、ここで待っていて」


 とお願いし、


「こはるもそいつ持っていて動きづらいだろうから、ここで待っている?」


 とこはるに聞くと、


「こいつを持っているからこそ行く」


 と。なるほど。そいつで弱らせるワケだな。


「それとフラン、屋敷に入った瞬間に、一体でいい、ケルベロスちびを召喚、よろしく。じゃ、行くよ」


 と言って、道をわたり、屋敷の玄関をそっと開けて中に入る。かなでが召喚したケルベロスちびが一体やってくる。


「逃げる奴がいたら押さえて」


 とケルベロスちびにお願いして、僕らはシロタエについていく。

 シロタエはある部屋の前で止まる。

 三、二、一でこはるが飛び込み魔法陣をかざす。そうすると、「グワー」と三人の男がうずくまるので、僕とかなで、ミカエルが一人ずつ無力化して縛っていく。

 もう一人足りないじゃん。と思った時には、こはると京子ちゃんが部屋から飛び出していた。

 結局、その男は裏口でケルベロスちびに取り押さえられていた。その脇には、三匹の猫が控えていた。

 京子ちゃんはケルベロスと猫たちを撫でてやると、外へ出て、オスカーを呼んだ。最後の一人をオスカーが縛ると、僕たちは縛った三人を連れて合流する。オスカーに


「後はよろしくね」


 と言って屋敷を出る。オスカーは、一人でどうしろって? と言っていたが、まあ、なんとかして。



 さて、本命の方へ行こう。

 魔法陣を使ったフリスビーをしていた時にこはるに「目を凝らしてよく見て」と言われた。その時にフリスビーから極細の糸のようなものが伸びているのが見えていた。今度は、それを伝って行く。


 猫たちと一緒に走っていく。ケルベロスちびは、先の屋敷においてきたが、到着したら呼ぶ予定だ。


 領都のほぼほぼ反対側の商店街へいく。大きな店が並んでいるが、その一店に糸は伝っていた。そこは、グッドイール商会、奴隷商だった。




 ちょうどその頃、とある奴隷商会では、


「おかしいです。呪いの魔法陣とした精霊が戻ってきます」

「どういうことだ?」

「わかりません。こっちに近づいてきます。ちなみに、私のいうことを聞かないのではなく、聞けないのだと思います」

「それは誰かがこっちに持ってきているということか?」

「そうなりますが、精霊を捕まえるどころか見ることができる者など、いるとは思えません」

「ということは、今、公爵令嬢は?」

「公爵令嬢がこちらに向かっているのではなければ、精霊を誰かが持ち歩いており、公爵令嬢への呪いがなくなっていることでしょう」

「公爵令嬢を呪った者が、この奴隷商にいることがバレたのか?」

「その可能性はあると思います」

「だとしたら、まずい。その場合は、必ずなんとかしろよ? 高位精霊様なんだろう? 女エルフたちがどうなっても知らんぞ?」


 と奴隷商は笑う。


「わかっています。それらの者をここまで呼び寄せていただければ、私が倒します」

「なあ、お前たちも当然手伝ってくれるんだろう?」


 と奴隷商が奥を見ると、そこから、数名の男エルフが現れ、


「無論だ。エルフの女たちを解放してくれるなら」


 と返事をした。


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