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王立学園ー6

 あれから三年が経ち、四年生になった。僕達は十歳だ。

 ちなみに、学園生活は順調でこの三年間SSSクラスを維持した。四人ともね。

 プライベートの方も順調だった。コンロの売れ行きがよく、キザクラ紹介はウハウハだ。火の魔法陣を使ったランタンとかの携帯型ライトやお湯の出る魔法陣を使った水回り設備も好調で、これもお金が入ってくる。

 ちなみに、ローゼンシュタインもグリュンデールも経営がさらに好調となり、他の貴族に疎まれているらしいが、その経済力で黙らせているようだ。

 とはいえ、中立だというのも他の貴族が表立っては大人しくしている理由の一つだろう。


 しかしながら、公爵家と辺境伯家が手を組んで商売をして発展しているのは事実。裏からちょっかいをかけてくる貴族もいる一方で言い寄ってくる貴族もいるようで、一大勢力、つまり派閥を作るのではという噂も流されてきている。

 両家ともそのつもりはなさそうで、噂も言い寄ってくる貴族も無視している。ただ単に、つながりとして両家間で婚約が決まっただけだ。

 何より、魔道具が出回ることで、多くの人々の生活が楽になったり喜んでくれていることが嬉しい。こういったものがなくなっても困るため、両家を滅ぼすことができないことも事実。全ては秘匿されている。




 さて、僕にはやりたいことがある。そのために準備してきた。全て秘匿してきた上で。

 王都では秋に大きな祭り、王国祭が開催される。これはかつての収穫祭に流れを汲んでいるらしい。

 その中で、王都のホールを使って一般市民がパフォーマンスを行うことができる。合唱や合奏、ダンスなどを、学校単位や奥様方の集団、教会などが行うことが多い。


 僕がこの世界に生み出したいもの。それはアイドルだ。とはいえ、僕にそんなものを一から生み出す能力なんかないから、ほぼ前世の丸パクリをさせていただく。そのために、歌詞もメロディも一生懸命に書き出してきた。

 これは一人でやってきた。

 京子ちゃんは興味がないだろうし、かなでやミカエルは知らないだろうし。

 ちょっと困ったのは、前世の歌詞をこっちの言葉に置き換えるとうまくメロディに乗らなかったりした。それをなんとかするのに時間がかかった。

 と、ここまで準備をした。で、あと二年後、十二歳になった秋の王国祭で発表したい。


 休みの日、僕は四人で出かける。行き先は、元木工加工工場の工場長、ローディのところだ。鍛治工場長だったガンツも呼んである。

 この世界には、太鼓はあるがドラムはない。バイオリンやウッドベースもどきはあるがギターがない。ピアノもどきがあってもシンセがない。この辺りの相談だった。

 結論として、ドラムは太鼓を利用して作ることができそうだった。ハイハットやシンバルとかスネアのリムなどはガンツが作る。ギターはベースもどきを真似してローディに作ってもらう。

 ただし、ガンツに相談だが、ギターの弦は金属弦がいい。なければクラシックギターになってしまうが仕方ない。エレキが無理なのはわかるからせめてアコギにしたい。

 シンセはまったくもって無理。だから、他の楽器を使ってピアノとは違う音を出すことにした。作る予定はマリンバと鉄琴。これでいろんな音が出せるだろう。あとは打楽器を色々と考える。


 さらに、キザクラ商会には完全防音のスタジオを作ってもらった。当面僕達の練習用だが、将来的にはアイドルグループやアイドルバンドの練習場とする。

 どうする? 将来的にアイドル学園作っちゃうか? 夢が膨らむ。




 僕達四人は、楽器の制作と同時に演奏の練習をした。僕がギター、京子ちゃんがベース、かなでがピアノやマリンバ等の鍵盤楽器、ミカエルはドラムだ。一年後には両親達に演奏をプレゼンしたい。とりあえず、アイドル曲を再現することを目標することとする。

