高等学園3-5
「たのもー」
と、先頭はリリィ。
僕たちはエマさんを見つけてその受付へ歩いて行く。
エマさんは当然のことのように、いやな顔をする。
ここからはアンディの役目。
「一つ確認事項として、この前、夏休みが終わる頃に更新したから、その頃までに依頼を受ければいい?」
「はい。それでいいですよ」
「じゃあ、もう一つ。冒険者登録、僕らのパーティメンバー登録を一人、お願いしたい」
「え、またメンバー登録ですか?」
エマさんは嫌な顔をする。メンバー登録をする時には、実力を試すとギルマスであるジョーンズが言っていた。嫌な予感しかしない。
「少々お待ちください。ギルマスを呼んできます」
と、ジョーンズに丸投げする気満々だ。
ギルマスがやってきて、やれやれと言った顔で、
「で、どの子なんだ?」
と聞くので、オリビアを一歩前に出す。
「え、お姫様じゃん。この子に冒険者やらすの? お前ら」
「はい」
と答える。正直、オリビアの実力なんて知らない。
「私、魔導士なのですが、よろしいでしょうか」
「ああ、パーティには大抵魔導士がいるからな。じゃあ、裏へ行くか」
と言ってジョーンズは訓練場へ歩いていく。僕らはそれについて行く。
訓練場の真ん中でオリビアとジョーンズが向かい合っている。その距離五メートル。その真ん中にはエマさんがいる。僕らは、離れたところで見守る。暇そうな冒険者も見に来た。
「なあ、オリビアの魔法って見たことある?」
「いや、ない」
とアンディ。その他のメンバーも「うん」と頷く。
遠目に見ていると、ジョーンズが手をくいくいってやっているから、攻撃魔法でも撃たせるのかな。と思ってみていた。
オリビアはてを前にかざし、何かを呟いている。あの感覚、どこかで。あ、やばい。
「ストップー」
と僕は叫んだが遅い。オリビアの声が響き渡る。
「いでよ、ケルベロス!」
やっぱりだよ。この娘、ラミリスの妹じゃん。
僕ら四人以外には見えていないだろう魔法陣がオリビアとジョーンズの間に展開し、その空間が光ったと思ったら、そこに三メートルくらいのケルベロスが出てきた。
やっちまった。
ジョーンズもエマも速攻で逃げた。出てきたケルベロスはオリビアの方を向き、お座りをして「へっへっへ」と舌を出している。うちの子達もそうだけど、この季節は辛いのかな。オリビアは手を伸ばして、頭を一つずつ、撫でている。ところで、これ、どう収集つけるのかな?
「アンディ、あのケルベロス、僕とフランが見ているからさ、ギルドに行って、オリビアの冒険者登録をどうするか聞いてきてくれない?」
アンディは、オリビアを連れて冒険者ギルドの受付に戻ろうとする。すると、ジョーンズとエマが、大量の冒険者を連れて戻ってきた。
そして、僕たちを取り囲む。
「相手はS級魔獣だが、これだけいればなんとかなる! はず」
おい。
そこへアンディがジョーンズにいう。
「何をしている?」
「ケルベロスなんて危険な魔獣を召喚しやがって、どういうつもりだ!」
「えっと、なんでもいいから魔法を使って見せろと。私、これくらいしかできなくて」
皇国は一体何を教えている。
「あれを見ても危険だって言えるか?」
とアンディが指を差す方向には、僕とかなでに腹を撫でまくられて喜んでいるケルベロスがいる。
ジョーンズは冒険者を代表してケルベロスに近づき、頭を撫でようとする、が、「ガウッ」と噛まれそうになる。
「危険じゃないか」
「とにかく、あのケルベロスは僕らになついているから、僕らのペットってことにしてくれないかな」
と、ジョーンズに問う。
「召喚できたんだから、返せないのか?」
と、ジョーンズが逆に聞いてくるので、
「前にやってみたが、普通に歩いて帰ったぞ。ということは、どこに帰るかわからないが、街中を歩いて行くことになるけど? 大丈夫?」
