高等学園ー8
結局、なんとか登り切った。こはるは、
「帰ってきたぞー」
と叫んでいる。
僕とミカエルはへとへとだった。途中で、ヒールをかけて体力を回復させながら登ってきたのだ。
洞窟を出たところでへばっていると、京子ちゃんとかなで、爺さんずが上がってきた。
「ここは?」
と聞くのは京子ちゃん。
「グリュンデールとローゼンシュタインの間に二つの山脈があるだろう。その間だ」
と、爺さんずは答えてくれる。
え、そうするとさー。
僕は嫌な予感を覚えるし、爺さんずも来てはみたものの来て良かったのか? と言う顔をしている。こはるは何度も叫んでいる。
「帰ってきたぞー」
と、叫ぶこはる。
しばらくすると、来たよ。来ちゃったよ、ほーら。恐れていたものが。
遥か遠くから、それでも姿がわかる巨大な影。バッサバッサと、近くに降りてくる。その後ろからさらに十頭ほど。
いやー、生きた心地がしないんだが。
ドラゴンの皆さん、こんにちわ。
先頭のドラゴンが、僕たちには興味がないと言うようにこはるに声をかける。
「遅かったな。ようやく出てこられたのか」
「うむ母上。ただいま帰ったのだぞ」
この子、ドラゴンかー。でもドラゴンの格好していないな。
「だが、人間如きに頼って出てくると言うことは、まだ飛べないのだろう? もう一度落ちるか?」
もしかして飛べるようになるようにと、ここに落としたと? 飛んで出てこいと?
「母上、お言葉ではございますが、妾の体重では、壁を登ると接触面積あたりの体重が大きすぎて、壁が崩れるのです」
だから、人間二人で接触面積を増やしたと? それくらいのことでできたのか?
「何を言っている。飛んで出てこい」
「母上、お言葉ではございますが」
あ、繰り返した。
「飛んで出るには、この穴は小さすぎるのです。飛んでここから出ることはできません。途中で詰まります」
と言ってこはるはドラゴン体型に戻る。親よりは小さいとはいえ、流石に無理だな。母親は、娘のドラゴン体型の体と洞窟の穴を何度も見比べ、
「てへっ」
と言った。
「可愛くないわ」
と思わず手の甲で母親ドラゴンの足にツッコミを入れてしまった。
手の甲が擦りむけた。いたいなー、もう。
すると、母ドラゴンがこっちを見て、
「貴様、人間風情が我にツッコミを入れるとはいい度胸だ」
もしかして、話を逸らしたかっただけだろう。と思ったら、
「貴様ら死ぬがいい」
と、ごまかすかのような母ドラゴン。
目撃者を殺すような感じ? と、母ドラゴンは飛び上がり、首を持ち上げ、魔力を貯めていく。
他のドラゴンたち、こはるもだが、飛んで離れていく。やばい、ブレスじゃね? ドラゴンのブレスで生き残れる気がしない。
周りの仲間たちに目を向けてもどうしていいかわからない様子。
爺さんずは、洞窟に飛び込むかどうかを相談している。飛び込んだら落ちるのは百メートル下だ。
ドラゴンは飛んでいるので、武器は届かない。仕方ない、一か八かの最強魔法。
ドラゴンがブレスを吐く前の大きく息を吸い込むタイミングで僕は右手を前にだし、魔法を打ち込む。
僕の魔法が到達すると同時に、ドラゴンは息を吸い込む。吸い込む……。
ドラゴンが吐いた。
吐きながら
「貴様殺す」
とか涙目で言ってくるので、僕は問答無用に魔法銃、ファイアバレットを打ち込む。
当然、大爆発を起こした、母ドラゴンを中心に。
あれ、引火性のガスなんだよね。
京子ちゃん達は、絶体絶命の危険に直面していたのに、それを助けた僕へジト目を送ってくる。
いいじゃん、燃やしちゃったほうが臭くなくてさ。
母ドラゴンは口や体のあちこちから煙を出しながら落ちてきた。
ズドーーンと。
母ドラゴンは動かない。あれ、やばいかな?
こはるが近づいてきて、ドラゴン形態の短い腕で母ドラゴンをツンツンしている。が、反応がない。
やっちゃったかな、と思い、僕も近づく。
これって、助けた方がいい? という視線をこはるの方に向けると、
「これで妾の時代がくる」
とか両腕を掲げて叫んでいる。
あ、母ドラゴンまだ生きているぞ、殺気が出ていぞ。こはる、そんなことを言って大丈夫か?
仕方ないな。と、僕は、母ドラゴンのこげた体に、まだちょっと熱かったけど、手を当てて、魔法を唱える。
「メガヒーーール」
魔力半分ぐらい版、それでも多いぞ。
すると、母ドラゴンが光だし、光が終息すると同時に元の怪我一つない体が蘇った。
その瞬間、母ドラゴンは娘の首に噛み付いた。娘は
「冗談です母上様」
と言って、母の首をタップしている。
さてと、これで依頼達成かな。帰りたいな、と爺さんずに振り返ろうとすると、
「おい、そこの人間」
と。え、僕ですか?
「貴様、妙な魔法を使いやがって、死ぬかと思ったじゃないか」
いや、どっちでもよかったけど、助けちゃったな。
「今度は魔法抜きで勝負だ」
と言って、人型体型に変態する。
「変化じゃ!」
と怒られる。心を読むな。
あれ、娘は着物だったのに、母は赤いチャイナか。チャイナは体のラインが出るので、きれいな人ではないと似合わない。
だが、見事に似合っている。と言うか、その前に、どうやって着替えた?