 そのため、前世のアイドルグループやゲーム内のアイドルグループの曲を再現していく。ついでに、バンド曲も練習していく。基本的にはボカロの曲だ。

 はっきりいって僕の好みに偏りまくっている。半年くらいでなんとか合わせて十曲くらいを演奏できるようになるのが目標。

 その後は、実際のアイドル候補に引き継がせようと考える。その上で、僕たちは曲数を稼ぐことに注力する。




 アイドル候補を集めてもらった。これはキザクラ商会のラノにお願いした。

 なぜなら、アイドルは歳を取らないから、という僕の願望からだ。えっと、エルフをです。

 エルフは二十歳くらいで外見の成長が止まる。同級生たちのような子供をアイドルビジネスに使うわけにもいかない。アイドルは何歳で引退、とかも聞きたくない。そうなると、エルフが一番よさそうだ。


 まずはバンドの方。バンド二つ分のエルフに集まってもらう。鍵盤楽器はマリンバ一台で二人が叩いたりするから多めに担当を配置する。ピアノもあるしね。

 一つ目のバンドは、普通にバンドを組んでもらう。そのために歌がうまいエルフも用意。ボーカルは重要だ。僕にはエルフの顔の差がよくわからないから、とにかく歌唱力重視で。

 もう一つのバンドはアイドルグループのバックバンドとする。


 それから、アイドルの方、こっちは八名に集まってもらった。四人グループを二つで、交互に出演してもらう予定だ。

 このアイドルグループのダンスの振り付けがとにかく困った。

 元曲がわかってもダンスがわからなかったから。これについては、京子ちゃんと一緒に悩みながら一つ一つ振り付けをつけていった。が、結局限界は来る。

 仕方ないので、アイドルグループのメンバー自らつけていってもらう。元々身体能力が高い種族なので、いくつかのダンスのパーツ、例えばステップだったり手のふりだったりを教えることで色々組み合わせたり生み出したりしていった。


 アイドルに対しての僕のこだわりは大きかった。


「いつも笑顔だよ、はいそこ、ツンデレのシーンはそういう顔をしてー、指の先まで意識するよー、そこ、余裕があったら観客に手を振るチャンスだよ」


 などと、次から次へと指示していく。ようは、見ている僕がうれしくなるように振り付ければ、万人にも喜ばれるはず。


 結論から言うと、このアイドル計画だが、エルフたちが歌も演奏もダンスも楽しんでくれたため、かなり前世のアイドルに近づいたと思う。

 あとは、衣装だ。これもキザクラ商会で作ることにする。

 外注することで噂であっても広がってほしくなかったから。衣装の色はピンク、オレンジ、淡いブルー、淡いグリーンなど、パステルを基調に作っていった。フリルの多い広がったスカート、膝上までのソックスなど、そして髪飾りなどを作製していった。




 こうして二年間がたち、僕たちは六年生になった。十二歳だ。体もかなり成長した。僕もミカエルも160センチを超えている。京子ちゃんが160センチくらい、かなでは150センチくらいだ。

 ちなみに、この二年間も学業に励んだよ。商会も発展していったし、大きなトラブルはない。

 世の中は平和だ。多分。

 あ、猫たちだが、王都に来てから五年間で王都中の猫を完全に掌握したらしい。猫ネットワークを構築していた。ちなみに、ローゼンシュタインの領都は言わずもがなで。




 さて、とりあえず勝負の時だ。六ヶ月後に王国祭があり、それにエントリーしたいが、とりあえず、どんな反応が得られるかを身内にみてもらう。集まってくれたのは、僕の両親と兄上、ミレーヌを含む黒薔薇メイド達、京子ちゃんの両親、キザクラ商会の幹部達だ。今日、アイドルビジネスの可否が問われる。


