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高等学園ー10

 翌日は街を散策して楽しんだ。

 工場が誘致されてから、街がさらに大きくなったとのことだった。

 元々農業が盛んだったこともあり、豊かな街である。街のまん中に大きな公園もあった。


 そこで休んでいると、小さな子供達がたくさん歩いてやってきた。

 中には乳母車に乗っている小さな子も何人かいる。大人が何人かと、大きくなった子供が小さい子の世話をしている。

 保育園みたいだなーと微笑ましく見ていると、孤児院の子どもたちだったらしい。

 孤児院は領主が経営しているので、この街の孤児院ではそれなりの待遇が受けえられているのではないだろうか。

 公園で遊んでいる子供たちは楽しそうだ。痩せ細っているわけでもない。僕と京子ちゃんは、前世でしていたのと同じように、二人並んで、その光景を眺めていた。子供たちが幸せにしているのっていいな、と思いながら。

 僕たちも今は十三歳だけどね。

 後で、キザクラ商会に各地の孤児院に寄付を出しておいてもらおっと。と、京子ちゃんやかなで、ミカエルに相談すると。快く了承を得られた。かなでとミカエルは僕らの好きにしていいと言っている。


 グリュンデールでは十日ほど過ごした。その間、街の散策のほか、公園でのドッヂボールやバレー、これは、地元の子供達や孤児院の子どもたちとも楽しんだ。近くの川に行って釣りをしたりバーベキューをしたりと楽しい夏休みになった。




 皆で帰ることになったが、こはるは馬車に乗れない。なので、京子ちゃんがこはると残り、予定の三日後の夜にローゼンシュタイン邸の訓練場に降り立ってもらうことにした。その際、ダミーの馬車も出してもらえることになった。


 三日後の夕方、僕たちは王都に着いた。それぞれ家が近くなったところで、馬車を降り、帰って行った。僕らは最後だ。

 馬車は借り物なので、明日にでもグリュンデール邸に返してこなきゃ。


 夜になると、父上と母上にあらためて事情を説明した。そうすると、しばらくしてこはると京子ちゃんが到着した。ちょっと遅くなったので、騎士団が借りていた馬車と一緒に京子ちゃんをグリュンデール邸へ送って行った。


「その子がドラゴンなのか?」

「そうです。今、ソフィと一緒に空を飛んで帰ってきました。だよね?」


 と視線でこはるに確認を取りつついうと、


「そうじゃ。初めまして、妾はこはる。このグレイスと一緒にいるよう、母上から言われた。なので、しばらく世話になる」


 と、こはるは自己紹介をした。

 馬車に乗れないのをなんとかしたいけどな。

 父上と母上は、態度と見慣れない服以外は普通の女の子であるこはるを見つめていたが、見ていてもしょうがないとあきらめ、


「食事にするか?」


と聞いた。


 話は食事の時となった。これまでのことを順に話したのだが、やはり気になるか、と言うのが、


「ワイバーンを攫う者をなんとかしろと?」


 という、爺さんずからも聞いているであろうことの確認だった。父上も母上も心当たりはあるが、たいしたことのない嫌がらせだったのか、放置していた。なので、決定的な証拠も掴んでいない。明日以降に国王と相談して、調査を開始することにした。

 今日は、疲れているだろうと、そこまで話しをして寝た。こはる? 仕方ないので、僕の部屋にベッドを一つ用意した。猫たちが可愛いのか、しばらく撫でていたけど。食べちゃダメだよ。




 翌日、喧騒とともに起こされた。メイドから応接室に来るように言われる。それなりに整えて応接室に向かう。こはるも一緒だ。


「失礼します」


 とノックをして、応接室に入る。すると、知らないおっさんが従者とともにいた。父上と母上が対応をしている。


「こちらが昨日までうちの娘と一緒にいたという辺境伯のご子息ですかな?」


 父上が頷く。すると、


「うちの娘をどこへやった」


 と、おっさん。

 ???

