高等学園ー9
母ドラゴンは、満足したのか、人型形態に戻り、僕を解放した。
だが、僕の肋骨、折れてないか? 痛いけど。
他の三人に怪我の確認をするけど、大丈夫と言ってくれるので、遠慮なく自分自身にヒールをかける。
ドラゴンたちは強かった。母ドラゴンがいなかったら、勝っていたけどな、きっと。三対三は勝っていたわけだし。
僕は母ドラゴンにメガヒールをかけたこともあり、もうちょっとで魔力がなくなりそう。
「さて、ここまで二戦して一対一だな」
やばい、三試合目は無理だ。だが、余裕の顔を崩してはいけない。やるならやるぞって顔を崩さない。
「そこで提案だ。貴様らと私達は引き分けだ。引き分けである以上、どちらが上でもない。互いに協力関係を築きたい。だから、私の願いをひとつ聞いてほしい。その代わり、そちらの願いも聞いてやろう」
えー、そっちに願いがあるのはわかったけど、こっちにあるかな。
「わかった」
としか言いようがない。それなりにいい条件だ。というか、もう無理。
「こっちの願いはだな。ここ十年くらいのことだが、私らの眷属であるワイバーンの子供を攫う愚か者がおる。なんとかしてほしい」
ん? どっかで聞いたことがあるな、ワイバーンの子供。
「ワイバーンの子供が攫われると、その親が連れ戻しに行く、というか、報復に行く。当然のことだ。だがな、そもそも、攫うのをやめて欲しいのだ」
「あなた様方が守ることはできないのですか?」
「ここはそれなりに広い。それに、ワイバーンも何千と巣がある。私らもそんなに数がいるわけではない。しかも人間は狡猾だ。そもそもそのようなことをするのをやめて欲しい」
なるほど。犯人見つかるかな。なんとなくわかる、というか両親や兄上に聞けば目星くらいつくだろう。
「約束はできないというか、努力はします。だが、そんなことをやらかす奴が見つかるかどうか、現時点では見当もつきません。ですが、そこにいる爺さんずはそれなりの権力者です。協力してくれるはずです」
爺さんずは急に振られてあたふたしている。ドラゴンの頼みだ。無碍にできないだろう。
「なるほど、よろしく頼む。それでだ。我が娘を連れて行ってくれ。手伝いをさせたい。鍛えてやってくれ。お前達なら、娘といい勝負をするだろう?」
いや、絶対に無理です。
ドラゴン族のマジになんて、勝てるわけがない。
京子ちゃんたちが相手をしたのも、手を抜いていたか下っ端の下っ端だろう。だって、ケロッとしている。
「え、頼みが二つになっていませんか?」
「最初の願いは、その爺さんずとやらに振っただろう。だから別の望みを言ったまでだ」
と、飄々と言う。僕ははぁっとため息をつき。
「わかった」
と答える。すると、ドラゴンたちは踵を返し、空に飛んでいく。
「ちょっと待て、こっちの望みを言っていないぞ」
と言ってもどんどん離れていく。くそーと、僕は右手をあげ、残った魔力を使って最強魔法を再び撃ち込む。
すると、それを避けた母ドラゴンが急旋回して戻ってくる。そして僕の前に人型形態で降り立ち、再び殴り合いになった。
しばらくして、お互いをお互いのメンバーが止め、殴り合いが終わる。押さえつけられながら、顔を突き合わせて、
「貸しひとつだからな」
と僕。
「返せるもんなら返してやるわ」
と、母ドラゴン。いや、返せよ。
結局、ドラゴンたちは帰って行った。その顔は笑っていたように見えたのは気のせいか?
