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高等学園3-9

 翌日、それぞれ予定されたところに配置する。おおよそ、王都周辺の畑より、十キロ先だ。

 ちなみに王や騎士団、兵士達は当日やってくる予定だ。両サイドでは、オリビアとライラ、かなでがケルベロスを召喚していることだろう。何体出てきたかな。


 バッタの群れの本体はまだ来ないものの、ちらほらと現れていた。それを練習がてら潰していく。

 飛びかかってきたバッタは叩き落として踏む、これが一番気持ち的に楽。手で殴り潰すとか握り潰すのは精神的に難しい。

 これくらいの数の襲来なら、多少抜かれても被害は大きくないだろう。とはいえ、できる限り潰していく。

 誰もいないので、魔法銃を撃ってみた。やっぱり効率が悪い。一発で一匹を倒せるけど、それだけだ。大群が来たら意味をなさないだろう。

 こはるは次々に蹴っ飛ばしていた。


 そうして夜を迎える。夜はバッタが飛ばないし動かないから余裕ができる。しかし、あかりを灯すとバッタが飛び込んでくるので、月と星のあかりだけで食事をとった。

 かなでのいる方から、ローゼンシュタインにいたケルベロス四体プラス子供が四体やってきた。ケルベロスにくっついて寝ると暖かかった。




 翌朝、明るくなってくると、すでにバッタが集まり始めていた。それを、ケルベロスたちと潰していく。

 しばらくすると、王と父上達が兵士や騎士団とやってきた。ちなみに、部隊を三方向に分けているらしい。

 それと、母上と黒薔薇も来た。ここには母上と二人。ミレーヌとベティはそれぞれ左右に他のメイドたちと一緒に分かれていった。

 それぞれ、やってくるバッタを踏み潰していく。まだ、この程度なら余裕がある。本番はこれからだろう。

 と、思っていると、西から雲、いや、バッタが空を覆い尽くすようにやってくるのが見えた。


「空を飛んでいるあの大群はどうにもならんな」


 と、王様がいうので、


「大丈夫ですよ」


 と返事をすると、アンディたちのいる方からドーンという爆発音が聞こえた。


「ほら、きたきた」


 そうして正面からも地面を震わすような音が空から降ってくる。

 兵士達は完全に腰が引けている。

 それはそうだ。五十ものドラゴンが五百のワイバーンを従えてやってきた。そのうちの一体がこちらへ旋回し、人型となって僕の前に着地する。

 こはるの母上。


「空は私たちに任せろ」


 と言って、再び飛んでいった。北の京子ちゃんたちの方へも分散して飛んでいった。


「ドラゴン? ドラゴンに知り合いがいるのか?」


 と、王様は腰が引けている。


「はい。なので、空は大丈夫です。ドラゴン達がブレスでバッタを焼いてくれます。問題は、地上です。ドラゴンのブレスは地上に当てると被害が出ます。ですので、地上は僕らがやる必要があります」


 そう言っていると、地上も霞のようなバッタの大群がやってきた。


「わかった。それでは地上は我らが殲滅するぞ」


 と、王様がドラゴンのことを棚に置いて気合をいれる。

 しかし、僕が待ったをかける。


「申し訳ないのですが、僕らの前に出ないでいただけませんか? 大規模魔法を前に撃ちますので。お願いします。それでも後ろへうち漏らしたバッタが大量にいくと思いますので、それをお願いします」


 と言って、僕とこはるはさらに前へ歩いていく。

 バッタのかすみが百メートルほど近づいたところで、僕は右手を出し、薄く広くをイメージして、ガスを撃ち出す。そこへ左手でファイヤバレットを撃ち込んで火をつける。ドーンという音と共に、半径二十メートルほどの火の手が上がる。