 まず、僕から説明をする。


「僕達は、王都で新しい音楽を作りたいと思ってこの二年間頑張ってきました。特に、出演してくれるエルフのみんなは毎日毎日頑張ってくれました。演奏も歌もダンスも僕にとってとても満足できるものになっています。今日皆さんに来ていただいたのは、この音楽が受け入れられそうかどうかのご意見をお聞かせいただくためです。ダメなら、諦めはしませんがご意見をもとに調整します。よければ、今年の秋に行われる王国祭で、デビューさせたいと思っています」


 と。さらに続ける。


「ジャンルは三つ。一つはバンド。ここでは楽器演奏と歌をお楽しみください。次にアイドル一人バージョン。バンド演奏をバックに、一人の女性が歌とダンスを披露します。最後は、同じくアイドルですが、四人の女性が同じように歌とダンスを披露します。今日は、それぞれ三曲ずつ演奏します。演奏が終わったあと、別部屋に食事を用意してありますので、食べながら飲みながら意見をください。どうぞ、よろしくお願いいたします」


 僕が合図を送ると、まず、バンドメンバーが現れる。ギターボーカル一名、ギター一名、ウッドベース一名、ドラム一名、ピアノ一名の五名体制だ。


 準備ができたところで演奏を始める。

 正直に言おう。アニソンだ。やっぱりキャッチーなものが受け入れられると思い、選曲した。

 ただ、曲調はテンポが早目でちょっと重めなものにした。この後のアイドルの明るい曲と差をつけるためだ。よって、間奏の時などは、ギターの二人が揃って頭を振っていたりする。

 ベースがウッドベースなのが悔やまれるところ。個人的に好きなのだが、動きがない。


 あれ、気づくと全員が立っていた。しかも手拍子をしたり手を振り上げたり。うちの両親、それなりの歳だよね。大丈夫かな。


 このバンドは、かなり評価が良かったように感じる。


 次はアイドル一人バージョン。こっちのアイドル選びは苦労した。とにかく目立つため、アイドル候補で最もダンスのうまい子を選抜した。


 アイドルの子は常に笑顔。ステージを駆け巡り、軽快なステップをふみ、時に激しく、時にゆっくりと緩急をつけ、観客を魅了していく。特に、笑顔で手を振られた男性陣は、ちょっと頬を赤くしている。歳を考えてくれ。

 でも仕方がない。僕がみても可愛らしい。正直かっこいい。かっこいいのに可愛い。これは男性うけがかなりいいだろう。


 最後に四人グループ。こっちも一人バージョンと同じだが、これはこれで可愛い。自己紹介をするように一人ずつ前に出てきて歌ったり、フォーメーションを組んだり、劇のようなふりをしたり。きらびやかでこっちも見どころ万歳だ。四人がそれぞれ違った方向で手を振るので、観客も喜び四倍だろう。


 さて、食事でもしながら意見を聞こうかな。と移動した。

 ところが、意見は意外だった。


「まあ、新しいし、見ていてカラフルだし、喜ぶ人も多いだろう、だがな……」


 と、男性陣はみな、そんな感じ。あんなに鼻の下を伸ばしていたのにか?

 と思ってみていると、自分の妻を気にしているようだ。くそ。別々に話を聞くなり見せれば良かった。逆に女性陣にはそれなりに好評だった。


「最初のは、ちょっとドキドキしましたわ。低い音がお腹に感じられて、かといって、女性のパワフルな歌も素敵でした」

「アイドルというのですね、可愛らしいです。あんな娘が欲しいです。とはいえ、娘があんな感じになったらちょっと悩みますけど。ステージの上で手に届かない、そんな可愛らしさがいいのでしょうね」

「四人でのダンスも素敵でした。一人の場合と比べて迫力があって良かったです」


 と、いう感じ。女性陣がいい評価をしているので、男性陣が調子に乗って、


「あの子が手を振ってくれたんだ、推すわ」


 なんて話そうものなら、肘鉄が脇腹に入っていた。ひどい。


 よし、成功としよう。あ、そういえば、母上の意見を聞くの忘れた。まあいいか。


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