と、僕は説明しておく。
「頼むから、絶対に目を離さないで、なるべく早く町から出してくれ。被害が出たら、王宮に請求するからな」
といので、「わかった」というアンディ。おお、かっこいい。
「で、本題なのだが、オリビアの冒険者登録だが?」
「エマが走ってカードを持ってくる」
それをジョーンズが受け取って、オリビアにわたす。
「ほら。これで満足して帰ってくれ。年に一回の更新は忘れるなよ。それともう街中でケルベロスを召喚するな」
仕方ない。まあ、冒険者カードをもらったことだし。良かったとしよう。オリビアは、
「こんなに綺麗なカードをもらってよかったのでしょうか」
と言っているが、クララの
「いいのよ」
の一言で終わる。
さて、どうしようかな。ギルド内を通れないから、裏からでるか。それにしてもでかいなー。
「ケルベロスって強いの?」
「さっき、ギルマスがS級がなんとかって」
「そうなんだ。オリビア、君のケルベロスなんだけど、ちょっと試しいていい?」
「いいですけど、何をされるのです? というか、私、この子をどうしたらいいでしょう」
と呟いている。
「こはる、ちょっといい? この子に乗れるかな?」
「ケルベロス、ちょっとこの子を乗せてくれる?」
と、オリビアがいうと、ケルベロスは伏せの体勢をとる。そして、そっとこはるがのる。
ケルベロスはその重さに一瞬顔を後ろに向けたが、何もなかったかのように立ち上がった。
「「おー」」
と、僕とこはる。
「すごいなー」
と、顔をわしゃわしゃしてやる。
「明日からの移動の時、このケルベロスにこはるを乗せてもらっていい?」
「いいですけど」
と、オリビア。実際、このケルベロスをどうしていいかわからないのだろう。帰れないしね。
「じゃあ、今日はこのままうちでケルベロスを預かるよ。フラン。ちょっとオリビアと先にうちに帰って、“この子”をオリビアに召喚してもらってくれる? 街中を歩かせるわけにはいかないからさ」
とお願いをすると、かなでは
「(この世界に来ている)ケルベロスは、慣れると召喚することができるみたいです」
と、前半小声だけど、教えてくれる。
「試したの?」
「はい。オリビアさんのようにある意味異世界からは無理ですが」
ある意味?
「じゃあ、頼んでいい?」
「わかりました」
と言ってかなでは家に帰っていく。ケルベロスが召喚されたのは意外と早かった。かなではかなり急いだらしい。
しかし、かなでもこの世界にいるケルベロス限定だけど、呼べるようになったか。僕もできるのかな? どうかな?
「じゃあ、僕らもフランが待っているから、帰るよ。じゃあ、明日の朝出発でよろしくね」
と、僕らは別れた。シャルロッテ様がどうせ家にいるから、京子ちゃんも一緒だ。
「ねえ陵君。前にも考えるのをやめたけどさ、あのケルベロス、どこから来たんだろうね」
「うん。わからないよね。皇国で飼育しているわけじゃなさそうだし、帰れって言っても帰る場所がわからなそうだもんね」
「どこかにケルベロスがいる土地があるのかなぁ、そこにケルベロスを返してあげた方がいいのかなあ」
「でも呼んだ瞬間に召喚者になつくよね。飼育していた人がいたとも思いづらいなあ。それに、特にかなでにはすぐ懐くよね」
こういう時、ミカエルは口を挟まない。
「ねえミカエル?」
京子ちゃんが問いかける。
「ケルベロスがいるところってあるの?」
「はい、あります」
京子ちゃんは続けて質問する。
「この世界?」
ミカエルはちょっと悩んで
「はい、この世界です。ある意味」
と、後半を小声で言った。やっぱりある意味か。ちょっと気になったが、まあいいか。
「そっか。そのうち返してあげられるかもね。まあ、懐いているし、こっちでも楽しそうだけど」




