高等学園ー6
僕たちは部室を得て、順調に高等学園生活をスタートさせた。
え、本業の方はって? もちろん、僕ら四人には隙がない。ちゃんと勉強しているし、いい成績もとっている。武術の授業もほどほどにやっている。
僕たちは十三歳になった。また、春が終わった頃に、子猫八匹の魔力ぐるぐるも例年どおりだ。時差で産んでくれないかな。
それに、キザクラ商会も順調だ。この六年間、京子ちゃんの服ぐらいしか新しいものもなかっただろうに。
コンロやランタン、また、お湯の出る装置などもいまだに順調に売れている。
さらには、アイドルやバンドといったエンターティメントビジネスも軌道に乗っており、ロッテロッテ以外は、地方都市でのコンサートや、有力貴族のパーティなどに呼ばれる予定となっている。もうちょっと曲を増やしてからとのことだった。
とはいえ、そろそろ何か考えようかな。目標の一つは相も変わらず電気である。これは、動力、例えば風とか水とかがあれば、磁石とコイルでなんとかなる。ただ、安定して供給するためにはどうしたらいいか、僕にはわからない。となると、やっぱり、電気の魔法陣か。魔法陣ね。
実は、部室争奪戦の時に、魔道具で水を飛ばしたことについて、魔法研とか先生方とか、多くの人に囲まれた。ローゼンシュタインとキザクラ商会の共同開発なのだが、まだ商品化していない、と誤魔化した。なぜか、第三試合に使った魔法のことは聞かれなかった。一切。
そうそう、この王国に大きな出来事があった。突然また、国王が引退してしまった。そのため、アンディの父、アルカインが国王を継いだ。アレックスはたった六年間の王位だった。
そうして、四ヶ月がたち、明日から夏休みという時、僕らの部室に二人の年老いた冒険者と一人の中年の冒険者がやってきた。アンディがぎょっとした顔をして固まっていたが。
「ひい爺様、お祖父様……」
「おう、アンドリューか、ここにおったか。とりあえず、席をはずせ」
「え?」
「わしらはちょっとこの四人に用事がある。だからちょっと時間をくれ」
「はい……わかりました」
と言って、アンディ以下七人は部屋を出ていく。皆、こちらをチラチラ見て不思議そうな顔をしながら。バタンとドアが閉まる。
「ちょっと依頼を受けてくれんか」
と僕ら四人に向かって言う。
「いや、断ります」
「聞けよ」
「いえ、僕たちは冒険者じゃありませんので」
「よし行こう」
と言って僕の手を掴んで歩き出そうとする。
「ちょいちょいちょい、どこへ連れていくんですか」
「お前が言ったのだろう、冒険者になれば依頼を受けると」
「いや言っていません。冒険者じゃないから受けないと言ったのです」
「同じだろう。十二歳になれば冒険者になれる。さあ行こう」
と僕は引きずられていく。
ドアを出たところでアンディたちが待っていた。ひきずられる僕を見て驚いていたが。
「どこへいくんですか、ひい爺様」
とはアンディ。
「何、冒険者ギルドだ。こいつらが冒険者登録をするって言うからな、連れていくところだ」
「言ってない」
「登録するのは、タダじゃないが、まあ、お前たちなら金も持っておろう」
「金の問題じゃなくてですね」
というか、出してくれないのかよ。
「じゃあ、なんの問題だ? もう冒険者になれる歳だろう?」
「興味の問題です!」
「興味あるー」
と被せてきたのはジェシカ。うんうんとベティとビビアン。
「いやいやいや、じゃあ、ジェシカたちが受けてくれればいいじゃん」
「いや、お前たち四人でないとダメなのだ」
という元国王の一言にしゅんってするジェシカたち。
「では、十二人で冒険者登録して、今回はグレイスたち四人が依頼を受ければいいのではないか?」
とアンディ。お前もかよ。
「そうだー、よし行こう、レッツゴーらいらい研!」
やめろ、その掛け声。
みんな歩き出してしまう。爺さんたちも、まあいいか、と歩き出す。
僕達の意見は?
京子ちゃんたちはやれやれ、って感じでついて行く。
王都の外周近くにある冒険者ギルドに連れて行かれる。八人はノリノリだけど?