 僕はその左にもう一発撃ち込む。

 右側は、こはるがダミーの右手を出して、ブレスを撃ちこんでいる。くっついていても効率が悪いな、と僕とこはるは左右に分かれる。

 その間を抜けてきたバッタたちをケルベロス達が踏んでいく。

 とはいえ、抜けていくバッタの多いこと。それを後ろの騎士達が潰していく。それでも抜けて、畑へとバッタが流れていく。

 しかし、それも想定の範囲内。そこに待機していたのは、王都の猫達、その数一万。


「ニャーーー!」


 のマイヒメの声で、猫達が参戦。

 猫達の方が人より素早いので効率はいい。

 しかし、バッタとの体格差が小さいことから、怪我を負う可能性が高い。バッタ自体も硬いし、とげもある。僕は、後ろに向かって叫ぶ。


「マイヒメー、無理をするな! 怪我をしたら、黒薔薇のところへ連れていってヒールをかけてもらえ、怪我をしたら即だ。誰一人、いや、誰一猫と死なせるなよ!」

「にゃーん」


 と聞こえた気がした。



 初めの一時間くらいは良かった。だが、それを超えるとすべての人、猫が疲弊してきた。それはそうだ。一時間の間、休む間もなくボクシングをしているようなものだ。

 一方のバッタは減らない。むしろ増えている。

 空はドラゴンがブレスで燃やしたり、ワイバーンが叩き落としたりしていて優勢を保っているような気もするが、地上はもう対処ができなくなってきている。

 僕の魔法やこはるのブレスはそこそこ殲滅力があるものの、そんなものでは全く減った気がしない。

 ケルベロスが歩くたびにぶちぶち音がするが、そこにまた新たにバッタが飛び込んでくる。

 畑に侵入してしまったバッタについては、ある程度被害が出ることをもう諦めている。

 猫達は、その俊敏性を活かして人がバッタを潰すよりはやく倒していく。猫達に対応ができなければ、もう無理なのだ。猫達はバッタに向かって猫パンチやキックを繰り出し、時にはバッタの首に噛みついて倒していく。後ろでは、もう倒れている猫もいるかもしれない。


 兵士達も必死だった。バッタを踏みつけたと思ったら別のバッタが顔に向かって飛んでくる。それを手ではたきおとして踏む。その繰り返し。前方から押し寄せるバッタに押され、もう畑の淵まで後退している。

 自分達もバッタの体液まみれだが、一緒に戦う猫達もバッタの体液に塗れており、それでも倒していく姿に勇気付けられた。

 しかしながらその一方で、倒れている猫を咥えて連れていく猫の姿も見え始めた。倒れた猫は、黒薔薇と呼ばれる騎士団にヒールをかけてもらうと再び闘いに向かっていく。


「俺らも負けてはいられない」


 と兵士達は必死にバッタを叩き落として潰していく。周りはもうバッタの死体だらけになっている。


 よく見ると、あちらこちらでバッタの死体に紛れて倒れている猫を見つけることができた。もう、騎士団のところまで倒れた猫を連れて行ける猫がいないのだ。黒薔薇の騎士もバッタを潰していっている。

 とある兵士は、倒れた猫を抱え上げる。もう一匹、そしてもう一匹。左手に四匹抱えたところで、閉ざされた城門に向かって走り出した。城門や城壁の上には戦いを見守る市民がいた。兵士は閉ざされた城門の前で叫ぶ。


「頼む、お願いだ。猫達が、猫達が倒れているんだ。猫達を助けてくれ。畑を、街を守ろうと猫達が戦っている。でも、バッタたちが多すぎて俺達も対処仕切れていない。猫達もどんどん倒れていく。俺達は体力があるかぎり戦うことを誓う。だけど、猫達はもう限界なんだ。それでも猫達は立ち上がって戦っている。お願いだ。この子達に回復魔法をかけてくれないか? 頼むよ」


 と、兵士は膝をつく。すると、城門の横にある扉から一人の神官が出てくる。そして兵士の前にきて膝をつけると、


「猫達を見せてください」


 と。神官は一匹一匹ヒールをかけていく。猫たちは、ヒールがかかった瞬間に、神官の手を振り切って前線に走っていく。


「お前達、もうやめろ、俺達がなんとかするから」


 と兵士は猫を追いかけて前線にかけていった。


「全神官、教会関係者に告げます。前線に行きます。私達でもできることはあるでしょう。ついてきなさい」


 と神官が言うと、扉から次々と神官が出てくる。神父達教会関係者も次々に付き従っていく。


「倒れている猫を見つけたらヒールをかけなさい」


 と言って神官は走っていく。すると、城門も開いていく。


「私達もいくよ。猫達にいいところを取られちゃ飼い主なんてやってられない!」


 と言うのは、すりこぎ棒をもった主婦たちだ。勢いよく走っていく。


「かみさんたちに負けるな! 男の意地を見せろー」


 と言って男たちも走っていく。王都にいた何万人もの大人たちが走っていく。


「南と北にも別れろ、あっちにもバッタと戦っている人達や猫達がいるぞ!」


 と、領民が散らばっていく。畑に入り込んだバッタを踏みつけながら。


 王都から走ってくる領民を見て、王は、


「家に閉じこもって身を守っているように言ったはずだがな」


 と言って笑っている。


「兵達よ、王都の民たちに負けるなよ! 我らは王国の兵士なのだ!」


 と、王は兵士たちを鼓舞していく。

 畑に入ったバッタは領民たちが倒していく。前線ではまだケルベロスや猫達が活躍している。体力がなくなった者は、兵士でも猫でもヒールをかけてもらって闘いに出ていく。


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