高等学園ー4
試合当日。午前午後と授業を受けて放課後。グランドにやってくる。
相手はすでに待っていてやっぱり五十人以上いる。
グランドにはすでにコートが描かれており、その中央に魔法研とマーレ先生が待っていた。、
ついでに、グランドの観客席には、たくさんの生徒と先生。面白がっているに違いない。
「よく逃げ出さないできたな」
と不良上級生。
「逃げ出す理由がないぜ、上級生だからって遠慮は……してやろうか?」
ボールズって、意外とあおるんだな。
「結果が全てです。僕らは負ける気はしません」
と魔法研の部長。
「そうですね、よろしくお願いします」
と僕は、やんわりと挨拶をしておく。
先生が確認する。
「対戦するのは魔法研とらいらい研。では、そこに棒が二本あるから確認して持っていけ」
魔法研は譲ってくれるのか、僕らに選ばせる。ま、どっちも変わらなかったけど。
僕とボールズは棒を持って自陣に向かう。その後方に棒を立てて、第一試合はボールズに持っていてもらう。先生が告げる。
「準備はできたかー」
「すみません、ちょっと待ってください」
と、僕らは配置につく。先頭にアンディ。そして、横断幕をクララとケイトが広げてもつ。その脇にマリンバ隊とリリィ。僕らは横断幕の後ろに均等に並んで配置する。
この横断幕には、デカデカと「らいらい研参上!」と書いてある。いわゆる陸上競技場とかに応援のために掲げられているあれだ。
「用意ができました、が、一言」
とアンディが先生に告げる。
「我ら、らいらい研、参上!」
と、アンディが声を上げる。よかった、この役じゃなくて。
先生も相手も呆気に取られていたが、なんとかこの世界に戻ってくる。
さて、相手は、五十人以上、すでにこっちへ手のひらを向けている。合図とともに無詠唱魔法でも打ち込んで来るつもりだろう。
「よーし、いいかーそれでは始めるぞ」
と確認をとるマーレ先生。僕らも気合を入れる。
「それでは、始め!」
と同時に、アンディの合図。
「てー」
ドゴーーーーン
と四発の巨大なウォーターバレットが敵陣に突き刺さる。それだけで、何人もの生徒が吹き飛んだ。
「てー」
ドゴーーーーン
「てー」
ドゴーーーーン
「てー」
ドゴーーーーン……
「「「ウォーターバ…………」」」
「てー」
ドゴーーーーン
相手も無詠唱で撃とうとするが、魔法陣の速さにはかなうまい。
相手の生徒が十人を切ったことを確認し、アンディが叫ぶ。
「突撃ー、グレイスたちは敵を見ながら撃ってよし!」
と言ってアンディたちが突っ込む。僕らは、少なくなった相手を狙って撃っていく。
さらに減ったところで、かなでとミカエルも参戦。乱戦に突っ込んでいく。
最終的には、棒に飛びかかろうとしたアンディを飛び越え、かなでが棒の上の方へ飛びつき、倒した。
「よし、勝った!」
攻めていたみんなも走って戻ってきて、勝鬨を上げる。
「イェーイ」
と、ハイタッチをしていると、魔法研から、
「審議!」
と言う声。何かと思って振り向いたら、部長と不良上級生が先生に詰め寄っている。
先生が僕たちにおいでおいでをするので、近づいてみる。
「第一試合は水魔法のみの使用だろう!」
と不良上級生。
「だから水魔法を使ったじゃないですか」
「お前たちは水魔法を使ったんじゃない魔道具を使ったんだ」
あ、ばれた。さすがは魔法研。僕のことをよく調べている。
「いやいや、魔道具をとおして水魔法を使ったんです。水魔法でしょう」
「魔道具は道具だろうが、反則だろう!」
「知っています? 魔道具って自分の魔力で魔法を出すんですよ。つまり、自分で魔法を使っているんです」
「魔道具は道具だろう。しかもあれ、横断幕じゃねえか。道具だろう!」
「魔道具は魔法だって言っているでしょう」
ウォーターバレットの魔道具なんて、隠し球を使ったのだ、譲るわけにはいかない。実際、観客たちも、この魔道具に気づいたようだ。ちなみに、透明なインクで描いたので、魔法陣は見えていない。
これについて、追及されるのはまずい。僕は手を挙げる。
すると、クララとケイトが横断幕を素早くたたみ、地面に置く。そこへマリンバ隊が魔法で火をつける。
「あー」
「あれはなんだったんだ」
「調べさせろ」
などと、観客だけでなく、魔法研からも悲鳴が上がる。だが、知ったことじゃない。それよりもこっちだ。
「先生、いいですよね、あれは魔法を使ったんです。だから僕らの勝利ですよね」
と、詰め寄る。
「らいらい研、あの魔道具はなんだったんだ? 教えろ」
とマーレ先生。なんか口調が違っている。
「断る!」
と僕は断言する。しかし、失敗した。
「らいらい研が道具を使ったことにより、反則負けとする!」
マーレ先生は、魔法研に向けて手を上げた。
なんだと!