受付のお姉さんは僕たちの名前を聞いていく。で、
「パーティ名はどのように?」
と聞いてくる。やばい。何も考えていなかった。だけど、今度こそ、いい名前をつけるぞ! といくつも候補を考えていると、
「らいらい研です!」
とマリンバ隊。
あーあ。決まっちゃったよ。
「では、らいらい研で登録します。まずはブロンズランクからとなります。冒険者の説明を聞きますか?」
と言ってくれるのだが、
「いらん。とりあえず、わしらがらいらい研に指名依頼を出す。その受付をしてくれ」
受付嬢は固まっているが、
「冒険者の説明は、わしらがしておくから早くしてほしい。それと、旅の用意を七人分頼む。すぐに出るから」
「ちょっと待って、出かけるにしても準備がいるでしょう?」
「いや、急ぎなのだ」
「もう、どこへいくのですか?」
「グリュンデールの南の山脈だ!」
「それにしても」
「お前たち、今日から夏休みだろう? じゃあ、いいじゃないか。他のメンバーは後からグリュンデールに来て待っとけ」
「わかりました、ひい爺様」
「はーい」
「いやいや、夏休みは明日からー」
と返事をするメンバー達。うーん。いいのか?
「おい、アレックス、アルカインに手紙を出して、その旨伝え、各家に連絡を入れさせておけ。特にグリュンデールには、学生十二人と老人三名が夏休みを過ごすからもてなせ、とな」
京子ちゃんが引き攣っている。
「よし、そこに馬車を用意しておるから、早速行くぞ。アンドリューは、後から残りの子達を無事にグリュンデールに連れてこいよ」
「は、かしこまりました」
おい。夏休みの予定、決めちゃってよかったのか?
結局馬車に荷物と共に放り込まれる僕ら四人。老人達は御者台に座って馬車を操るようだ。
まあ、若者と老人が一緒になっても会話が続かないという気遣いかな。
馬車が動く前に、老人たちに気づかれないよう、マイヒメたち四匹が乗り込んでくる。流石に、馬車について歩くのは辛い。
僕は、よくきた、と撫でてやる。しばらくはなでなでしてやれるぞ。
グリュンデールまで、馬車でおよそ三日間程度だ。馬車は適当に休憩をとりつつ進んでいく。
本来なら、ところどころで盗賊とか出るはずなんだけどなー。と言ってもフラグにもなりやしない。途中、街や村に寄りながらの旅だったけど、順調にグリュンデールに近づいていく。
三日目、グリュンデールの領都が見えてきた。おー、七年ぶりかな。あの時は、馬車にちょっと酔ったな。と、思い出していると、領都を素通りした。
「え?」
そのまま先に進み、領都からさらに一日かけて、山脈に近い村に到着した。爺さん達、もう爺さんずでいいや、は、宿をとってくれ、部屋に入る。そこへ爺さんずもやってくる。さて。
「どうして僕たちを連れてきたんですか?」
「ちょっと山脈でおかしなものを見つけてな、手伝いが欲しかったんだ」
「僕らじゃなくてもいいでしょう。もっと力のある人とか、若いお姉さんパーティとか」
と、冗談で言ってみる。
「それはそれで考えたのだが」
考えたのかよ。
「お前達にしか頼めなかったのだ」
「爺さん達、嫌われているの?」
呼び方も爺さんになった。
「違うわ!」
と速攻返してくる。
「実はな、というか、お前らわかっているだろう? わしらは冒険者をやっているが、武器としてこれをつかっている」
と言って、魔法銃を出す。そしてすぐにしまう。
「それを知っているのが、僕ら四人だから、僕らにしか頼めなかったと。でも父上とか母上には?」
「引退したとはいえ、貴族を使うと問題が起こる。だから冒険者なのだ」
なるほど。で、
「僕らはどうしたらいいのですか?」
「明日、わしらと一緒に山脈に入ってほしい。面白いものが見られるぞ」
なんて言われたら、興味が出ちゃうじゃん。断るに断れない。ま、ここまできて、今更だけど。
みんなの顔を見ると、うんって頷いているから仕方ない。
「わかりました。明日、山脈に向かいましょう」
僕らは宿の食堂で晩御飯を食べた。老人三人はお酒を飲んでいる。
こんな時には大抵、絡まれるっていう、テンプレがあるはずだが? この村の冒険者はそこまでの気概がないのか? たかだか十三歳が四人だぞ。
まあ、残念に思いながら、その日は寝た。




