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転生ー2

 意識が戻って三日目。

 おかあちゃんは咳がひどくなっている。今までも咳をしていたけど、ここまでじゃなかった。

 朝のおっぱいをもらったけど、おかあちゃんはそのまま寝てしまう。本当に具合が悪そうだ。

 おっぱいのために体を起こすのも辛そう。ごめん、おかあちゃん、僕のせいで。


 僕を受け取ったメイドさんは、おかあちゃんと何か会話をしている。

 で、メイドさんは僕をベビーベッドに寝かせると、部屋を出ていく。


 しばらくすると、メイドさんが戻ってくる。女性を一人連れている。

 銀髪ロング、センスの良い髪飾りをつけた姫様みたいな人。

 二十歳そこそこかな。薄いブルーのドレスを着ている。この世界の普段着って、こんな感じなんだろうか。


 おかあちゃんと姫様はしばらく会話をしていた。もちろん内容はわからない。

 でも、姫様は、僕を抱き上げて部屋を出ていく。

 あーあ、おかあちゃんから離されちゃった。そんなにおかあちゃんの病状は悪いのだろうか。


 姫様は僕を連れたまま廊下を歩いていく。

 部屋とは反対側は窓が並んでいる。空しか見えないけど。

 ついで階段を降りていく。メイドさんが先に降りていく。どうも一階に降りたらしい。

 大きなホールになっている。改めて、でかい家だな。もしかして、こんないいところの坊ちゃんに生まれ変わっちゃったのかなーなんて思っていると、さらに奥の方にある部屋へ入っていく。


 あれ、なんかにぎやかだな。

 ちょっと地味目の広い部屋に何人ものメイドさん。

 テーブルと椅子があって、座って話をしている。

 姫様はこのまま部屋の奥へ。

 あ、ベビーベッド、しかもちょっと大きめがあって……。

 僕は目を見開く。

 そこには三人の赤ちゃん。僕は気づいた。っていうか理解した。


 この赤ちゃんたち、彼女らだ。


 向こうも気づいたみたい。

 一人ミカエルを除いてギャン泣きをする。もちろん、嬉しくて泣いている、と思いたい。

 けれど、姫様やメイドさんたちにはわからないだろう。

 女の子二人をそれぞれ別のメイドさんが抱っこしてあやしている。彼女らの方が生まれが早かったかな。僕より若干しっかりしているような。

 だって、こっちを見て手を伸ばすような仕草をしている。彼女らは、泣くと離されると悟ったのか、泣くのをやめた。


 姫様は、僕の顔を一人の女の子に近づけて何か言っている。

 初めましてとかそんな感じかな。

 この子は京子ちゃんだな。なんとなくわかる。

 もう一人にも同じように近づいて何かいう。こっちはかなでだ。手を伸ばしてくるが、僕はまだそこまで動けない。

 最後に寝ている男の子、ミカエルに挨拶をして、結局、四人で寝かされる。

 順番は、京子ちゃん、僕、かなで、ミカエルだ。

 京子ちゃんとかなでが手を伸ばしてくる。でも、僕には届かないし僕もうまく伸ばせない。

 それを見て悟ったのか、一人のメイドが京子ちゃんの手を僕の手に触れさせる。というか、握らせる。その瞬間、


「……くん! 陵くん!」


 って意識が流れ込んでくる。

 驚愕だよ。触れただけで会話ができるなんて。

 僕はうまく京子ちゃんを見られないけれど、これで会話ができる。


「京子ちゃん! よかった。会えたよ、会えた! しかも記憶も失ってない! こんなことってある? すごいよ!」


 って意識で会話。

 多分メイドさんたちには、「あー」とか「うー」とかしか聞こえないんだろうけど。

 僕と京子ちゃんの手を握らせたことで僕らの機嫌が良くなったと判断したのか、今度は僕とかなでの手を握らせる。同じことが起こる。


「陵様! 陵様! また会えました。こんなにもすぐ。私は嬉しいです。幸せです!」


 かなでは泣くと離されると思って、我慢しているっぽいが、泣きそうだ。


「僕も嬉しい!」


 って返す。いつの間にか、かなでとミカエルも手をつながされていたみたい。


「陵さん、無事に生まれ変われたようで、お喜び申し上げます」


 ってミカエル。硬いよ。これはかなでを通しての会話かな?


