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高等学園3-14

 後日、僕は父上と一緒に王宮に呼ばれた。そこには、陛下、アンディ、宰相の三点セットがいた。この二人が呼ばれたということ、二人しかということは感謝状ではあるまい。


「此度のバッタ襲来に対して見事な活躍だった。感謝する」


 という前置きをして、


「今回のバッタに対する我々の攻撃手段だが、人海戦術しかなかった。ドラゴン達や猫達にも助けられたがな。結局のところ、殴る蹴る踏み潰すだ。網を振ったところで、結局手返しが悪い。網を使った仕掛けも、かかったそばからバッタを始末していかないと、網が切られてしまって、これも使いづらい。結局のところ、一番効果があったのがドラゴン達のブレスと、グレイス、お前達が撃った広範囲魔法だ。しかも、お前達、無詠唱で撃ったな? それはいいとして、我が兵士達にも冒険者達にも魔法を放てるものはいた。だがな、詠唱している暇があったら殴り潰す方が早かった。結局のところ、バッタには広範囲魔法が有効だが、詠唱つきの魔法なんて意味をなさなかった。なあグレイス。我が魔導士たちに広範囲魔法の無詠唱発動を教えてくれんか? 魔導士団の教官にならんか?」


 え、えっと。僕はどうしてもあの銀髪天使の言葉が気になる。魔法にしろ魔道具にしろ人の行動に大きく影響を及ぼす。母上は心次第だと言った。要はしっかりと教育をすればいい、ということだろうけど。


「大変ありがたい申し出ではございますが、お断りさせて頂くことをご容赦願いたいです」


 と僕。


「なぜ?」


 とそりゃ聞いてくるよね。


「僕にはまだ覚悟ができていません。あれは攻撃魔法なんです。使い方を誤れば人が死にます」

「しっかりと教育すればいいのではないか? わしはそれを使って他所を攻めようなんて思わんぞ? それに、その魔法があれば、十五年後か十六年後かわからんが、もっと楽に対処できるようになるのではないか?」


 僕は、そのとおりだと思う。だけど。


「それでは魔道具を作ってくれないか? 魔道具は厳重に王宮で管理し、バッタ襲来の時にしか出さないことにするが? お前は、水を飛ばしたのだろう? そしたら、炎を飛ばすこともできよう。実際に魔法銃があるのだしな。魔法銃も攻撃魔法だが、使い手次第だろう」

「他国はどうなのですか? 他国でも同じようにバッタが発生しているかもしれないのですよね?」

「うむ。しておる。情報ももらった。それぞれ、予定の年でなかったからかあまりサイズが大きくなくてな、被害はさほど大きくはなかったらしい。とはいえ、アリシアは元々経済的に問題を抱えていた上でのバッタだからな、泣っつらにハチだろうよ。いや、バッタか」


 胸に刺さる。父上も胸を抑える。


「とすると、もし、魔法陣を作った場合、必要があれば、他国にも供与した方がいいのではないでしょうか。ですが、それは同時に危険を孕みます。それに、この王国だけがそれを持っていたとしても、妬みを買うことになります」

「まあ、そのとおりだわな。だがな、魔法陣は誰が作るのだ? お前であり、ローゼンシュタインだろう? お前がバッタ以外に使うなと言って供与し、それを戦争に使ったら、お前は怒るだろう?」


 うん。と頷く。


「そうしたら、誰が出てくる? 我が国じゃないぞ? 今回のバッタ騒動でも出てきただろう。ドラゴン達が」


 あー、うん。


「今回、それをこの王都の大勢が見ている。実際、お前の前に降り立ったから、お前の関係者であることは皆が知るところだ。ドラゴン、五十体以上いたぞ? 一体で余裕でこの王国を滅ぼすぞ? しかも、五百のワイバーンを従えてだ。お前は全人類を滅ぼすだけの戦力を持っていると判断されているんだぞ?」


