王立学園ー9
司会がまたアナウンスする。
「先ほどお知らせしましたが、お配りしましたマフラータオルはどうぞお持ち帰りください。さて、次にお配りしますのは、ペンライトというものです。今は会場が明るいのですが、暗くすると光るものです。ちなみに、ネタバラシをしてしまうと、中にはひかり茸が入っており、すなわち生ものです。こちらは、本日お帰りの際に、出口に用意したゴミ箱へ捨てていってください。お持ち帰りになられても、腐ります。先にも言いましたが、次のステージでは会場を少し暗くいたします。どうぞご承知おきください」
僕達もペンライトをもらう。国王様達にも届いたようだ。
「それでは準備ができたようなので、次のステージを始めましょう。それではアイラ・フルールちゃんです! どうぞー」
幕が開くと同時に音楽が流れる。
会場の光が落とされる。するとペンライトが光ってくる。
さっきとは違ってマリンバ隊が頑張ってより明るくアップテンポの楽曲を奏でている。
アイラちゃんが左の袖から出てくる。満面の笑顔で手を振っている。
さすがアイドルだ。ステージを所狭しと右へ左へ駆け回り、一階席にも二階席にも手を振っている。
「みんなー、こんにちわー」
って言って、耳に手を当てる。会場は初めてのことなのか戸惑っている。仕方ない。僕らは仲間で合わせて、
「こんにちわー」
と返す。僕らだけで恥ずかしかったが、アイラちゃんはこっちに向かって手を振ってくれた。もう一回やるようだ。
「こんにちわー」
って言ってまた耳に手を当てる。すると、会場から帰ってくる
「「「こんにちわー」」」
の大合唱。すごい。もう会場をつかんだよ。
アイラちゃんは、歌って踊って駆け回って、しかも、手を振ってペンライトの使い方を誘導したり、ものすごい活躍だった。
ステージ終了時には、「アイラちゃーん」って声がたくさん飛び交った。こちらも大成功。さて、最後だ。
「それでは、次もみなさんお楽しみのアイドルグループとなります。今度は四人組ですよ。準備はいいですか? 四人の名前はですね、アイリス、サーシャ、シルフ、ルージェ、それぞれ、ピンク、オレンジ、青、緑の衣装に包まれているとのことです。みなさん、グループ全体を応援するもよし、お気に入りの子を応援するもよし、盛り上がっていきましょう! それでは四妖精の舞です。どうぞー!」
曲が始まると、左右から二人づつ飛び出してくる。しかもステージ中央でクロスして、それぞれステージの反対方向へ、笑顔で手を振ったと思ったら、次はお互い反対へ走っていって手を振っている。四人いると迫力が違う。アイラの時とは違う迫力がある。
「みんなー、こんにちわー」
これはもうお約束なんだろうか。アイラちゃんのおかげで最初から返事が帰ってくる。
「サンキュー、王都マイリスブルグ!」
「イエーイ」
「みんな、ペンライト持ってる? 手を振って応援よろしくね」
「イエーイ」
「それじゃーいくよ! ワンツースリーフォー」
イントロに合わせた見事なタイミング、相当練習したな。
四人は広がりながら歌う。時には一人づつステージの真ん中に出て自己アピールをしながら。
その都度「アイリスちゃーん」とかもう名前を覚えて叫ぶ強者がいる。
彼女らは時に手を振りながら、観客の目を見ていく。それが四人もいるから、結構な頻度で見られていると感じる。これは、観客にとっても嬉しい。
「あ、俺のこと見てくれたよ!」
なんて声も聞こえてくる。四人いると、コーラスも掛け合いもあっていいなー。とにかくアイラちゃんからの流れもあってか、盛り上がりはすごかった。最後の曲も終えて一安心。僕は椅子に座って大きく息をする。
「爽やかもよかったけど、アイドルも良かったよ。大成功じゃない?」
と、京子ちゃん。意外と興奮気味。
「そうだねみんな頑張っていたし、ものすごく完成度が高かった。ここまで仕上がるとは思ってなかったよ。」
「ちょっと私もやってみたくなりました、アイドルを」
ってかなで。
「そうだね、卒業イベントで仲間を募ってやってもいいかもね」
と、京子ちゃん。意外だ。
君たち、実年齢結構いっているからね。まあ、現世を楽しんでくれて何より。僕も楽しむことにしたよ。
こんなにたくさんの人が喜んでくれて良かったなー。女性にひじで突かれている男性もちらほらいるけど。
さて、やることがある。イベント終了後の販促グッズの販売だ。
と準備のために席を外そうとした時、
「さあ、みなさん、今日最後のステージになります。ここまで、バンド、アイドル、アイドルときて、盛り上がりましたね。最後の最後まで盛り上がっていきましょう!」
と、司会も熱が入ってきたようだ。いいのか? 最後の人たちにそんなプレッシャーをかけて。と思っていた。
「それでは準備ができたようです。みなさん、プログラムでは最後の出演者は「???」になっていましたね。これはスリークエスチョンマークという名前ではありません。隠していたのです。それでは行きますよ!」
と幕が上がる前に演奏が始まる。あれ、うちのアイドルグループの編成と同じだな? うち以外にこれをやるとはどうしてだ? と思っていると、司会が続ける。
「それじゃお願いします。ロッテロッテ!」
は? 僕は固まる。嫌な予感満載。心当たりがある。昨日の夜のことだ。
幕があくと同時に二人のアイドルが左右から飛び出してくる。一人は銀髪ストレート、もう一人は金髪ロングのツインテール。
固まっているのは僕だけではない。隣の京子ちゃんも固まっている。そりゃそうだ。三十をすぎた母親がアイドルになって出てくるとは。
「グレイス君、これ、知っていたの?」
あとでわかったが、これは京子ちゃんの振り。京子ちゃんはこのたくらみに一枚かんでいた。つまり、京子ちゃんは知ってて知らないふりをしている。
「いや、全く。こんなこと企んでいるなんて知らなかった。これなら、キザクラ商会がお金をつんでもトリを取れなかった理由がわかったよ」
「それに、うちのお母さんさ、若返っていない?」
と、これは京子ちゃんの本心からの疑問だろうが。僕は冷や汗が止まらなくなってくる。
「グレイス君のお母さんは、もともと若くて、全然歳を取らないように美しさをキープしていたから気づかなかったけど、うちのお母さんも?」
と。僕はだんまりを決め込むことにした。




