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転生ー3

 さらに翌日。

 おかあちゃんのことが心配になってきた。本気で。

 とうちゃんが帰ってくるのは明日らしい。


 昼を過ぎた頃から、屋敷の中が慌ただしくなってきた。

 ミカエルに聞いたところ、どうやらおかあちゃんの容態が悪化してきたらしい。

 治療される司祭様はとうちゃんが王都から連れてくることになっている。この都市の司祭様だけでは難しい状態のようだ。

 シャルロッテ様も僕と京子ちゃんをあやしながら渋い顔をしている。


 夕方も過ぎて夜になった。僕はあまりにも心配になり、強硬手段に出ることにした。

 シャルロッテ様、ごめんなさい。

 僕は、ギャン泣きを続ける。だれがどうあやそうとも。おっぱいも断固拒否。ひたすら泣く。おかあちゃんに会わせてくれるまでは泣く。

 何時間経った頃か。シャルロッテ様がついに折れた。というか気づいてくれたのか?

 僕を連れて部屋を出る。連れ出してくれたことで、正解の意味を込めて泣き止んでみる。

 シャルロッテ様はおかあちゃんの部屋へ向かった。違う方へ行こうとしたらギャン泣きをして誘導した。

 シャルロッテ様はドアをノックする。返事はないが、中にいたメイド長のアンがドアをゆっくり静かに開けた。シャルロッテ様はアンと少し会話をした後、僕を連れておかあちゃんの枕元へ。


「リーゼ……リーゼ……」


 おかあちゃんの名前を呼んでいるのはわかるけど、他はわからん。

 しばらくすると、おかあちゃんがうっすら目を開けた。


「シャル……………………」


 アンが近づいてきて、おかあちゃんの体を起こす。もう一人では起き上がれないのかもしれない。

 シャルロッテ様が僕をおかあちゃんに渡す。僕は嬉しさが伝わるように「きゃっきゃ」と声を出す。

 おかあちゃんは僕を抱き、笑顔を作って何かを話しかけてくれる。笑顔だけど、涙が流れている。

 わからなくてごめんなさい。

 でも僕は、おかあちゃんに会えたことが嬉しいアピールを続ける。後ろでシャルロッテ様とアンの啜り泣く声が聞こえる。


 おかあちゃんは何かを言うと、徐に胸を出した。シャルロッテ様からおっぱいを拒否したことでも伝えられたかな?

 僕は待っていたことを示すように吸い付く。お行儀悪かったかな?

 おかあちゃんのおっぱいは、ちょっと熱い気がした。出てよかった。

 いっぱい飲んだ後、おかあちゃんは僕をシャルロッテ様に渡そうとする。もちろんギャン泣きで抵抗。

 シャルロッテ様もアンもおかあちゃんまでもが泣いていた。でも僕は諦めるわけにはいかなかった。

 アンがおかあちゃんをゆっくり寝かし、シャルロッテ様が僕をおかあちゃんの腕の中に置いてくれる。

 今日はこれで寝かせてくれるといいけど。

 うーん。シャルロッテ様もアンも、おかあちゃんと僕が寝るのを待っているよう。


 おかあちゃんは早々に寝てしまった。と言っても、呼吸は速く浅くつらそうだ。腕の中にいる僕もちょっと熱を感じる。

 僕も寝たふりを決め込む。

 それを見ていたシャルロッテ様とアンは、顔を合わせて一旦退室する。きっとすぐに戻って来るだろう。試すなら今だ。


 僕は医者ではなかったが体の構造はある程度わかる。体の悪いところをスキャンすることや病気を治すことについては、前世で散々、エアだけど、やってきた。だから、実質やったことないんだけど。

 かなでとミカエルは、魔法がイメージ力と操作力だと言った。後はきっと魔力量だろう。


 僕はおかあちゃんの体の中をスキャンするイメージで魔力を流しこんでいく。イメージは得意だ。妄想は僕の十八番だし。

 僕は目を閉じていて気づかなかったが、おかあちゃんの下に魔法陣が展開する。

 比較があるとわかりやすいけど、赤ちゃんの僕の体でいいだろうか。悪くなっているところを探していく。


 咳をしているんだからまず肺。炎症し水が溜まっている。それと下腹部。多分、僕を産んだ時の傷が治ってないんだ。この辺りが危ないところ。ついでにおかあちゃんの右足の膝が歪に固まっているのがわかった。

 よし、具体的にどうしたらいいのかわからないけど、本来なら抗生物質とかかな。ウイルスだったら効かないけどね。


 なので、僕はもうイメージにかける。


「肺に溜まった水の除去、細菌やウイルスなどおかあちゃんじゃない異物の除去、免疫力活性化、肺や下腹部器官の再生、右膝の再生! 必要なエネルギーはおかあちゃんの脂肪から! 元気なおかあちゃんを取り戻せ! 綺麗なおかあちゃんを取り戻せ! かっこいいおかあちゃんを取り戻せ!」


 最大限に魔力をおかあちゃんに注いでいく。おかあちゃんの下に魔法陣が展開するが、今度は布団やベッドのせいで見えていない。おかあちゃんの下はベッドの中だ。


 いくぞ、


「メガヒーーール!」


 メガヒールってのがあっているのかわからなかったけど、その瞬間、おかあちゃんの下の魔法陣から垂直に膨大な光が立ち上っていく。

 かと思えば、その光が弾け、光の粒子が舞う。光の粒子は風に舞うかのように螺旋を巻き集まって来ておかあちゃんの体の中に吸収されていく。

 して、おかあちゃんの体が眩しく光った。目が開けられないくらい。

 おかあちゃんの光が次第に収まってくる。光が消えた頃になると、おかあちゃんの呼吸が安定していることがわかった。

 それを確認できてよかった。

 僕は、多分全魔力を使ってしまったのだろう、そのまま意識を手放した。



 屋敷の庭では、バサバサバサと、夜中にも関わらず、複数の鳥が飛び出す。


「おい、部屋が光ったぞ、あそこの部屋は……奥様の部屋じゃないか?」

「急いでメイド長にお伝えしろ!」


 警備兵の一人が走り出す。

 また、屋敷の外でも


「ワンワンワンワン」「ニャーニャー」


 と野良の犬や猫が騒ぎ出す。


 警備兵から状況を伝えられた屋敷のメイドが慌ててメイド長のアンを探す。

 アンはリーゼロッテの部屋かその近くにいるはず。

 メイドはリーゼロッテの部屋から少し離れたところで話をしていたアンとシャルロッテを見つけて警備兵からの情報を伝える。


 アンとシャルロッテは早足でリーゼロッテの部屋まで来て、そっと入室する。

 暗い中、そのままリーゼロッテの枕元まで来て、呼吸を確認。安定していること、それと赤ちゃんが寝ていることを確認して、安心のため息を落とす。

 ここにはアンが残ってシャルロッテは自分の部屋に戻った。そこにはソフィリアがいる。


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