高等学園2-6
母上にお願いすると、速攻でOKが出た。僕らは屋外の訓練場に向かう。訓練中の黒薔薇達は、海岸や屋内にいるようだ。まあ、秘匿することも多いからな。
僕らはチーム分けをしてそれぞれ訓練をしてもらう。武器はもちろん木製だ。
前衛チーム:アンディ、僕、ミカエル、リリィ。
後衛チーム:京子ちゃん、かなで、クララ、ケイト、ジェシカ、ビビアン
素手チーム:ボールズ、こはる
となる。
教えてくれるのは、前衛チームに母上とミレーヌ、後衛チームにアンともう一人の黒薔薇、素手チームはなんとベティだ。
ベティは「とっとと倒して楽をするんだ」なんて呟いているけど、無理だな。こはるがいる。
前衛チーム、母上が半端ない。ミレーヌもだが、どっちも全然動かないで僕らの相手をしている。
「盾は受け止めるんじゃない、流してバランスを崩させろ」「フェイントってものを知らないのか?」「盾も武器だぞ」「剣を振る型がなっていない。それに遅い。毎日千本剣をふれ」
とかボロクソである。おかしい、ドラゴンをも相手にしたぞ。まあ、あの時は身体強化していたけどな。
アン達の指導する後衛チームの方も容赦ない。槍も鎌も叩き落とされるは掠め取られるはで攻撃すらまともにさせて貰えていない。
ついには型をひたすら繰り返して、それを確認してもらうことになっている。ちなみに、かなでもここでは鎌ではなく槍の型を習っている。
素手チームに至っては、予想通りこはるに対して二人がかりで挑んでいる。全く休めなくなったベティは涙目である。
しかも、倒されても、待機している黒薔薇がヒールをかけて回復させてしまう。よって、何度も挑むことになる。
ちなみに、こんな訓練をしているので、黒薔薇はヒールが得意だ。ちょっとした怪我ならすぐに直してしまうし、体力も回復してしまう。
後で以前戦ったドラゴンたちの強さについてこはるに聞いたところ、当然こはるの母親は手を抜いていたし、他のドラゴンは、若者で本気ではなかったとのこと。
こはるは? と聞くと、「姿はなぜかここで成長が止まってしまったが、それなりに生きていて強い部類に入る」ということらしい。しかも、族長直系なので、元々素質があるらしかった。
おやつの時間に休憩を入れ、実践訓練に入るとのこと。アンディは言っていた。魔獣と戦うと。
ということで、実践訓練の相手は、工場内で飼育されているツノなしのホーンラビットだ。
最終的にはケルベロスが目標というが、僕ら四人とこはる以外はそこまでは無理だろう。
「家畜化されたホーンラビットだろう? これに勝てないようじゃ、洞窟なんていけないよな」
とボールズは簡単にのたまう。
うちのホーンラビットには人の目を盗んで猫たちが訓練を仕掛けている。やれるもんならやってみろ。うちのホーンラビットを舐めるなよ?
案の定、一対一でボールズはボコボコにされた。ホーンラビットはニヤリとしている。
「はいはい、前衛と後衛で組んで、二体一でやれ、前衛は相手の攻撃を逸らすもしくは受けること中心で、その隙を見て後衛がつけ」
と。まあ、そんな感じだよね。授業でもやったしね。
今度は僕らも参加して連携を確認していく。少しずつ数を増やしながら、多対多までやっていく。どれだけやられてもヒールで回復させられてしまうのだから、お互い終わりが見えない。とはいえ、夕方には訓練を終了した。
「いつもこんな訓練をしているのか?」
とボールズがベティに聞く。
「うん。今日は魔獣相手だっただけまし。隊長たちとエンドレスでやられると、気持ちが滅入るから」
とげんなりしていた。
翌日は一日ホーンラビットと訓練を重ねた。途中、ケルベロスも混ざってきたが、連携を強化していくうちに一体ならなんとかなりそうだった。
そして、帰る日。兄上に見送られ、ほぼほぼ同じメンバーで帰ることになった。連れてきた猫たちは、キザクラや第二世代に任せてきた。
そうそう、キザクラがちょっと大人しくなってきたのが気になる。もうおばあちゃんだもんな。まめに帰ってこよう。連れて行こうとしたが拒否された。
こはるはまたドラゴンの里に行っているらしい。洞窟の奥について呼べばくるそうだ。
道中、魔獣が現れた時は、母上は僕らに倒させてくれた。行きは先行した黒薔薇や騎士団が倒していたらしい。
彼らが見守ってくれているので安全に倒すことができた。ついでに解体の仕方も教えてもらった。
グリュンデールについて一泊する。父上と母上は騎士団や黒薔薇と一緒に先に帰るらしい。僕らは、明日、麓の村まで行く。
