高等学園3ー11
「しかも、魔法は使いたいわ技術開発はしたいわって。なにそれ、人間からしたら恐怖の対象でしかないよね、過去の経験から言ってさ。まあ、誰のことかわからないけど」
僕のことだ。
「でも困ったことにさ、思ったよりスピードが遅いんだよね。イメージ力を活かしてさ、この世界の誰もみたことない魔法使っちゃってさ、人気者になろうと思わなかったの? もっとさ、魔法陣を使った武器をいっぱい作ってさ、戦争を起こしてやろうなんて思わなかったの? 大体さ、技術開発のモチベーションなんて、たいてい武力とエロでしょ? なにコンロなんて作っているの? まあ、魔法銃は作ったみたいだけど、全然広げないじゃん?」
正直、魔法銃は自分と仲間を守るためだし、コンロは人に喜んでもらえると思って作った。
「もっとさ。人間に対してドヤ顔しようよ。もっと人間を煽っちゃおうよ。じゃないとつまんないでしょ?」
「僕は、みんなに喜んでもらえるようなものを作りたいんだ」
「だから、ウォーターボールの魔法陣、見せちゃったのかな? ウケるよね。あれ、武器じゃん。人間を吹っ飛ばしていたよね。気持ちよかった? ねえねえ。それにあの笑っちゃうガスの魔法。人間たちを逃げ惑わして楽しかった? うける。喜んでもらいたいっていい人ぶって、ドヤってんじゃん」
「僕はそんなつもりじゃない!」
「じゃあ、どんなつもりで人間を攻撃したのかなー」
「次は雷魔法でも撃っちゃえばいいじゃん。ビリビリビリってさ」
銀髪天使は少し間をあける。
「さてと、ここまで君が急にあれこれしちゃったら、本当に人間死んじゃうかもよ」
なんでだ?
「君、なに作ったんだっけ。えっと、コンロだっけ。あれ、電池まで作ってさ、電池で魔力を供給して火をつけ続けるんだよね。すごいね。特に電池、あれ、何にでも使えるよね。どっから持ってきているのかな?」
ローゼンシュタインだ。
「コンロさ、便利だよね。この国のどれくらいの家からかまどがなくなったかな。暖炉はさ、まだ薪を使っているみたいだけどさ、料理には必要無くなったよね。ってことはさ、確保している薪の量も減っちゃったんじゃない?」
それはそうだ。
「もしさ、もしもの話だけどさ、この冬に大雪が降ってね、流通が止まっちゃったら、どうなると思う? 電池、どこから来るんだっけ? あれ? かまどは? 薪は?」
クックック。銀髪天使は笑っている。
「まさか、そんなことをしようなんて考えていないだろうな?」
「えー、僕は知らないなー。自然災害なんて、いつ来るかわかんないじゃん。魔法の道具ってやっぱり便利だなー。本当はね、今回の件で、食料もなくしてやろうかと思ったんだけどさ、思ったより減らなかったよね、この国の食料は。でもね。他の国はどうかなー」
僕は銀髪天使を睨む。
「おー、そんな怖い顔しなくたって、人間を減らすようなこと、僕がするわけがないじゃん。だって、僕が減らしちゃったら、君が、む、い、し、き、に、人間を殺すところが見られなくなっちゃうでしょ? もしかしたら意識的にやっちゃうのかな? どっちにしたってさ、そんな楽しみ、減らしちゃだめでしょ。僕がするのは、ギリッギリのところまで人間を苦しめるだけだよ。さて何が起こるかな? 何を起こすのかな?」
「貴様!」
僕はコートの下から魔法銃を取り出して構える。
「あーそれそれ。それいいよね。人をバンバン殺せるよね。君のお母さんだっけ、かっこよかったわ。ローゼンシュタインを守るため? いいねー魔族らしくて。正しい魔道具の使い方じゃないかな」
僕は構えるだけで撃てない。
「あれ、撃たないの? 僕は天使だけど、死んじゃうかもよ? 死なないかもしれないけど。撃ってみたらわかるかなー」
「消えろよ」
「えーやだよ。まだ話があるもん。君さ、繰り返しになるけど、なんだっけ、人に使ってもらえる、人が喜ぶ、後なんだっけ。そんな技術を作りたいって言っていたよね。もしかしたら、作らないほうが平和だったんじゃない? どう思う?」
銀髪天使は続ける。
「それにさ、キザクラ商会だっけ? かなり儲かっているんじゃない? いろんな便利グッズを販売してさ。うれしい? みんなから喜んでもらえて。お金を払ってもらえて。しかもさ、ドラゴンたちを味方につけて、ケルベロスを集めて、どんどん力をつけちゃって。さらになに、美人の奥さんいっぱいって、そりゃね、やばいわ。そんなグレイス君を見て、何が生まれるかわかる? ねえ。何が生まれるかなー。楽しみだなー」
銀髪天使は、僕に顔を近づけて、いやな顔をして言う。
「妬み? 蔑み? 憎しみ? 恨み? きっといっぱい負の感情が生まれるよね。そういうの、好きな奴いたよね。そうゆうのに集まっちゃったり、そうゆうので生まれちゃったりさ。角としっぽの生えた奴。なんていったけ?」
銀髪天使は真顔になって言う。
「人類が滅びる原因の一つとして、悪魔の侵攻もあるんだよ。でもさ、悪魔はやめてね。本当に人類が終わりそうになるから。これも過去に何度かあるんだよ。こっちの方が世界へのダメージが大きいから回復させるのが大変なんだよ。是非とも妬まれないように、恨まれないようにしてくれよ。でもね、僕自身は楽しみだなー。君がこの世界を壊していくのが。でも、何度も言うけど、全部壊しちゃだめだよ。ゼロから作るの大変なんだよ。というわけでさ、ローゼンシュタインの土地さ、大事に守ってね。下手をすると、君が生み出す何かにつられて、ちがう何かが出てきちゃうかもよー。あー僕って優しい。そんなこと教えちゃうなんて」
はっはっはと、銀髪天使が笑っていたが、ふと真剣な表情をして杖を掲げる。すると、カキーンと金属音が響く。銀髪天使の杖を押し込んでいるのは鎌だ。かなで?
「陵様、ご無事ですか? 嫌な予感がしてきちゃいました。きてよかったですけど」
「あ、久しぶりー。かなでって言ったけ? 元気そうで何より。ミカエルは?」
かなでは無言で鎌を振り回す。かなでもバッタの対処で疲れているだろうに。その証拠にかなでの服はバッタの体液で汚れている。
「ちょっとちょっと、感動の対面じゃないの? っと。さらに応援がくる前に僕は帰るね。もうちょっと話したかったけど、まあいいか。じゃあねー」
と言って銀髪天使は消えてしまった。
「陵様! 大丈夫ですか? ものすごく疲れたお顔をしていますけど。バッタの対処に加えて、あいつに何か言われたのですか?」
「かなで、ごめん。心配かけて。かなでも疲れているでしょ?」
「いえ、陵様のことをおそばで心配するのは、私の役得です」
と言ってかなでは笑みを作る。疲れているのに無理に笑っているのがわかる。
「かなで、僕はなんなんだ」
僕はそこで崩れ落ち、意識を失った。