 と首を傾げていると、父上が説明してくれる。


「今朝になって、カールソン子爵邸へご息女のご友人が訪ねてこられたそうだ。そのご友人はお前たちと一緒に行動していたそうだ。それを知って、昨日、ご息女だけが帰ってこなかったことを知った。だが、どこへ行ったかわからない。それでうちに探しにきたというわけだ。お前は何か知っているか?」


 カールソン? ベティのことか。


「いえ、馬車で王都につき、その後、家の近くに来たものから馬車を降りて帰って行きました。アンドリュー王子殿下に聞いていただいて構いません」


 と答える。


「だが、誰も帰ってくる日を知らなかった。知っていたのは辺境伯だけでは?」


 確かに、護衛などは断ってしまったので、先ぶれも出していない。


「いや、うちも突然帰って来たからな。子供たちと一緒に行動していた冒険者は三日ほど前に帰ってきたが、うちの子達がいつ帰ってくるかは言っていなかった」

「それのどこに証拠がある。知っていて、うちの子だけを攫ったのではないか?」

「私どもを誘拐犯扱いするのか? そこらの盗賊とかではないのか? 子爵も私と同じ貴族、全くの恨みを買っていないとも限らないだろう?」

「だが、可能性がないわけではない。必ず、娘を見つけ出して、調べ上げるからな。帰ってくる日などは辺境伯が流したに違いないのだ」


 と鼻息荒く、従者とともに帰って行った。




 僕は小声で伝える。


「マイヒメ、全員で探索。見つけても踏み込まない。教えてくれ」


 すると、コートの裾からマイヒメが出ていく。


「まあ、完全な逆恨みだな。何か目的がありそうなくらいだ」

「そうですね、一応、黒薔薇に聞き込みをさせます」


 と母上はミレーヌに合図をする。


「第一騎士団にも言っておくよ」


 と父上。


「よし、グレイス朝食はまだだろう。一緒にとろう。こはるもな」


 と母上は僕らを朝食に誘う。なんかのんびりしているな。大丈夫なのか?


「焦っても仕方がない。どうせ、動くのは夜だ」


 わかっているかのような言い方だが、動くのは犯人? それとも……

 噂を聞きつけたアンディたちがやってくるが、ちょっとそれどころでもないので、家に帰ってもらった。




 夕方、マイヒメが帰ってくる。居間で休んでいた僕に擦り寄り「にゃーん」と鳴く。僕はマイヒメを抱き上げ、「よーしよしよし」とめいいっぱい撫でてやる。

 マイヒメを優しくソファーの上においてやって、僕は立ち上がる。すると、母上から待ったがかかる。


「グレイス、夜中まで待て」

「ですが母上、ベティは今でも捕まっているんです」

「それでも待て。まだ機ではない。今動くと、面倒なことになるかもしれん」


 と言って、僕を座らせる。


「よし、晩御飯を食べよう」


 と、相変わらずののんびりモードだ。


「晩御飯を食べたら風呂に入っておけよ。そして、出かける準備をしておけ」


 と、僕に指示を出す。

 僕は、そのとおりに準備する。




「どうだ?」


 リーゼロッテは、メイドに状況を聞く。


「はい、当家を囲むように、転々といますね」

「そいつらはこっちの動きには気づいていないのか?」

「気づいていないと思われます。捕まえますか?」

「いや、グレイスが人質のいるところまで行ってからにしろ。でないと、先に気づかれたら面倒だ」

「わかりました。しばらく見張らせます」

「メイド達、何人かずつ交代して団服に着替えさせろ。また、そのあとは尾行を続け、グレイスが着いたところで確保するぞ。何人か生きていれば他は殺してもかまわん」

「はっ」




 僕はらいらい研のコートを着て完全武装する。もちろん魔法銃も持っている。

 その格好で居間に戻ると、母上も準備ができているようだ。とはいえ、見たことのない姿だ。

 黒薔薇は白いコートなのに、今は真っ黒のコートを着ている。

 薔薇の刺繍は変わらず黒なので、あるのかないのかわからない感じだ。

 また、母上がつける仮面も黒くなっている。長く輝く金髪だけが目立っている。腰には剣を刺している。


「私どもも準備完了です」


 と入ってくる黒薔薇騎士団員。母上と同じ格好。声はミレーヌだ。しばらくしていると


「私たちも行きます」


 とかなでとミカエル、それとこはる。


「悪いが、お前たち三人は留守番だ。ミレーヌ、帰らせろ」

「はっ」


 とミレーヌは言って、かなでたちを連れていく。かなではごねたが、母親のこれまでにない真剣さに折れたようだ。


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