さて、僕らも帰ろうか。と、爺さんずに声をかける。僕はもう魔力もほぼない。
「なんか、どんでもない宿題をもらったような気がするが」
と前国王。
「ワイバーンを攫うだと? そんなことをしている奴らがいるのか?」
と前宰相。
仕方ない、僕が心当たりを話す。
「以前、ローゼンシュタインにワイバーンの子供を持ち込んだものがいました。それを追って親ワイバーンが二頭飛んできて人を襲いました。騎士団たちの活躍でなんとか抑えましたが、下手をすると大惨事でした」
「なるほど。ローゼンシュタインだったのが不幸中の幸いだったか、それとも、ローゼンシュタインが狙いか?」
と、前前国王が首を傾げる。
「父と母の話では、うちが潤っているのが気に入らない貴族もいるのだと言うことです」
「しかし、ローゼンシュタインは完全に中立の態度を崩していない。ならば、本当に妬んでいるだけか? 派閥争いは関係ないのか?」
爺さんずは互いに顔を見あわせて悩んでいる。
この件は、一度、両親に聞くしかないだろう。
僕たちは、とりあえず、グリュンデールに帰ることにした。まずは、こはるに穴に入ってもらい、下で我々を受け止めてもらう。そこで、一旦野宿をする。今日はもう遅い。日が暮れてきた。
次の日、人型になったこはるに魔力を抑えてもらい、他の魔獣に影響のないようにする。そうして入ってきた入り口から洞窟を出る。そのまま、森付近の村に入る。
村で一泊したのち、帰ろうとしたのだが、こはるの体重のため、馬車が重量オーバーとなり、馬が動かなかった。
仕方ないので、爺さんずには馬車で帰ってもらった。直接王都にいき、現国王と、父様に話しておいてもらうことになった。
僕ら四人とこはるは仕方がないので、歩いて帰る。が、夜中はこはるに飛んでもらった。時間調整をして翌日の夕方にグリュンデール領都の屋敷に行くと、すでにらいらい研が来ていた。
迎えてくれたのは、シャルロッテ様とメイドさんたち。
「おかえりなさいませ、ソフィリア様」
とメイドさん達。
「それと皆様もようこそいらっしゃいました」
と、出迎えてくれた。シャルロッテ様は京子ちゃんを抱きしめて「おかえり」と言っていた。
「それでは、お風呂の準備ができておりますので、入っていただき、その後で夕食にいたしますが、よろしいでしょうか」
と確認を取られて、了解しておく。
らいらい研と再会を喜び合っていると、ベティが自分よりちみっこに気がついた。
「あー可愛い。お嬢ちゃんはどこの……」
ビシッ、いつものデコピン。
「いたーーーい」
とベティはデコを抑えて床をゴロゴロしている。お行儀悪いぞ。
「妾はお主らより年上だと言っとろうが」
と、頬を膨らませる。そうゆうのが年下に見えるんだよ。
復活したベティが
「えっと、ごめんなさい。私はベティと申します。お名前をいただいてもよろしいでしょうか」
「妾はこはる。こちらのものと同じように、こはるちゃんと呼んで良いぞ」
「わかった、こはるちゃんね」
お、いきなり敬語がなくなったぞ。まあいいか。こはるも気にしていないようだ。
「おーい、風呂に行こう」
とアンディ。みんなで風呂に入る。もちろん男女別だ。こはるは京子ちゃんに連れていかれた。
「風呂とは?」
と言っていたが大丈夫かな。
風呂では、今回のことを色々と聞かれた。
まあ、爺さんずが山脈のほとりであのちみっこを見つけた。保護しようとしたが、爺さん達では怖がられて連れ帰れなかった。だから、同世代の僕らを頼った。そんな話にした。なんで、近くの村とかグリュンデールの子ではダメだったのかとか聞かれたが、森は危ないから。と言うことで簡単に落ち着いた。
「森で何日もあの小さい子がよく何日も生きていたな」
とアンディが言うので、
「さっき本人が言っていたように、僕らより年上だぞ、きっとだけどな」
と言っておいた。
「じゃあ、同世代が迎えに行く必要なかったじゃんか」
というつぶやきが聞こえたが、無視させてもらった。
何日も一人でいられた理由については、「前に爺さんずがきた時に食料を置いてったからじゃない?」と適当に言っておいた。
食事は穏やかに済んだ。と言うのも、最初に泊まった宿での食事は大変だった。
こはるはずっと洞窟にいたせいか、ドラゴンが調理をしないせいか、調理された食事を知らなかった。
洞窟でどうしていたのか聞いたら、時々空から果物やら魚が降ってきたそうだ。まあ、それくらいの面倒は見ていたってことか。いい加減だな。
こはるはいちいち「この水、色がついているし暖かい、良い匂いもするな」とか「この肉、焼けておるぞ」とか言っていた。
マナーはというと、一応雰囲気を読んで、僕たちと同じようにカトラリーを使いこなした。飲み込みは早かった。さすが大人だ。ドラゴンが何歳で大人になるのか知らないが。
ただ、今日の食事も三回目のおかわりを欲しそうにしていた段階で、後でおやつをあげることにして我慢してもらった。