「ミカエルも会えてよかった。もしかして、この出会いっていうか、シチュエーションは、ミカエルがやってくれたの?」

「やってくれたのは、あいつです」


 あ、あの銀髪天使様か。


「私は、ある程度頼んだだけです。精神のクリーニングをしないこと、ランダムな時間や場所に飛ばさないこと、などですかね。ここまでうまく集まれるとは思ってもいませんでしたが。あいつへの貸しを後一つにしてやりたいくらいです」


 いや、無くしてやれよ。むしろなくせ。態度はあれだったけど、いいやつじゃないか。


「でもよかった。言葉はわからないし、動けないし、下は我慢できないしで」


 うんうんと京子ちゃん。


「えっと、後ろの二つは私たちもどうしようもありませんが、言葉はわかりますよ」

「「え」」


 と、僕と京子ちゃん。


「僕ら天使たちや死神たちは、職場研修で他の世界にいくことがあります。しかも長期間。なので、色んな世界のいろんな国の言葉を理解することができます。今はこの体なので、話すことはできませんけど。」

「「チートじゃん」」


 と、再び僕と京子ちゃん。


「で、こんなふうに皆で会話できることが今後どれだけあるかわかりませんから、これまで聞いた情報を共有しますか?」

「「ぜひ」」


 と、言葉がわからない組。

 ふと気づくと、四人の赤ちゃんが手を繋いで仲良くしているのが可愛いのか、姫様とメイドたちが並んで覗き込んでいる。


「まず、せっかくだから目の前の人たちを。はじめに、水色のドレスを着た人が、シャルロッテ様です。陵様のお父様のお姉様がこの王国の第二王子に嫁いでいて、その長女となります」


 え、王族か。


「シャルロッテ様はグリュンデール公爵家の嫡男に嫁いでいらっしゃって、京子さんは初めてのお子様です。名前はソフィリア様です」


 ほうほう。素敵な名前だな。というか京子ちゃん、王家の血が流れているのか。


「で、その右がメイド次長のミレーヌ」


 あ、敬称なくなった。


「ミレーヌはこのローゼンシュタイン辺境伯家の第二騎士団長カイル・リードの妻で、私とかなでの母になります」


 かなでとミカエルは双子かー。


「ちなみに、かなでがフラン、私がミハエルです。」


 ミカエル、一文字しか違わなかったかー。


「その右はメイドのモニカ。」


 ミカエルは視線を動かし、といっても僕にはわからないけど。


「シャルロッテ様の左がメイド長のアン。同じく第一騎士団にして軍団長のシルバー・グリンの妻です」

「その左がメイドのサリー」


 メイドさんの説明、雑だな。


「それから、この家の家主がフリッツ・ローゼンシュタイン辺境伯で、その奥様がリーゼロッテ様。陵様のお母様です。実は、陵様は、1週間ほどの早産だったらしく、まだ名前をつけられていません。フリッツ様は王都に住んでおられて、出産予定日に帰って来られるとのことで、名前はそれからつけられるそうです」


 あれ、じゃあ、僕、京子ちゃん改めソフィリアちゃんの親戚ってこと? 将来、結婚できるかな?


「陵様にはお兄様が一人いらっしゃって、テイラー様が嫡男となります。フリッツ様の下で政治学を学ばれているとのことです」

「ところで、僕のおかあちゃん、具合が悪そうだけど?」

「はい。元々体が弱っていたところに、早産と難産が重なって、体調が悪くなってしまったようです」


 そうなんだ。


「それで、乳母としてシャルロッテ様がお世話をすることになったみたいです」


 それは申し訳ない。おかあちゃんからしたら、シャルロッテ様は姪っ子か。あっ。

 そうこうしているうちに、シャルロッテ様が京子ちゃんを、ミレーヌがミカエルを連れてっちゃった。おっぱいの時間かな?


