王立学園ー8
衣装も出来上がってきたし、リハーサルも何度もこなした。はっきりいってバッチリだ。どのグループもかっこよく仕上がっている。当日が楽しみになってきた。
僕がお願いしていたペンライトだが、結局持ち手が木材、光る部分が蝋を塗った紙でできている。木材の部分に穴が空いていてそこにひかり茸を詰め込み、紙のパーツをくっつける感じだ。全て燃えるので、終わったあとは回収して焼却処分とする。
今回は、そういうわけで売ることはやめた。
それから、バンド名について、「重厚」改め爽やかな旋律とした。キャッチーなアニソンを中心にするので重厚はやめた。
で、ペンライトは、この爽やかな旋律の後に配って、四妖精の後に回収だな。そういう段取りを決めていく。これについてはラノから実行委員会へ伝えてもらう。
ついに王国祭当日。僕は朝からお疲れモードだが、やましいことは何もない。疲れているからといって、今日はどうしても成功させたいので、気合を入れる。
ヒールを使うっていう手もないではないが、あれ、いざという時じゃないと、自分を甘やかしているだけなんだよね、魔力を使って。だから、基本使わない。そもそも僕らは危ないことをしないから使うことがない。
コンサート会場の裏で待っていると、二人の冒険者がやってくる。二人ともサンタクロースのような大きな袋を持っている。
「よう、元気だったか?」
「はい、元気です。今回はこんな雑用をお願いしてしまって申し訳ありません」
「まあな」
と小声になって
「元国王と元宰相にこんなことをさせるのはお前だけだ」
と。
冒険者家業を楽しんでいるようで何より。
「ひかり茸を持ってきたが、これで足りるといいが」
「十分だと思います」
「で、これ、どうするんだ?」
と聞いてくるので、ペンライトを一つ作ってみる。が、あれ?
「この茸、光っていませんけど?」
「日中、というか、光が強いところでは光らんぞ?」
というので、暗いところへ持っていく。おー、薄緑色に光っている。試しにぶんぶん振ってみる。
大丈夫、壊れはしない。木の柄につめた茸が遠心力で飛んでいかないかと心配になったが、大丈夫そうだ。
「使うのが夕方なら、昼間は明るい日陰にでもおいておいたほうがいいぞ。数時間はもつだろうが、今から光らせたらお前が考えているイベントが終わるまでもたないかもしれない」
なるほど、直射日光はだめ、乾燥させてはだめ、ってことか。
「何に使うか知りたいです?」
「洞窟にでもいくわけではあるまい。それを大量に使うのだな?」
「詰めるのを手伝ってくれたら、お教えしますよ。っていうか、手伝ってくれなくても、この会場で見ていればわかりますけどね」
と、手伝わせようとしたことを反省しつつ言ってみる。
「まあ、暇だし、手伝ってやるよ」
と。あ、元国王様と元宰相様が。ありがたい。僕ら四人で千本はちょっと辛いと思っていた。
ひかり茸と材料を持ってコンサート会場へ入っていき、空いている部屋を借りて作っていく。
途中、メイドが見かねてヘルプをよこしてくれた。きのこを詰めて組み立てていくだけ、とはいえ、ぶんぶん振っての安全性チェックも行なっていたのでそれなりに時間がかかった。
作り終わったのは午後三時だ。僕らの出し物は、最初の爽やか旋律が午後四時。そこから三十分ずつ合計一時間半。大トリを取れなかったのは痛かったな。イベント終了は午後六時だ。
実は、こっちはもう準備してあるのでいいのだが、爽やか旋律の前にも会場で配るものがある。これはお土産に持っていってもらう。販促だ。
ペンライトと販促グッズを配ってもらうのをメイドたちに任せ、僕らは観客席に行く。
間に合ってよかった。僕らは二階席だ。
スポンサーとしていい席を用意してもらった。僕らの席は会場から見て右側だった。そのため、真正面に左側の席がある。そっち側の人たちと目が会ってしまった。
