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婚約に向けてー3

 翌日、早速公爵様の下へ向かう。公爵様の屋敷には、京子ちゃんの父親であるパブロ様もいる。

 僕は、京子ちゃんと一緒に、ライター、コンロ、電池、そして魔法銃と説明していった。

 そして、将来のローゼンシュタインとの関係性構築を説いた後、切り出した。


「公爵様、パブロ様、どうか、ソフィリアと僕の婚約を認めていただけないでしょうか」


 ものすごく緊張した。二度目の「娘さんをください」宣言だ。いや、今回は婿入りさせてくれ宣言か。

 結果として、僕らの将来に向けたプレゼンを評価してくれたのか、公爵様は婚約を認めてくれた。

 ちなみに、京子ちゃんの両親であるパブロ様とシャルロッテ様は、娘の意思を尊重するつもりだったらしい。

 ただ、パブロ様は、さりげなくライターと魔法銃をねだってきた。後日用意することとした。

 使用者登録をした公爵様は人払いをした訓練場で何度も魔法銃を撃っていた。やっぱり後で砂山を作る人の身にもなってあげてほしいな。


 公爵様の動きは早く、翌日には、国王様と第一王子、宰相様に会うことができた。第二王子に内緒での会合だが、なるべく魔法銃のことは知られたくなかった。

 しかし、第一王子はこの魔法銃を根拠に王位を継がれることになる。当然第二王子やその取り巻きはこのことを知るだろうし絶対に面白くないだろう。そうなったらその時に考えることにする。

 今は、京子ちゃんとの婚約を認めてくれることが最重要課題だ。


 翌日、国王様に謁見する。王宮には初めて入った。父上は仕事で来ているようだ。

 ちなみに、公爵家の馬車を使って王宮入りした。

 僕たちは王宮の訓練場に通される。初めからここで説明をした方がいい。

 しばらくして、国王様と第一王子、宰相様が現れる。人払いをしてもらっているので、三人だけだ。公爵様と父上が国王様の前でひざまずくので、僕らも倣う。国王様はフランクに、


「人払いもしたことだし、気にするな、楽にして良い」


 と言ってくれ、僕たちは立ち上がる。

 そこで、公爵様が献上品について説明をしてくれる。


「本日はお時間をいただきありがとうございます。今日は、この四人の子供達が開発した新しい魔道具について献上させていただきたく参上しました。その上で、我がグリュンデールとローゼンシュタインの関係について、お願いしたいことがあります。どうぞ、よろしくお願いいたします」


 と。


「うむ。ローゼンシュタインはこれまでも水回り設備で我が国に貢献してくれている。感謝しておるぞ。今日は何を持ってきた?」

「まずは、魔道具について、使用者を限定したいので、それに必要な手続きをお願いいたします。グレイス、頼む。」

「はい。恐れ多いことながら、私の方で使用者登録をさせていただきます」


 と言って、登録を行う装置を出す。


「国王様、この銀盤に手を置いていただけますか?」


 と言って、手をおいてもらう。僕は、二枚のカードを作成する。ついで、宰相様にも二枚、第一王子に一枚作る。


「その小さいカードはなんだ?」


 と聞かれるので、答える。


「このカードに国王様の魔力を登録しました。これから紹介させていただく魔道具を国王様が使うために必要なものです」

「ということは、その魔道具は余にしか使えないということか?」

「はい。このカードを差し込んだ魔道具は国王様にしか、また宰相様の登録をしたカードを差し込んだ魔道具は宰相様にしか使えません」


 この後の魔道具の説明と、両家の経済的なつながりについては、公爵様に説明をお願いする。

 まずはライターだ。


「まずは、グレイスたちが国王様と宰相様に献上したい魔道具について説明します。王子にないのは、王子がタバコを吸われないためです。ですが、必要であれば、用意いたします」