 かなで改めフランと二人になる。手を繋いだままだから、会話もできる。


「かなで、いや、フラン、本当に会えてよかった」

「私もです。こんなに早く会えるとは思っていませんでした。しかも、兄妹じゃないし……将来……でも、身分差が……」

「でも、お母さんがうちのメイドってことは、一緒に暮らせるね」

「はい!」


 かなでは嬉しそうだ。声しかわからないけど。

 「いつかはきっと」とか「妾制度ってあるのかな」とか副音声が聞こえるけど気にしないでおく。


「いつ産まれたの?」

「陵様の一週間ほど前です。今で十日目くらいになります。京子様が私たちの一日後になります。よって、私とミカエルが陵様の七日姉であり兄です」


 笑っているのがわかる。


「フランお姉ちゃんって呼んでくれていいですよ」

「わかったよ、お姉ちゃん!」


 って言ったら、


「……ごめんなさい。フランって呼び捨てにしてください」


 だってさ。乙女心は難しい。さらに、


「二人の時は、かなでと呼んでほしいです」


 なんか、可愛い。


「そうだね。かなで。名前を気に入ってくれてありがとう。僕も嬉しい」


 かなではなんか嬉しそう。


「そうだ、覚えていますか? 一歳まで魔力でスタイルとか能力が変わる話。私、陵様の好みの、あのかなでの姿になれるよう、毎日願いますね!」


 ふふ、今から可愛い。


「覚えているよ。僕も前世では小さかったしどんくさかったから、かっこよくなりたいし、身体能力も高めたいな。頑張ろうね、お互い」

「はい!」

「で、相談なんですけど……」


 ってところで京子ちゃんとミカエルが帰ってくる。と、同時に僕とかなでが連れて行かれる。

 あれ、京子ちゃんの視線を感じるけど? もしかして、若い姫様のようなシャルロッテ様の……ってこと? それを気にしているの? いや、気にされると気になっちゃうじゃん。僕だって、生きるために必要なんだよ。僕、生まれたばっかの赤ちゃんじゃん。ってことで、許してもらおう。

 だから、シャルロッテ様からおっぱいをもらう。

 で、縦抱っこでゲップをして、ベビーベッドへ帰還。

 帰ってきたのはいいけどさ、誰か、手を繋がせてくれないかな。会話ができないんだが。


 かなでが帰ってきたところで、京子ちゃんが泣く。お、いい判断。手を繋がせてっていうアピールだな! って、僕も泣こう。

 と思ったら違った。出たらしい。隣では、かなでも泣いている。僕も出たら恥ずかしいから、ここはお互い様で、気にしないようにしよう。

 そうこうしているうちに僕も出てしまう。

 みんなでスッキリしたところで手を伸ばして繋がせてアピール、いわゆるギャン泣き。メイドさんが手を繋がせてくれる。そうしている方が大人しいことに気づいたみたい。


 で、一歳になるまでにできる見た目と身体能力向上について話をした。京子ちゃんは魔力ぐるぐるがわからなかったので、説明した。前世でやっていたことを知った時には僕を中二病扱いしたが間違ってはいない。むしろ、誇ってもいいと思う。


 とりあえず、京子ちゃんに魔力を流し込んで体験させた。

 京子ちゃんはすぐにできるようになった。

 一方のミカエルとかなでだけど、初めて人になったため、魔力の持分が少ないらしい。容量は魔力を入れていけば大きくできるみたいだけど。

 だから、僕と京子ちゃんの魔力を分ける。

 これがさっきのかなでのお願いだったみたい。

 僕の魔力が多いのは、前世の中二病生活のせい。

 京子ちゃんが多いのは、前世で僕が京子ちゃんにエア魔力を当てていたせいみたい。

 で、かなでとミカエルは僕らが名前をつけたので、この四人の魔力は親和性が高いらしい。だから手をつないだ状態で会話もできるのだと。


 そうそう、僕はミカエルから聞きたいことを聞いた。

 この世界には魔法がある。

 で、魔法を使うためには、イメージ力と魔力操作力が必要。

 ってことで、魔力操作の練習をみんなでした。

 ちなみに魔法を使うのは、教わってからの方が良さそうとのことだった。教わっていないのに使うと、暴走する痛い子と思われるかもしれないからだそうだ。まあ、一理ある。


 僕らは手を繋いだ状態で、魔力の塊を京子ちゃんからミカエルまで移動させたり、逆もしたり、魔力を操作する練習として色々やった。

 そうそう、体の外を纏っている光も魔力らしい。これも広げたり、薄くして密度を高めたりと練習した。体の外に纏っている魔力量でその人のもつ大体の魔力量がわかってしまうらしい。

 だから、引っ込める練習もした。結論から言うと、かなり薄くまでできたけど、完全に無くすことはできなかった。それはみんなそうみたい。


 夜になると、かなでとミカエルはミレーヌさんと家に帰ってしまった。

 僕は京子ちゃんと一緒にシャルロッテ様の部屋へ。

 おかあちゃんの部屋じゃないんだ。

 夜になっても会えないと思うと、かなり心配になる。

 とはいえ、自分で移動もできない。

 探知魔法ってあるのかな? 魔力を広げてって、他の魔力の存在を調べる方法だけど。できるかどうかわからないし、使えたとして、どうかなっちゃったらやばいしね。

 今は我慢かな。なんの連絡もないし、シャルロッテ様が慌てて出ていくわけでもないしね。連絡がないのはいい知らせなのかな。



 翌日も四人がメイドさんたちの部屋に集められ、昨日と同じように一日をすごした。


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