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王立学園ー15

 さて、最初はリリィと僕らのバンドだ。あの王国祭をみた生徒も多かったらしく、近寄ってくる。

 当然タオルなんて持ってきていないから、お行儀悪くも、ナプキンを持ってくる生徒もいる。知らない生徒は遠巻きに見ている感じだ。


 ミカエルの「ワンツー」コンコンで曲をスタートさせる。イントロの間にボーカルのリリィが生徒たちに話しかける。


「みんなー、卒業おめでとう。卒業イベント楽しんでいるかな? これで離れ離れになっちゃう人もいるかもしれないぞ、ちゃんと告白しておけよ!」


 って。


「お前がなー」


 というツッコミも聞こえる。


「私達は、この前の王国祭の爽旋を見て憧れて、この六ヶ月間がんばって練習してきました。頑張ってここまでできるようになったっていうのはすごい自信です。みんなも学園で頑張ったこと胸に、次に進んでね」


 と言って、歌に入る。

 よかった、みんな寄ってきた。

 サビまで入ってリリィがタオルを回すと、生徒達はナプキンを回している。

 歌いながらリリィは僕の方を見てくる。目が合う。その顔がその笑顔が「楽しい」って言っている。

 よかった。頑張ってやってきて。面白いな、この世界も。よし、楽しもう。

 と、僕はギターを弾きながら前に出る。とはいえ、某映画のように無茶はしない。そこまでのテクニックもない。

 間奏に入ると僕とリリィは並んで、ギターのネックを上下に振ったり頭を振ったりとちょっと調子に乗ってみた。でも楽しかった。


 結局、体感時間ではあっという間に最後の曲になった。実は、オリジナルを作った。ちょっとバラードっぽく。リリィが歌詞を書いた。この前、スタジオでリリィが吐露して泣いた、あの時の気持ちを歌にした。親に決められた人生を頑張って歩もうとしたこと、憧れの人について行こうとしたこと、でもそれが憧れとは違ったこと、何もかも見失ったこと、そんな時に眩しい光を見つけたこと、立ち上がったこと、今も光を追いかけていること、そんな歌だった。

 リリィは気づいただろうか。講堂の隅でクーリエが見ていたこと。だから、どうなるってものでもないだろうし、元に戻ることもないだろう。こうやって、自分の道を進んでいくんだな、なんて、子供をみるおじいさんのような心境になった。それを察したのか、京子ちゃんは笑っていたけどね。