 王子がカードを一枚しか作らなかったこと、ライターは王子の分がないことを不満に思っていないかの配慮だ。


「国王様はタバコを吸われますが、その際、火はどのようにされますか?」


 導入から入る。後は、これまでの過程と同じだ。

 結果として、国王様も宰相様もひどく気に入られ、つけたり消したりを繰り返している。当然王子も欲しがったため、もう一枚カードを作り、ライターは後日送ることを約束する。

 ついでコンロと電池の説明をし、それぞれの部品等、何をどちらで作るか、製造するかなど、両家の繋がりについて話をしていく。

 ここで待ったをかけたのが宰相様だ。


「ただでさえローゼンシュタインは水の魔法陣で力をつけているのに、火でもつけるのか? それでは、勢力のバランスが崩れるのではないか?」


 と。まあ、宰相様として、もっともな懸念だ。


「私もローゼンシュタインも完全に中立であることを誓います」


 と父上。公爵様も同様に誓う。これらの技術が王国をさらに発展させていくことを強調する。


「それでも疑われるのであれば、残念ですが、王子に献上したかったこの品は持ち帰らせていただきます」


 と公爵様、強気だ。当然国王様が置いて行けと言ったら置いていかないといけない。

 国王様は、なぜここに第一王子のみが呼ばれたのかを暗に察したのか、宰相を宥めた。


「両家は王家に忠誠を誓っている。それを余は信じておる」

「ありがとうございます。最後の魔道具の説明は、辺境伯からしていただきます」


 と、説明者を交代する。


「それでは説明させていただきます。が、まず、私がすることを見ていてください」


 父上は上着を広げて脇に装着したホルスターを見せながら、そこから魔法銃を取り出す。


「これは魔法銃と言います。同じものが皆様にお渡ししたケースの中にあります。が、今はこちらの説明をお聞きください。まず、このグリップの下にある細長い穴に使用者登録をしたカードを差し込みます」


 父上はカードを出してまた入れる。


「次に、この銃身の後ろにあるレバーを操作して、カートリッジと呼ぶこの筒を挿入し、上のレバーで固定します」


 と言って、レバーを操作してカートリッジを出し入れする。


「このカートリッジですが、二種類あり、今は、赤い印のついたものを入れています。ここまでした後は、この銃身を人に向けないでください」


 と言って、砂山に向けて魔法銃を構える。


「魔法銃の横にあるレバーをバツからマルに向けます。このレバーを安全装置になっており、バツになっているときは魔法が発動ません。では見ていてください。銃身を目標に向けて、この人差し指の当たるところにあるスイッチを押します。いきます。三、二、一、ゼロ」


 でスイッチを押す。その瞬間に青白い炎が発射され、砂山を吹き飛ばす。


「何が起きたのだ?」


 と国王様。


「魔法銃から炎が発射され、砂山を撃ち抜いた」


 と、王子が説明した。理解したようだ。


「代わりに説明いただきありがとうございます。そのとおりでございます。それでは皆様で撃ってみましょうか」


 と父上。公爵様と一緒に三人同時に指導していく。


「三、二、一、ゼロ」


 の合図で三人同時に魔法銃を撃つ。三発同時に撃たれた砂山は激しく吹っ飛んでしまう。


「第一王子様、いかがでしょうか。この魔法銃を使えば、体の魔力が続く限り、いくらでもファイアバレットを撃つことができます。しかも無詠唱です。ちなみにケースに入っている青いカートリッジを使えば、アイスバレットを撃つことができます」


 と説明したところで、王子は涙を流す。魔法を初めて撃てたことに感動しているのかもしれない。


「王子、次はアイスバレットを撃ってみてはいかがですか?」


 と、父上は勧める。王子は、アイスバレットとファイアバレットを交互に何度も撃っていた。アイスバレットの方が威力は弱いが、強力な武器には違いなかった。


 三人がひとしきり撃ったところで、公爵様が声をかける。


「国王様、いかがでしたでしょうか」

「この発明はものすごいものだ。コンロという調理器具だけでも世の中を改変していくことだろう。それに加えて魔法銃だ。これは、秘匿しないと争いが起こるかもしれない。辺境伯は、これを服の下から出したな。護身用に持ちたいと思うが、やはり隠して持っておくべきだろう」


