高等学園3-4
それから平日の放課後は練習の日々だった。
たまたまきていたアイラちゃんに振り付けやステップを見せてもらい、オリビアは瞬間的に憧れていた。
リリィやボールズがギターの後ろにリゼのサインをもらったことを言うと、オリビアは速攻でギターを買いに走り、アイラちゃんにサインをねだっていた。お買い上げありがとう。
そのほかにも一式揃えると言って、ドラムやマリンバも買っていた。財政難って言っていたけど、大丈夫かな。送料も含めて極力値下げしてあげよう。
キザクラ商会は輸送業もやっている。
高等学園が休みの日は、散歩したり、ショッピングをしたりして過ごした。公園でのんびりもした。皇女の留学なんて、こんなもんでいいのかな、と思ったが、問題なさそうだ。
高等学園の講堂も、一学期最後の日の午後に予約を入れた。先生にお願いしたら使わせてくれることになった。
せっかくなので、生徒に見にきてもらいたいなとポスターも作った。五人が集まって右手のひらを上にして突き出し、満面の笑顔をしている、そんな絵を描いてもらった。
センターはオリビアにした。
それから、このポスターの下の方に「タオル持参のこと」と書いておいた。ペンライトは用意できなかったし、オリビアがタオルをブンブン振り回すのを気に入っていたからだ。
「なあ、このグループの名前さ、なんでもかんでもらいらい研ってのもあれじゃない?」
「えー、いいよ。らいらい研だもん。それに、考えたってどうせネーミングセンスないしね、うちら」
と、京子ちゃんすらネーミングについてはあきらめていた。
オリビアにも聞いたが、変わった名前ですね、と微笑まれて終わる。
ついに、一学期最後の日が来る。
今日が、オリビア高等学園留学の最後の日だ。
午前中に先生からのいろんな話があって一学期が終了。
僕らはステージの準備に入る。キザクラ商会から僕たちの楽器を搬入。セッティングをしていく。音のチェックも大丈夫。アイドルたちはステージの広さと動きを確認。
それと、大事なのが、ステージの前二メートルを立ち入り禁止に。ロープを張っておいた。リハもOK。昼食を終えたら本番だ。
ポスターも貼って宣伝したせいか、それなりに生徒が入ってきた。先生方もいる。
袖からその様子を見ていて不安がるオリビア。
「オリビア」
と、声をかけるのはクララ。オリビアの震える手をとる。すると他の三人も手を重ねる。
「この三か月、みんなでした練習、歌を歌うのもステップを踏むのも、ダンスを合わせるのも、みんなみんな楽しかった。このステージも楽しい。絶対楽しい。私たちは笑う。楽しむ。自分のために、みんなのために。いくよ!」
「「「「おーー」」」」
クララから順番にみんなオリビアを抱きしめていく。
よし、こっちもいくか。
今日もアンディのピアノから入る。
ピアノを鳴らすと幕が上がっていく。
アンディのピアノで生徒の目を耳を引きつけたところで、全員が演奏に入る。
盛り上がってきたところで、オリビアたちが走って入ってくる。センターはオリビアだ。
「みんなー、集まってくれてありがとー。らいらい研ですー。今日はタオルを回していこー」
と、ブンブン振り回すオリビア。今日はタオル多用のセットリスト。アップテンポの曲、左右にふるスローな曲、組み合わせて六曲。実質三十分ちょっと。
あっという間だ。
最後の曲の間奏で、オリビアが再び一歩前に出る。
オリビア達が話をしている間はミカエルのドラムのみ。オリビアの声が響く。
「みんなー今日はありがとう。留学して三か月ちょっとだったけど、すごく楽しかった。私ね、家の事情とか色々であんまり積極的に自分を出したことなかったんだけど。今、こんなに楽しい。好きなことやっている自分がこんなに好きって思える。それが嬉しい。だからね、だからね、そのきっかけをくれたこの学園に感謝してる! みんな、ありがとう!」
と言ってタオルをブンブンする。
「イエーイ」
と答える生徒に先生。
本来なら、ここで曲が戻るはずが、僕らはまだ演奏を再開しない。ケイトが前に出る。
「みんなー聞いてー、オリビアってね、隣国のお姫様でしょ? みてわかるよねー可愛いもん。こんなお姫様がね、毎日毎日ダンスの練習頑張ったんだよー。たった三か月って思えないよねー」
「イエーイ」
「足なんてね、お姫様なのに、靴擦れや豆ができてカチカチになっちゃったんだよ。みたいー?」
「みたいー!」
「ダメー」
とケイトは両手でバッテン作る。何やってんだ?
「こんな足カチコチ姫オリビア、」
変な名前つけるな。
「超頑張り屋さんのオリビアは私たちの大切な仲間です」
ここでオリビアに向く。
「オリビア、ステージの時には呼ぶから、帰っても練習するんだよ」
クララが問いかけ、これにオリビアが返事をする。
「私、アイラちゃんみたいに、一人でもやってみたい!」
「「「「えー」」」」
と口に手を当てて派手に驚き、後ずさりをする四人。
「なんてね」
と人差し指をほほに当てて、てへぺろなオリビア。
で、演奏とパフォーマンスが再開され、最後とばかりに盛り上がる。
オリビア、かわいすぎる。おそらく、多くの生徒をとりこにしたことだろう。
「みんなーありがとう。また来るねー」
と、ステージは終了した。
「はあー、最高!楽しかったー」
「最初は震えていたのにね」
とクララ。
「ふふ。でも癖になっちゃいそう」
「っていうか、メンバーなんだから、本当にらいらい研のステージの時は来なさいよ」
とケイト。
「そうねー、どこかの王子様が結婚してくれたらいられるんだけどなー」
ギンって両側から殺気が。君達、あんなに仲良かったじゃん。
「何がどうなるかわからないけど、ちょくちょく来るんでしょ。恋はするもの愛は育むもの、頑張りなさい」
とリリィ。
「お前がな」
というツッコミを入れられていたけど。
「って、遠い話をしているけど、明日からの準備もしないとね」
と話の腰を折る。
そう。明日から夏休み。
オリビアに話を聞いていたのだが、オリビアは王国に来る時は北側を回ってきたらしい。なので、南側を回って帰ったら? と提案したのだ。
もちろん、僕らの夏休みのことがあるからだか。そうすれば、もうちょっと一緒にいられるのではないかと考えた。
皇国に問い合わせてもらったところ、夏休み中に帰ってこればいいと言うことで、夏休みを皆と一緒にローゼンシュタインで過ごすことになった。ただ、オリビアのおつき一行が同行するので、ものすごい大所帯になったが。
ちなみに、オリビアのおつきはローゼンシュタインを通り越し、リコラシュタインで滞在する。
オリビアについては、リコラシュタインまではローゼンシュタインが送ることになっている。
さて、僕らには抱えている問題がある。
冒険者登録だ。この前、夏休みの終わりに更新をかけたから、それまでに依頼を一件受けておく必要がある。
なので、このメンバーで魔獣討伐にでも行かないといけない。で、オリビアはどうする? となった。
と言うことで、ステージ云々を全て片付け、冒険者ギルドへ向かう。