 曲が終わり、


「みんな、私は高等学園にいくよ。一緒にいく人はまたよろしく。違う道を進む人はお互い頑張ろう。頑張って大きくなった時に会えるのを楽しみにしている!」


 あれ、どっかで聞いたな。


「じゃね!バイバイ!」


 って。

 リリィ、次も出番あるだろうに。


 ステージを降りた後、かなでとリリィは大急ぎで着替える。クララとケイトはそれを手伝いに行く。楽器隊は裏で円陣を組む。アンディが声をかける。


「よーし、学園最後だ。失敗を恐れるな! 楽しもう! あの四人を本当のアイドルにするぞ! いくぞ!」

「「「おー」」」


 と楽器隊が舞台に上がる。 

 セッティングをして、舞台裏を確認する。四人が準備できたと合図を送ってくる。

 さっきと同じだ。ミカエルの「ワンツー」コンコンで音楽をスタートさせる。

 マリンバの軽快な音が気持ちを高めてくれる。

 こっちの場合は、ギターはバッキングでオッケー、気楽に行こう。

 四人がステージに飛び出して、右に左に手を振っている。生徒たちからは、


「あのクララ様が?」


 とか、


「ケイト様、かっこいい」


 とか、


「フランちゃん可愛い」


 とか、、


「リリィ、さっきバイバイって言ったじゃん」


 とか言った声が聞こえてくる。

 あ、リリィの額に青筋が。笑顔を絶やさず行こう。

 最初の曲では、四小節ずつ一人で歌っていく。

 残りの三人は後ろでステップを踏んで盛り上げていく。

 一人ずつなので、「クララ様ー」とか「ケイト様ー」とか声がかかる。その度にみな、手を振って答えている。

 サビではハモリも完璧。練習した甲斐があった。間奏では派手な動きのフォーメーションを披露。その度に喝采が起こる。

 今日はペンライトがないので、みな、手拍子だ。それでもたくさんの生徒が集まってくれた。楽しんでくれた。

 やってよかったのかもなーなんて考えていると、あっという間にステージが終わってしまった。みんなで手を繋ぎ、礼をしてステージを降りた。


 こうして、卒業式イベントも終わった。




 イベントの片付けも終えて、帰る。なんとなくみんなでダラダラと歩き出す。


「楽しかったねー」


 とはジェシカ。


「マリンバにハマっちゃったよ」


 とベティ。


「うちら今日も完璧だったね」


 とビビアン。

 で、三人はリリィの前に立って


「誘ってくれてありがとう」


 って言った。

 そんなことを言われて、デレないリリィではない


「これからも一緒になんでも楽しむんだからね」


 って赤くなった。


 マリンバ隊は「じゃ、またね」と言って帰っていく。

 アンディたちも「じゃあ、入学式で」って帰っていく。

 ついで、リリィも帰っていく。


「みんなのおかげで生まれ変わったみたい。ありがとう。入学式でね」


 と言って。




 今日は、卒業のお祝いに、我が家でちょっとしたパーティをしてくれるようだ、身内で。

 シャルロッテ様もきているので京子ちゃんも一緒に帰る。


「六年間、長かったような短かったようなって感じだね」

「うん、いろいろと忙しかったような気もするけど、よくよく考えると、学園の中のイベントって、この最後のイベントくらいだったな」

「しょうがないよ、キザクラ商会のこといろいろあったもん。うちも結構潤ったらしいよ」

「それはよかった」

「工場ができて、人が集まって、街が広がって、農地も広がっていって。その分お父様も忙しかったみたいだけど、お祖父様が工場のことをほぼほぼやったみたいで」


 と笑う。


「音楽活動も楽しかった」


 と話を変えてみる。


「みんな楽しんでくれたね。喜んでくれたね。すごかったねって」


 と京子ちゃん。


「ついには、自分達がアイドルになっちゃうなんて」


 と言ってかなでをみる。かなでは照れているけど。


「エルフさん達もキザクラ商会で衣類を販売したの、喜んでいたね」

「でもエルフの服をプロデュースしたの京子ちゃんだよね」


 ふふって、笑いながら、


「昔の知識を使ってって、ちょっとチートだけど、喜んでもらえてよかった。ずっと言っていたもんね、技術で人に楽しんでもらいたい、喜んでもらいたいって。陵くんの夢、叶ってるね」


 と。


「そうだね。みんなのおかげだよ。でもね、僕はやっぱり、魔法を使えることが嬉しかったのに、この六年間あんまり魔法を使った技術開発してなかったな。と思って」

「今度は何作るの?」

「この前話をした電気も作ってみたいでしょ。でもこれは魔法がなくてもできそうなんだよね。後はやっぱり空を飛んでみたいかな。移動を早くしたい」

「京子ちゃんは?」

「私は、引き続きエルフの服のデザインもいいな、何せ、スタイルいいからね、あの人たち。それから、お菓子はもうそれなりにあるみたいだから、農業関係とか? 美味しいワインを飲んでみたくない?」


 こっちの世界のワインをまだ飲んだことがないけど。

 京子ちゃん、まだ十二歳設定だからね。と、思いながらもそんな邪推なことは言わない。


「飲んでみたいね」


 と、すると、


「チーズってあるのかな? 美味しいやつ」

「どうだろうね、作れるかな」

「チーズといえば発酵じゃん。ワインもだけどさ。納豆とか醤油とかは?」

「あー欲しいね」

「大豆、グリュンデールで作っているんだよね」

「それより米は? 日本酒も飲みたいな」


 ふと、僕は京子ちゃんを呼び止め、向かい合う。そして、京子ちゃんをぎゅってした。


「ん? 何?」


 って突然抱きつかれて困ったような京子ちゃん。


「今日さ、ダンスの時、京子ちゃんだけぎゅってしてなかったから、したかったんだ」


 かなでは仕方ないと他所を向く。


「全くもう。私はいつだって陵くんのことが大好きだよ」


 と言って抱き返してくる。


「ありがとう。僕もだ」


 と言って、手を離す。


「ねえねえ、さっきの続きだけどさ、まだまだいっぱいやりたいことがあるね」

「みんな喜んでくれるかな」

「喜んでくれるといいね」


 ふと僕は右手を伸ばして京子ちゃんの左手を握る。

 京子ちゃんと目があうと嬉しくなってはにかんでしまう。

 するとかなでが左手を握ってくる。かなでは僕より背が低いので、見上げてくる。僕はかなでがそこにいることにも幸せを感じて笑ってしまう。

 京子ちゃんが気を遣って右手を斜め後ろにいるミカエルに伸ばすけど、ミカエルは相変わらずの忠誠心で頭を下げるだけで済ましてしまう。

 京子ちゃんは苦笑いをするが、無理やり手を取る。ミカエルはちょっと照れたような顔をしたがまんざらでもないようだ。


 六年生を卒業した仲良し四人組。いつまでもこうしていよう。そう思った。


 うちについて出迎えたのは、にやけた顔の大人たちだった。


 僕たちは王国学園を卒業した。


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