 と。


「それと、我が息子に魔法を撃たせてくれたことにも感謝する。これで私も安心して退位できる」


 何をおっしゃいますかと皆が声を揃えるが、国王様は気にしない。


「これを持っているものは、何名だ?」

「国王様達三名と、私と息子、それと辺境伯夫妻、それとおそらくこの四人の子供達とその周辺かと想像します」


 と言って公爵様は僕を見る。僕は頷く。


「グリュンデールとローゼンシュタインはこれで武装するのか?」

「私どもも昨日一昨日にこれを知りましたので、まだ考えておりません。しかし、ローゼンシュタインはこれまでも、グリュンデールはこれから、魔道具の販売のために狙われる可能性があります。この魔法銃の製造はローゼンシュタインです。我が領でも導入したく考えています」


 と正直に答える公爵様。


「わかった。ただし、王家に牙を向くことは許さんぞ。とは言ってもこれでは、牙を向かれたら滅びるのみだな」


 国王様は苦笑いをする。ここで公爵様は国王様に声をかける。


「国王様、この偉大な発明を成した子供達に何か……」


 と言いかけたところで、国王様は先に、


「子供達よ、此度の技術開発は見事であった。とても六歳児とは思えない働きである。褒美をとらせたいが、望むものはあるか?」


 と。

 僕は内心待っていましたとお願いをする。


「それでは国王様、僭越ではございますが、お願いが一つだけあります。私と公爵様の孫に当たるソフィリア様との婚約を認めていただけないでしょうか」

「私からもお願いします」


 と、ソフィリアも言ってくれる。


「両家の関係性を考えれば当然だな。グレイスだったか、お前が婿入りするのか?」

「はい、そのつもりです」


 と答える。


「わかった。認めてやる」


 と国王様。ついでミカエルとかなでにも声をかける。


「そちらの二人は、名はなんと申す、願いはあるか?」

「は、私はミハエルと申します。願いを聞いてくださるのであれば、私はソフィリア様に使えたく存じます」と。

「そんなことはソフィリアがいいと言えばそれでいいのではないか? まあいい。で其方は?」

「私はフランと申します。ミハエルと兄妹であり、平民です。そこでお願いがあります。グレイス様の重婚を、平民との重婚をお認めください」


 と、かなで。驚く僕だが、なぜか京子ちゃんはうんうんと頷いている。


「それもグレイスがいいと言えばそれでいい。我が国は重婚を認めていないわけではない。今の世の中が平和で戦争による男の死亡がないから、おおよそ一夫一妻になっているだけだ。特に問題はない。平民だろうが、グレイス次第だ」


 なんてお願いをしたんだ、と思う反面、本音では嬉しかった。


「お前たち、子供らしいと言えばそうだが、もっとまともな願いはないのか? 欲がないというか、なんというか」


 と国王様はちょっと悩んだ末に王子に声をかける。


「アレックス、お前、この子達が大きくなったら登用してやれ。というか、お前にも六歳の孫がいただろう。貴族とか平民とか関係なく仲良くさせろ。もし、平民なのが問題なら、将来二人とも男爵にでもしてやれ」


 と、とんでもないことを提案する国王様。それに対して王子は


「承知しております。私の恩人でもあります。必ずや報いて見せましょう」


 と。公爵様は慌てて訂正する。


「国王様、王子殿下、大変恐縮ではございますが、我が公爵家と辺境伯家はあくまでも中立的な立場。それを忘れないでいただきたい。余計な争いは生みたくありませんので」


 と。


「わかっておる。いざとなったら守ってやる。だから、逆も頼む」


 わかってないじゃん。


「宰相もわかったな」


 と宰相様にも念押しをされた。

 僕としては、京子ちゃんとの婚約に国王様のお墨付きをもらったことで、目的は達した。

 だから、大満足だ。プレゼンは大成功だ。


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