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王立学園ー11

 僕は京子ちゃんたちにこそこそっと昨日のことを話す。

 もちろん、ベッドの中でやったとか、シャルロッテ様が薄着だったとかそういうのは全てカットして。

 京子ちゃんはため息をついている。その上で、


「私が歳を取ってもやってね」

「私もお願いします」


 と、かなでまで便乗する。僕は、はいはいと軽く流しておく。

 さて、ステージに視線を戻す。


 二人とも十八、十九と言われてもおかしくない。まあ、確かに三十路すぎでツインテールはちょっとな。

 二人とも長い髪を美しく舞わせるようにキレッキレのダンスを踊っている。

 一曲目が終わり、お馴染みのご挨拶。


「みんなーこんにちわー」

「こんにちわー」

「私たちはロッテロッテでーす」


 おい、五十歳超えているよね、という冷たい目をちょっと向けると、殺気がとんできた。危ない危ない。

 シャルロッテ様が紹介する。


「こっちの金髪ツインテールはリゼでーす」


 交代する。


「こっちの銀髪ストレートはシャルルでーす」


 と。

 ま、いいか。偽名だしな。


「みんなーよろしくねー」


 と、二曲目に入る。この二人は、昔から仲がいいし一緒にいる時間も長いせいか、息がピッタリでハモリも掛け合いも完璧だ。動きもおおきく速いし、一つ一つ二人の動きが重なる。同じ振りの時は角度すらぴったりなのだ。これが経験の差か。後でアイラちゃんと四妖精に持って行かれたことを謝ったら、


「いえ、あの二人は、私たちにとっても憧れでもあり目標なんです。いつかあそこまでのダンスをできるようになりたいです」

「あそこまで息のぴったりな歌とダンスをしたいです」


 など、彼女たちからも憧れの言葉が出てきた。

 まあ、よかったよ。やっぱり目標があったほうが頑張れるし、これからも上達していく。彼女らの後に後輩も入ってくるだろう。

 それにあの二人は人だ。エルフより早く引退を迫られるだろう。うんきっとね。というか、あの二人は続けるのだろうか。


 さて、二人のステージは進んでいき、最後の曲になった。


「みんなーありがとう! これが最後の曲になります。もしよかったら一緒に歌ってください」


 と、初見で歌わすのか? と思っていたが、なんと最後にバラードかよ。


 サビの部分では単純なメロディと簡単な歌詞の繰り返し。ペンライトを左右にゆっくりふる。会場全体が一体となっていく。向かいでは国王様もペンライトを振っている。


 こうして、曲も終盤になり、ロッテロッテの二人は、会場に向けて頭を下げている。

 会場は大歓声だ。

 「ロッテロッテー」「リゼー」「シャルルー」なんて声が飛び交っている。

 曲の最後、バンドメンバーが奏でる音楽が最後の音を伸ばしている。


 が、突然、ギターが激しいカッティングを始めた。これに合わせるようにマリンバが音を被せていく。

 ロッテロッテの二人は、両サイドに走って下がっていった。

 あれ、このリズム、と思って横を見ると、京子ちゃんがニヤニヤしている。


 演奏が続いているうちに、ロッテロッテが再び出てくる。なんと、二人とも真っ赤なドレス。

 リゼは髪を下ろして、まるで、シャルルと並んで金と銀の双子のようだ。

 そして、楽器演奏の中、二人はポーズを決めると、タイミングに合わせて、足を踏み鳴らした。

 ダ、ダン、と。

 右手にはカスタネット、左手はスカートをつまんで。あー、これはフラメンコだ。だけど、楽器が違う。かなりバンドサウンド寄りになっている。

 二人とも今度は真剣な表情で全く笑っていない。それでも会場に、観客に、視線を送っている。

 ステップを踏むたびにヒールがリズムを刻み、腰を振るたびにスカートと髪が揺れる。ターンをすれば髪とスカートが大きく円を描き、汗が舞った。

 二人の踊りも静と動、動と静、動と動、美しさや艶やかさを超え、もはや神々しくあった。

 そこに歌はない。二柱の神がひたすら音と踊りで観客を魅了していく。

 事実、観客席からは、唾を飲む音すらしない。そして、誰からか胸の前で手を組む人が出ると、それが広がっている。観客達は、リゼを見ているわけでもシャルルを見ているわけでもない、ただただ、二柱の神の舞に魅了されている。


 そして、ついに曲が終わる。

 リゼとシャルルの足が奏でる音、「ダ、ダン」という音と共に、演奏も終わり、リゼとシャルルは身動きもしなせずポーズを取り続ける。

 会場全体が静寂に包まれていた。観客は見つめるのみだ。


 リゼとシャルルが動き出し、観客の意識が戻ってくる。二人は手を繋いでステージ真ん中の前まで歩いてくる。

 そして、アイドルの満面の笑みを持って、会場に大きく礼をした。

 その瞬間、会場は爆発が起こったかのような歓声が上がった。

 泣いている観客もいる。ただただ見つめている観客もいる。それでも、歓声はこれまでの誰によりも大きく、ロッテロッテに届けられた。

 

「ロッテロッテ様ー」「リゼ様ー」「シャルル様ー」


 もう、呼び捨てをするものはいなかった。

 この日、二柱の神がこの王都に顕現した。信者はこの会場にいた、たった千人程度だろうけど、今後は増えていくに違いない。


 僕もちょっと冷静になり、ロッテロッテに本当に持っていかれた、ロッテロッテに負けたことに悔しさを感じながら、京子ちゃんを見ると、笑顔でVサインを向けてきた。

 あまりに京子ちゃんが可愛かったので、悔しさより満足感を得てしまった僕は、唇の動きだけで、「負けたよ」と敗北宣言をした。


 全てのステージが終わった後、再び幕が開く。カーテンコールだ。キザクラ商会関連が全員揃って手を振っている、最後は手を繋いで大きく礼をする。そのまま幕が閉まっていく。


 こうして、最後にはキザクラ商会の独壇場となってしまった。王国祭よ、ごめんね、そしてありがとう。

 あ、僕はまだ仕事があった。グッズ売りだ。


 結論として、戦場があった。回転を早めるためにお釣りがあまり出ないような料金設定にしたが、次から次へとお客が入れ替わっていく。

 何より、ロッテロッテ、いつの間にグッズを用意した?

 この世界には写真がないのでブロマイドは絵である。とはいえ、絵師を雇って前世の某バーチャルアイドルのような絵を書かせたので、人気が出ないわけがない。特にロッテロッテの二人は超人気だった。いいのか、五十すぎと三十すぎだぞ、しかも人だから老けるぞ。

 ぼくは殺気と戦いながら、購入してもらったグッズを袋に入れては渡していく。京子ちゃんたちも同じだ。

 キザクラ商会、もっと人を雇うかな。特にアイドル部門はマネジャーも必要だろうし。

 そうだ、デジタルは難しいけど、レコードはいつか作ろう。あれなら最悪手回しでもいい。その前にオルゴールかな。

 いやー、アイドルビジネスは最強だわ。これだけ人に愛され代わりに幸せを与える職業もそうそうないだろう。

 僕には大満足な結果だった。



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