高等学園ー7
翌日、僕らは山に入っていく。
「わかっていると思うが、なりたての冒険者は魔獣を倒してギルドに売り、お金を儲けている。だが、今日は急ぎなので、放置していく」
まあ、そんなにお金に興味はない。というと嘘になるが、現状必要ではない。
そう言って爺さんずについて森に入っていく。
爺さん二人が前を歩き、最後を前国王が歩く。出てくる魔獣は襲ってくれば撃つ、逃げるようなら無視、美味しそうなら撃って解体処理という感じで進んでいく。
夕方まで歩くと、だいぶ標高も上がってきたのか、木々が低くなってきた。気温も下がってきたような気がする。
僕らはらいらい研の制服を着ている。ちなみに、一人に一匹ずつ猫が入っている。なので、温かい。
木々がなくなったところで、横一メートル縦二メートルくらいの穴がぽっかりと開いているところに出た。
「今日は、この入ったところで野宿するぞ」
と穴に入っていく爺さん達。
入ってちょっと下がったところに、ちょっとした開けたスペースがあった。そこには野宿をした跡があった。
「前もここで野宿したんじゃ」
とのこと。野宿の間は、爺さん達が交代で見張りをしてくれるらしい。猫達も出してくつろがせる。
朝になった。僕らは同じ並び方で奥に入っていく。爺さん達の左手にはキザクラ商会のランタンが握られている。右手には魔法銃だ。洞窟の中には誰もいないから、出しっぱなしでもいいらしい。
もちろん、僕達もランタンは持っている。銃はまだコートの中。
現れるコウモリや蛇は無視。時々出てくる魔獣、ホーンラビットやホーンウルフなどは、爺さん達が魔法銃で近づく前に瞬殺している。それらは当然放置だ。
「いいのか? 魔獣が寄ってくるぞ?」
「帰りに拾えばよかろう。そんなに時間はかからんかもしれんしな」
とのことだった。
そうして、途中で昼休みを取り、さらに半日もした頃、青白く光る水面が見えた。
光っているということは、といって見上げると、空が見える。だが、百メートルくらい上だ。
とりあえず、上はいいとして、美しい地底湖を見ようと近づく。
湖の淵に立って覗き込むと、爺さんの一人が僕を引っ張った。
その瞬間、僕の頭があったあたりに巨大な魚が飛んでいた。ギョッとその魚を見つめていると、もう一人の爺さんが魔法銃、アイスバレットで撃ち抜いた。
その魚を持って、奥へ歩いていく爺さん。
「おーい。魚だぞ。食べるかー」
と。
誰かいるのか? しかも生で食べる? 誰かではなく何かか?
と、見ていると、奥からトコトコトコと歩いてくる……子供? なんでこんなところに?
僕は、というか、京子ちゃんも驚いていた。赤い髪の子供は着物を着ていた。しかも髪型は姫カット。背の高さは百五十センチないくらいか。
「あの、なんで、というか、あの服はなんですか?」
と爺さんの一人に聞く。すると、
「わしらも見たことがなかったのだが、もしかしたら、遠い国の服なのかもしれないな」
と。僕と京子ちゃんは興味が出て、近づいていく。
魚を持った爺さんがその魚を子供に渡す。尻尾を持って。
子供はそれを一瞬受け取る。というか、結構力持ちだな。自分と同じくらいの魚を持ち上げているぞ?
子供は、その魚を不機嫌そうに返した。仕方ない、という感じで爺さんは鱗を取ってやると、子供は喜んで受け取り、魚に齧り付いた。
いいのか? 骨とか内臓とか。しかも生だぞ? 寄生虫とか大丈夫だろうな。
食事が終わるのを待って、僕と京子ちゃんが話しかける。小さい子供にはかがんで目線を合わせるのが基本だ。
「こんにちわ、お嬢ちゃん、お名前は?」
ビジッ、僕はデコピンを食らった。しかも、よけられなかった。
「お前、気安いな。名を名乗る時は自分からでは? そもそも、妾の方が年上だぞ? おそらく」
と。仕方ない。そういうプレイか?