僕ら十一名と護衛としてメイドのアレク、タマラ、カレン、セルフ、それにベティだ。
母上もとい団長はベティに「客人を絶対に怪我させるな」と命じていた。ベティは冷や汗が止まらず固まっていたが。
なお、ベティは、あのような事情からこれまで王都にいなかったのだが、一緒に王都に行くことになった。これも母上の配慮だろう。
ちなみに、仮面をつけさせられている。ベティの身の上を知っている者がどこにいるともわからないからだ。
翌日、麓の村に行って一泊。次の日、洞窟に向かう。
「ねえねえ、楽しみだね洞窟。グレイスたちは知っているからいいけどさ。どんなところかな、魔獣はいるかな、お宝はあるかな」
なんてワクワクしているリリィがいる。
お宝はないぞ。僕らが行ったときもなかった。そんな無粋な答えはしない。
「あるといいね」
と言っておく。今日はゆっくり寝ておきなよ、と付け足して。
翌日、朝から森へ入っていく。隊列は僕ら四人が先頭。黒薔薇が最後尾、アンディ達は真ん中だ。道は僕らしかわからないからね。
歩いていくと、野性の動物がちらほら見えるが、僕らを見て逃げて行く。まあ、倒してもいいのだけれど、めんどくさいので、見つけるたびに僕が殺気を向けて逃しているのだ。
「全然出てこないねー」
なんてリリィが言っているので、野生動物でなくて魔獣が出てきたら任せてやろう。と、そこへ。
「リリィ、ホーンラビットが一体、こっちを見ているけど、どうする?」
「私がやるー。アンディ、盾で防いで」
「え、僕が?」
「だって、習ったでしょう、なるべくこっちの人数を多くして有利に戦うって」
「そりゃそうだけどさ」
と言って渋々でていくアンディ。リリィも前衛職のはずだが。ホーンラビットも逃げればいいのに向かってきた。で、練習どおりに捌いた二人があっさり倒した。
「あっけなかったわね」
と、リリィ。そりゃな、うちのホーンラビットは強いからな。
こうして、戦うメンバーを入れ替えながら、ホーンラビットやボーンウルフを倒しつつ、洞窟へ向かう。メイドさん達は、極力僕らにやらせるみたいだ。
こうやって、一日かけて洞窟まで辿り着く。洞窟に入ったところで、前回と同じように野営をする。
みんな、それなりに興奮状態だ。
自らが野生の魔獣を倒せたことが嬉しいのかもしれない。討伐証明のツノも集めてあるし、これで冒険者もクビにならずに済むだろう。
夜の見張りは、三人ずつローテーションを組んで、そこへメイドを一人加える形で行った。ま、全く問題はなかった。
朝、朝食を食べて、みんなで奥へ入っていく。隊列は昨日と同じ。みな、片手にランタンを持っている。お買い上げありがとう。
しばらく歩いていくが、やはりホーンラビットとホーンウルフしか出てこない。と、道半分きたところで休憩をする。
「ホーンラビットやホーンウルフじゃ手応えがないわね」
とすっかり慣れてしまったリリィ。それに同意するボールズ。その会話を聞いて気が緩んでいるメンバーたち。
うーん。そうゆうのフラグっていうんだよね。
休憩を終えて歩いていくと、ほら出たよ。ホーンボア。
ここにはホーンのついた魔獣しかおらんのか。
しかし、ホーンボア、五体もいるよ。二メートルくらいあるよ。前足、ゴリゴリしているよ。絶対、こっちに突進してくるよ。こういう時はアンディだ。
「前衛、盾もて。止めようと思うな、そらしてバランスを崩せ。その隙を持って後衛と素手隊突撃。グレイスとフランは後ろの二体の気を引いてくれ」
と指示を出す。なんだよ素手隊。わかるけど。
突っ込んでくる先頭の三頭をアンディ、ミカエル、リリィがなんとか盾を使っていなすと、僕とかなでが左右から突撃、後衛隊五人が三人の盾の後ろから一頭に槍と薙刀を突き刺していく。
後ろからくる二頭を僕とかなでが抑えている間にボールズとベティが突っ込んできて殴り倒す。ボアが怯んだすきに、僕とかなでがそれぞれとどめを刺す。
よし。危なげのない戦闘にみんなでハイタッチをする。
「なかなかやるじゃん、アンディ」
とはリリィ。
「いや、みんなで戦闘訓練をしたからだろう。訓練してきてよかった」
「ほんとにねー」
討伐証明である角を回収し、肉も美味しそうなので、それなりに解体して集める。そのほか、売れそうなところを持っていくことにする。それ以外は燃やしておく。これまでもそうしてきたよ。じゃないといろんな生き物が寄ってくるからね。