現国王様と王妃様。
こっちに頭を下げてきたのは、こっちに元国王様と元宰相様がいることに気づいたからか。それを見ていて勘違いする人たち多数。そりゃ元国王様と元宰相様が冒険者みたいな格好をしていると思う人はいない。
よって、現国王様たちがキザクラに頭を下げたと勘違いする人多数。
仕方ない、元国王様に手を振ってもらおう、と思ったが、冒険者であることをバラしたくないと却下される。
うーん。僕は、最敬礼しておく。当然僕の家族達もだ。
そうこうしていると、次は爽やか旋律だ。司会からアナウンスが入る。
「次の発表は、爽やか旋律というグループで、新しい音楽の提供をしたいと意気込んでいます。この後の三つのグループはキザクラ商会の所属となっています。演奏の前に、キザクラ商会から皆様にプレゼントがあるそうです。係のものが回りますので、受け取ってください。プレゼントはマフラータオルというちょっと長いタオルで、爽やか旋律さん達は、これを振り回して応援してほしいとのことです」
メイド達が会場中にマフラータオルを配っていく。タオルには爽やか旋律の文字が書かれている。爽やかっぽく、緑色だ。
「さあ、演奏の準備ができたようです。それでは始めましょう。爽やか旋律の演奏です!」
といって幕が開いていく。
「ワンツー」
コンコンとドラムの合図で演奏が始まる。
「こんにちわー、爽やか旋律です。今日は、ノリノリで楽しんでいってください。できれば立ち上がってマフラー振り回してくれると嬉しいな」
ってボーカルのエルフ。
「おおおー」
って歓声が上がる。全員エルフの女の子なのに驚いているのだろうか。それに、ものすごく可愛い。
だけど、実年齢はしらんぞ。エルフは年齢が違っても見た目はほぼ同じに見える。
ステージ上では後ろの右にドラム、左にピアノ、左前にベースとギター、右前にもギター、そして中央にボーカル。
ボーカルはリズムに合わせて飛び跳ねながら頭の上で手を叩いている。観客にも促しているのだろう。
だんだん、観客も手拍子を打つようになった。タオルはノリノリになってからでもいいだろう。演奏しているみんなもノリノリで楽しそうだ。
さらに、サビの部分ではボーカルがタオルを振り回す。観客も真似をする。ものすごい一体感。こんなに受け入れられるとは思わなかった。そんな感じで四曲が終わり、
「それでは次で最後の曲になります」
「ええー」
って観客から。
ボーカルエルフは嬉しそう。またドラムの合図で曲が始まる。
が、あれ?
かなり重たい雰囲気じゃない?
ギター二人が足を広げて重心を落とし、頭を振っている。
すると、舞台の袖から一人の女性が真っ青に塗ったギターを持って飛び出してきた。そして、中央に陣取り、同じように頭を振ってギターをかき鳴らす。
その女性、エルフではない。腰まである美しいストレートの金髪。
あれ、母上じゃん。
何をやってんの? っていうか、いつの間に抜け出した?
父上は僕の方を見ているが、僕は顔をフリフリして知らなかったことをアピール。
観客も京子ちゃんたちも目をキラキラさせている。
確かに、母上は実質五十歳を超えており、王都に来ても外出時は仮面をかぶって若返ったことを見せていない。よって、今ステージで頭を振っているのが母上であることを知っている人は少ないはず。
昔の母上を知っている人がいたら、うちとの関係を疑われるだろうか。疑われるだろうな。そもそもキザクラプロデュースだ。
母上が出てきて少しして演奏が終わる。短いインストだったらいい。
で、そこから急にアップテンポの軽快な曲になり、その一曲演奏して終わった。ものすごい歓声だった。成功成功。よし、次はアイドル二連発だ。後一時間、観客を楽しませられるかな?




