高等学園3-7
ライラは、国王のお達し通り、我が家に住んでいる。よって、帝国のメイドも護衛もなし。完全に我が家任せだ。
しかし、帝国の皇帝、すごい子だくさんだな。何人いるんだ? と思ったら、皇妃も三人いるらしい。ちなみにオリビアとライラは母親が同じ。
同じ家に住むということに、京子ちゃんもリリィもちょっと苦虫を噛み潰したような顔をしたが、僕の部屋ではすでに少女のこはるが寝ている。もちろんベッドは別だ。なので、それなりに安心もしているらしい。かなでも屋敷内にいるしね。
僕は、ライラにちゃんと言ったよ。
「ライラ、もし皇帝の命令で来ているんだったら、無理にここにいる必要はないよ。好きな子もいたんじゃないのか? もしそうなら、皇帝を脅してでも返してあげられるよ?」
と。僕は強く言った。しつこいようだけど。
こはるの母親にお願いすれば、帝国なんて瞬間的に滅ぶだろう。しかし、
「いえ、私はお姉様にこの王国、特にらいらい研の素晴らしさを聞いています。その中でも、グレイス様の重要性も。なので、私はグレイス様に憧れているのです」
と。十三歳、しっかりしているな。重要性の意味がわからないけど。
「ですから、このお話をいただいた時には即答しました。私はグレイス様のところへ嫁ぎたいと」
僕は呆気にとられて固まった。だが、一体だれがその話をライラにもっていった?
「もしかして、年上が好みだったりします? それでも私を娶って欲しいのです。姉上もこっちにいますので、母も安心してくれると思います」
いやいや、何を言っているの? 意味がわからん。
「あのね、僕には、ソフィリアっていう子とフランって子、二人の婚約者がいるんだよ。それで僕のところっておかしくない? 大体、僕のこと何も知らないよね?」
「いや、三人だ」
こはるが訂正する。
「いえ、おかしくありません。お姉様もクララ様とケイト様がいるところへ入り込みました。ですので、私も三人目と言われようと全く問題はありません」
「いや、三人目は妾だから」
こはるがしつこく突っ込みを入れる。
はあ、この世界はどうなっているんだ。と思っていると、ドアが開かれる。
「グレイス様、お友達がいらっしゃっています」
と、ドアを開ける前にいえよ。と、ベティに言いかけるが、ドアを開けたのがリリィなのはわかっている。
「あのね、ライラ。あなたが帝国の第四皇女なのは知っているよ。だから、グレイスの婚約者も四番目にしておけば?」
どういう理屈だ。
「あら、私は、すでに両親の許可をとってきておりますのよ。どこかの婚約者に捨てられた可哀想なご令嬢ではなくてよ」
と。ライラ、お前、リリィより年下だぞ。古傷をえぐるな。リリィが涙目じゃないか。
「とりあえず、そういうことは置いておいて」
「「おいておくな」」
意外と仲がいいだろ、お前たち。
「いや、妾が三番目と言っておろうが。だから、リリィの言うとおり、ライラが四番目、リリィ、お前は枠外だ」
リリィがさらに涙目になる。
「で、今日はどうする?」
とアンディが話題を変える。さすがだ。
しかし、いつも思うけど、王子様がな、辺境伯家次男のところに来るっておかしいからな。
「うん、とりあえず、ライラを冒険者ギルドで登録しようかなと」
「キーッ。それはらいらい研として早くもメンバーとして認めるとでも」
と、リリィ。
「まあ、早かれ遅かれだよ」
と。また、みんなでゾロゾロ歩いていく。マイヒメはいつものとおり。マイヒメたち第一世代はもう十二歳。僕は覚悟を決めた。生き物を飼うってこういうことだと。とはいえ、まだしばらくは大丈夫だと信じている。
昼前のギルドは相変わらず閑散としている。エマさんを見つけて要件を言うと、ギルマスの了承を得て、速攻でプラチナをくれた。もういいよ。って感じで。
あまりにもあっさりもらえたので、街中を散歩することにした。ちなみに、ギルドへの説得材料としては、
「昨日、ライラが召喚したケルベロスは五メートルだった」
だ。実際、ラミリスやオリビアより魔力量が多いらしい。
五メートルのケルベロス特大は、訓練場で大と一緒に飼われている。あれ、結構食べるから、うちというかキザクラ商会じゃなきゃ経済的に飼えないな。
ケルベロス大はこはるが特大の方に乗るようになって、ほっとしていた。
そんなこんなで秋になり、畑では収穫が始まるっていう時に厄災が来た。王宮ではこの情報が飛び交っている。
「西で発生した十五年バッタ、いや、十六年か、はどうなっている?」
国王は宰相に確認を取る。
「西のカッツェリア領の村々はすでに巻き込まれ、領都周辺の畑に被害が出始めています。バッタの勢力も大きく、北のルワット、南のウェンスター各領にも迫っており、数日中には巻き込まれるものと」
「早いな。風のせいか?」
「それもありますが、バッタの羽化が一年遅れたことにより、巨大化しています。一匹が二十センチもあります。そのため食べる量も移動速度も半端なく」
「このままバッタが進めば、カッツェリア東のナイマール等々の領地を経て、この王都に到達する見込みです。この王都を超えた場合、そのまま東に進むと思われます。その場合、東の山脈にあたった後、北上すれば森となり、我が国の南部は助かりますが、南下した場合、山脈の向こうにあるローゼンシュタイン以外は巻き込まれる可能性があります」
国王は頭を抱える。急に、なぜこのタイミングで。予定された昨年に発生がなかったから油断した?
「全土、被害が及ばないうちに収穫を急がせろ。備蓄確認もしておけ」
と宰相が命令を下していく。
「収穫した畑に藁や野菜の蔓など乾かして撒いておけ。燃やすぞ。なるべく西で食い止める」
「カッツェリアやナイマール等の領地はどうする? 救援に行って間に合うのか? 何かできるのか?」
「間に合わないし、被害を押さえられるわけではない。だが、広がる前になるべく対処したいところだし、被害はできる限り抑えたい。そうすれば、事後にこちらからの支援も可能だ」
「騎士団は各地に急げ、魔法を使えるものを中心に予備兵も含めて行ってくれ。王都周辺については近衛が指揮を取る」