すごいな。聞けるような雰囲気でもないし、ドラゴンの七不思議にしておこう。
しかし、魔法抜きか。魔法研の時は、魔法陣が反則扱いだったな。魔法銃もだめかな。魔法研もそうだったけど、こういった縛り対決は流行りなんだろうか。
「ちょっとマイヒメ達出ていて」
とマイヒメ達を避難させる。僕達はガンツの鍛えた武器を抜く
「お、四人か? ならこっちも。おい、三体、人型でこい」
と。
京子ちゃんが、
「私やらなくて良かったんだ」
って顔をしている。まあ、巻き込まれておくれよ。
他のドラゴンさんの三人は、前世の隣国のお寺で着られるような太極拳服だった。
僕たちは、いつものフォーメーション。かなでの前に僕、京子ちゃんの前にミカエルだ。
僕は刀を構え、ミカエルは盾を構えている。基本は、前衛がパリィして後衛がどーんだが、今回四対四。僕の前には母ドラゴンともう一体。ミカエルの前にも二体。なんとなく、二対二が二つできた感じ。
ドラゴンたちは素手で戦うらしい。
ということで、僕らも武器をしまう。武器ではおそらくドラゴンたちのスピードに勝てない。
「いくぞ」
と言って、ドラゴンたちがかかってくる。
僕らは、なるべく二対一の有利な条件にしたいため、母ドラゴンを中心に、もう一体を母ドラゴンの後ろに位置するようにとにかく走る。
京子ちゃんたちも同じ作戦だ。前衛がなんとか防いで、後衛がそのすきに飛び込んで攻撃を当てていく。が、そんなに甘くなく、結局一対一が四つできていく。
ミカエルと京子ちゃんは背中合わせになっている。
僕とかなではそれぞれ一対一になっている。
こっちの母ドラゴンじゃない一体を二人で倒したいなぁ。
が、そんなことは全然無理。僕は母ドラゴンの攻撃を防ぐので精一杯。その間に、その三体を三人でなんとかして欲しいと防御に徹する。
だが、そんな時間稼ぎがバレたら攻撃され続けるので、時々牽制を入れておく。
京子ちゃんとミカエルは、とりあえずやり合って様子を見る作戦。
かなでは全力でいくらしい。
ちなみに、これはなんとなくわかるが、母ドラゴンは全く本気を出していない。絶対無理なやつ。
ドラゴンの人間形態のサイズはおおよそ人並みだが、大小さまざま。かなでの相手は二メートルくらいある。その上で俊敏。
だが、かなでは体の小ささとそのやたらフェイントの多いその動きで翻弄している。上半身には手が届いてもダメージが入らないし、飛び掛かっては避けられない。なので、地を這うように攻撃を仕掛けている。
しかし、その体重差から捕まったら危ない。
かなではヒットアンドアウェイを繰り返す。
相手の膝狙いにしたようだ。右を狙っては左、左を狙っては右、フェイントをかけて少しずつダメージを蓄積させていく。時間がかかりそうだな、
僕、もつかなー。
かなでは、ダメージを与えつつ、一体をプルしていく。京子ちゃんの方へ。
京子ちゃんたちはほぼほぼ互角、今のところ。
京子ちゃんたちの近くに寄ったところで、かなでは自分の相手に攻撃を仕掛けるフリをして回転し、京子ちゃんの相手に飛びかかり、後ろから脇腹へパンチを繰り出した。
かなでの相手は一瞬遅れてフォローが間に合わない。京子ちゃんの相手が動きを止めたところで、京子ちゃんが攻勢に出る。
かなでは、元の相手の方へ向かって足止めをまた行う。
京子ちゃんの一対一のバランスが崩れたことで、有利になってくる。
かなでも京子ちゃんも決して攻撃を受けていないわけではない。
ついに、かなでの相手が膝をついたところで、かなでは後ろ回し蹴りを後頭部に叩き込む。
その一体が崩れた瞬間にかなでは今度はミカエルの相手に攻撃を仕掛ける。
二対一になったミカエルの相手は簡単に倒れ、三人で京子ちゃんの相手を倒した。
僕は、そこまでなんとか耐えていたが、そろそろ限界。
不利を察したのか、母ドラゴンがさらに攻勢に出てきた。もう無理。なんとか避けつつも腹にパンチを喰らう。
こっちも反撃にと思うが、母ドラゴンはすでに離れて体を回転させている。その長い足が僕の頭に向かってくる。
なんとかガードするが、無理。その勢いに飛ばされる。
やっとのことで足で降りて踏ん張るがその瞬間にはもう迫られる。
僕がなんとか相手のパンチを堪え、フェイントの右を出した瞬間、その右手を取られて投げ飛ばされてしまった。投げ飛ばされただけなら良かったけど、手を離してくれず、そのまま、背中から地面位叩きつけられる。
そこへマウントをとってくる母ドラゴン。もう耐えるしかない、と思ってきたところに、三人がやってきた。
よし、なんとか耐えた、と思った瞬間、母ドラゴンはドラゴン形態に戻る。
え、僕の上に乗ったまま? と思ったが、なんとか潰れずに……、ではなかった。
母ドラゴンは、足を僕の上に乗せ、今にも潰しそうな加減で踏んでいる。いや、潰れて死ぬわ、これ。
「お前たち、なかなかやるな? これ以上やるか? こいつを潰すぞ?」
と、母ドラゴン。京子ちゃんたちは動きを止めた。止めて三人とも手をあげている。すまん、僕が負けたせいで。