「申し訳ありませんでした。僕はグレイス。こっちはソフィ、後ろに立っているのがフランとミハエルです。こっちの老人達は知っているのですよね?」
「うむ知っておるぞ。名乗り、ご苦労。妾はこはるじゃ」
僕と京子ちゃんは驚いて目を合わせる。日本名か? 京子ちゃんが聞く。
「こはるちゃん、」
ビシッっとまたデコピン。京子ちゃんがおでこを抑えている。
「妾はお主らより年上だといっとろうが」
京子ちゃんは、イタタタタとおでこをさすっている。
「まあ、特別に許す。こはるちゃんと呼べ」
いいのかよ。京子ちゃん、デコピンされ損じゃん。
「ではこはるちゃん、どこからきたのかなー」
こはるは、
「年上だと言っとろうが」
と呟きながら、
「上じゃ」
と真上を指差す。僕らは見上げると、さっきの穴が空いているのが見える。
「あそこから落ちたの?」
ビシッとまたデコピン。攻撃が速い。またも避けられない。
「あそこから来たのだ」
言い方かぁ。めんどくさいな。でだ。僕らはなんで来た?
「あの、それで僕らはなんで連れてこられたのでしょう」
と爺さんずに聞く。
「この子を地上に返してあげたいのだ」
「返せばいいんじゃない?」
「それができないから、お前らを連れてきたのだ」
ふむ。と上を見上げる。僕は言う。
「来た方から出ればいいじゃん」
爺さんずは驚愕の顔をしている。まさかと思うけど。聞かないでおいてあげる。僕は、
「行こうか?」
と言って、こはるを抱き上げようと、体に手を回して抱えようとする。が、全く持ち上がらない。
「重たっ」
ビシィッ、今度は頭にチョップだ。
「乙女に重いとは言ってはならないことを!」
と顔を赤くして怒っている。
「あのな、妾がそっち側から出ると、おそらく森の魔獣が一斉に山を駆け降りるぞ? いいのか?」
と言う一言で京子ちゃんが気づいた。
「グレイス君、その子の魔力」
と囁いてくる。じっと目を凝らすと。あー、でかいし濃いな。
と言うか、ちょっと反省。普段から見るようにしようかな。人が光って見えるのって、見づらいんだよね。
「と言うことは、上から返したいと?」
うむ、と爺さんず。
「こはるちゃんは登れないのかな?」
「妾はか弱いのだ」
重いの間違いだろう、ドスッって、今度は蹴りかよ。っていうか、心を読むな。
「ミハエル、こはるちゃんを抱えられる?」
ミカエルは試しにこはるを抱き抱えようとするが、「ちょっと辛い」という返事。そうか。
「僕とミハエルの二人なら?」
とやってみると、なんとか浮かすことができた。でもその程度だ。仕方ない、ここでも奥の手か。
「マイヒメ達、ちょっと降りて」
と猫と武器を外して身軽にしていく。
爺さんずにちょっと向こうを向いていてもらう。そして、僕自身とミカエルに強化魔法をかける。これ、体の機能が上がる反面、代謝が上がるし、筋肉痛はくるしで辛いんだよね。
で、二人でこはるちゃんを持ち上げる。お、なんとかなるな。じゃあ二人で持ち上げて登るか。
まずはこはるを布で包んでと。布が持つかな。その両端を僕とミカエルに結ぶ。バランスが悪いけど仕方ない。これで登ろう。
幸いにも、九十度以上には切り立っていないし、手足をかけるところもあった。
「こはるちゃん、登るのは試したことあった?」
「あるが、妾が足をかけると崩れるのだ」
とのこと。
これも突っ込まないでおこう。なんとか、落ちないように、声をかけつつ、一歩一歩登っていく。落ちたらどうなるかな、と考えていると、
「落ちたら妾が助けてやる」
と、こはるちゃん。
「お願いします」
と言っておく。