僕は、がっかりして項垂れる。
魔法研は「それ見たことか」と得意げな笑みを浮かべる。
くそー。後が無くなった。
「グランドの水を抜くまで少し休憩する。十分後に第二試合を行う。それまでに集まるように」
僕らは、いったん競技場の与えられた控室へ戻る。
「ちょっと、どういうことよ、なんで反則負けなの?」
リリィが怒っている。お怒りはごもっともです。
「魔道具がと言うより、横断幕が道具とみなされたみたいな感じ」
としょぼんとする。
「まあ、仕方ない、次は物量戦だ、気合を入れよう」
とアンディが慰めてくれる。まあ、嘆いても仕方ない。いくか。
第二試合のためにグランドへ戻る。
配置について、今度はミカエルに棒を持ってもらう。残りの僕ら十一名は一列に並んで仁王立ちをする。先生が確認をとってくれる。
「らいらい研、何か叫ぶか?」
アンディが前に出る。
「我らはらいらい研、お前たち魔法研を倒すものなり!」
うん。僕の役割じゃなくてよかった。
先生は、大きくため息をついて、掛け声をかける。
「それでは第二試合、始め!」
とその瞬間、予想どおり魔法研は全員で僕らに向かって走ってくる。
それに対して僕らは、戦闘服のコートを大きく捲る。
先生や観客、魔法研の目が点になる。僕とかアンディとかボールズとかはどうでもいいが、他の女子がコートを盛大にめくったのだ。
そりゃ、見ていた人は固まる。
だが、それだけではない。コートの中から飛び出したのは、我らがマオマオ団。
帝国学園在学中、六年間八匹ずつ魔法グルグルをした猫たちと第一世代である。戦闘能力は高い。
僕は七十二匹のマオマオ団に告げる。
「女子生徒には魅了を、男子生徒には威嚇をして、その足を止めろ! あわよくば、コートから押し出せ!」
それと同時に、アンディが叫ぶ。
「全員(ミカエルを除く)突撃ー」
と。
相手は完全に混乱中だ。しかも、第一世代が相手の生徒にぶつかりながら僕たちの道を作ってくくれる。
棒持ちの生徒も猫に襲いかかられており、試合どころではない。そこをついて、僕らは棒に突撃して倒した。
「よっしゃー」
と、また勝鬨を挙げる僕ら。僕らは走って自陣まで戻り、ミカエルとも喜びあう。すると、
「審議!」
え、また?
また魔法研と先生が話をしている。で、デジャブだろう。
先生がこいこいと手を動かしている。僕たちが行くと、
「この試合は魔法も道具も武器も使ってはいけないことになっている。お前たちの反則負けだ」
不良上級生はまたいいがかりを。
「何を言っているんだ、魔法も道具も武器も使っていないじゃないか、素直に負けを認めろ」
上級生相手に使う言葉ではないが
「魔法も道具も武器もダメってことは、己の体のみで戦うべきだろうが」
「いや、どこに体のみって書いてあった? 書いていないだろう。僕らはちゃんとルールを守っている」
「猫を使っただろう!」
「だからなんなんだ。猫が道具とか武器だと言うのか?」
「そうだ、そんなものを使うのは汚いぞ、反則を認めろ!」
と言うので、僕は、頭に乗っていた、一番若い猫を掴み、先生に渡す。
「先生。猫は、こんな小さな体で一生懸命生きているんです。ものじゃないんです。道具でも武器でもありません。こんな可愛い子猫に、魔法研はなんてことを言うんですか!」
というと、子猫は、
「にゃーん」
と鳴いて、猫を抱いている先生の手をぺろっと舐めた。先生はちょこっとだけほほを染め、
「勝者、らいらい研!」
「よし!」
勝った。
「ちょっと先生……」
と言っている声が聞こえるが、無視だ。
僕は、先生から猫を返してもらい、メンバーの元へ戻った。
「今度は勝ったみたいね、全く、往生際の悪い」
とリリィ。
「本当だよ。僕らはルールをちゃんと守っているのに」
と僕。
他のメンバーは、勝ったと言うのに、若干引いている。現実に戻ってきたらしい。勝てば官軍だろうに。