 銀髪天使の顔がよぎってまた胸が痛い。


「私とてドラゴンには勝てません」


 と言うが、


「協力関係にはあるだろう」


 と言い返される。


「そんなお前がバッタ以外に使うな、と言ったら、たとえドラゴンが出てこなかったとして、誰が人に向かって撃つか。まさに自殺だ。しかも全国民を巻き込んだな」


 陛下はため息をついて、続ける。


「だからな、もしお前が心配するのであれば、これから開発するであろう魔道具には注意書きを入れておけ。間違った使い方をしたら怒るぞってな」


 と言って陛下は笑う。


「と言うことで、魔法陣の件は検討を頼む。魔法陣の方がタイムラグがなく撃てること、誰でも撃てることから、有用性は魔法より高いんだ。よろしくな」


 と言って陛下は退出していく。


「もう、国王代わってくれよ」


 というつぶやきは聞かなかったことにする。アンディ、大変だな。とアンディを見ると、睨み返された。残された宰相とアンディがやってくる。


「と言うことで、資金はどうする? 開発する場所はローゼンシュタインでいいんだろう?」


 と。もう作ること前提じゃん。


「ですが、僕はまだ学生で」


 と言うと。


「構わないぞ。次のバッタの襲来までにできればいいのだから。少なくとも十年以上は先だろう」


 そうだといいな。宰相も退出していく。父上も、


「私も疲れたから先に帰る」


 と言って退出していった。

 アンディと二人きりになる。


「なあ、あの広範囲爆発魔法の魔法陣を作るのか?」

「うん。乗り気じゃないけど、そうなるのかもな」

「頼みがあるんだけど」

「何?」

「臭いのしない方でお願い」


 うん。




 後日、今回のバッタ襲来に貢献した者に国王から褒美が出ることになった。しかし、僕らはそれを断った。街の人達が大勢頑張ってくれたのだから、街の人達に送ってほしいとお願いした。ただ、猫達の地位向上についてはお願いしておいた。その結果、公園に猫の水飲み場などが整備された。また、猫を飼うものに少しの補助が出された。

 ただし、この冬の食糧難に備えて王国祭などは自粛された。こうして冬がやってきた。いつにもまして雪が降った。おかげで街道という街道が封鎖されてしまった。しかし、事前に準備をしておいたおかげで、電池の供給は間に合ったし、例年より寒くても薪は足りた。食料も干物を初め、十分とは言い難かったが、足りなくはなかった。



 そうして春が近づき、僕達は卒業を迎える。卒業式では、らいらい研の卒業ライブを行った。リリィのバンドも盛り上がった。オリビアとライラは二人のグループを組んだ。かなでたちの四人組もいつもどおり。後輩達は「もう見られないのか」と泣いた。僕達はあくまでもアマチュアなので、おそらく趣味以外でステージに立つことはないだろう。

 ちなみに、ライラはあと二年間通うことになるのだが、らいらい研がなくなる以上、一人でも維持できないし、クラブ活動はやめてしまうとのことだった。




 ライブも終わり、打ち上げという名の夕食を食べる。いつものようにローゼンシュタイン邸でだ。いつも思うのだが、アンディはそれでいいのか?


「ライブ、盛り上がったねー」


 という、思い出し笑いをするリリィ。


「うん、最高だった」


 は京子ちゃん。


「私たちも二人で不安でしたが、とっても楽しかったです」

「私もです」


 とはオリビアとライラ。


「マリンバ隊のパフォーマンスも良かったねー」


 マリンバ隊は、ジェシカにビビアン、こはるに加え、謎の仮面ちみっこも加わっていた。


「練習したもんねー」


 とジェシカ。


 などなど、みんなで大盛り上がりした。卒業式なのでしんみりするとも思ったが、別に離れ離れになるわけじゃない。なったとしてもすぐに会える。


 アンディとクララ、ケイト、オリビアは王宮で務めるらしい。ボールズは騎士団入りが決まっている。ジェシカとビビアンは黒薔薇入り。僕、京子ちゃんはキザクラ商会の役員になっている。かなでとミカエルもだ。この二人は僕らのお付きをすると言っているので、独自でどこかへ就職することはない。こはるは、そもそも働く気なんてない。それこそ、僕と一緒にいることが仕事だと言っている。さて、


「リリィはどうするんだ?」


 と聞いてみる。ちょっと意地悪だったかな。リリィは俯いている。なぜなら、リリィが就職活動をしていないのを知っている。リリィがプルプル震え出した。あれ? 予想と違うぞ?


「私は、私はあなたと一緒にいるって言ったわよね。わかっているんだから、私のポストをあなたの横に作りなさいよ。ほら、今すぐ!」


 と、怒り出した。


「いやいや、悪かったよ。でもな、働かざるもの食うべからずだぞ?」

「わかっているならならいいのよ。で、みんな、聞いたわね。私をずっとそばに置くってグレイスは言ったからね」


 と。お前、何を言っているんだ。


「よし、黒薔薇に入れよう」


 と呟くと、ジェシカたちや「ようこそー」と言い、リリィは「違うでしょ」と言っている。まあいいか。実は、キザクラ商会もラノたちに任せっきりで僕らは何もしていないのだ。だけど、キザクラ商会で働いてもらうくらいがいいかな?


「なあ、カルバリー侯爵は領地を出ることを許してくれている?」


 リリィは首を傾げている。えっと。


「リリィ、父上、就職、知っている?」


 というと、リリィは怒ったように。


「何も相談していないわよ。私は婚約破棄をされた可哀想な令嬢なの。だから、私の好きなようにさせてもらえるわ」


 まじかよ。


「じゃあ、侯爵にはちゃんと了承してもらっておけよ」


 というと、リリィは急にしおらしくなる。


「ねえ、グレイス。お父様に一緒にお願いしてくれないかしら」


 え? なぜに? まあいいや。


「考えておく」


 と言ってこの話を終えて、みんなで話を楽しむ。結局のところ、いつもと何も変わらない。いつものように話していつものように別れた。

 ただ、いつもと違う約束を一つ。夏休みには必ず冒険者としての活動をみんなですること。

 別々の道に進んだとしても、集まってみんなで会って活動できるってことが嬉しかった。

 だから何も寂しくはなかった。


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