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婚約に向けてー2

 さて、夕食を食べるために食堂へ。王都で仕事をしている父上と兄上も一緒だ。

 実は兄上とは初めて会った。ずっと王都で父上と一緒に勤めており、父上が領地へ帰る時も、王都に残って仕事をしていたからだ。

 兄上はもう二十七歳になっている。金髪で短髪、しっかりと鍛えられた体をしている。文官だよね。そしてとても優しい。

 父上から試験の手応えを聞かれるが余裕だったと答えておく。兄上は頼もしいと褒めてくれる。たわいもないが、楽しい会話をして食事を終えた。


 僕はこれから勝負事が待っている。

 夜、母上にお願いして、この屋敷の屋内訓練場に父上を呼び出してもらう。そして、人払いをお願いする。

 ここにいるのは、父上と母上、僕とサポートのかなでとミカエル。二人にはいっぱい荷物を持たせてしまった。さて、


「父上、お時間をとらせてしまい申し訳ありません。私からお願いがありこちらにきていただきました」

「執務室ではいけなかったのか?」

「はい、こちらの方が都合がいいのです」

「で、願いとは?」

「はい、まず、僕とソフィリアの婚約について、父上に認めていただいた上で、国王様と公爵様に進言していただきたいのです」

「何を言っているんだ。お前の気持ちは分からんでもない。だが、貴族には貴族の勤めがある。国王様にしろ公爵様にしろ、お前の意見を汲む必要がどこにある? ソフィリアをお前に嫁がせなければならない理由なんてないだろう。お前にそこまでの価値があるのか? というか、この場合、お前が養子にいく必要がある。彼方の方が立場が上だからな。公爵がお前を必要とするだけの価値を示せるのか?」


 散々な言われよう。そこで、僕は一つの箱を出す。


「これは、ぜひ、国王様に献上していただきたいものです。私が開発しました。確か、国王様はタバコを吸われると。タバコを吸うときには火はどうしているのですか?」

「ん? 一人の時は自分で魔法を使って点火しているのだろう。お付きがいればお付きが、宰相がいれば宰相がだろう」

「そんな国王様に使っていただきたいものです」


 箱から金属の四角い棒状のものを取り出して見せる。


「これは?」


 と、不思議がる父上に、


「ライターです」


 と、答える。


「使い方をこれから見せますが、とりあえず、これは献上品なので、しまいます」


 と、僕は見せたライターをしまい、ポケットから同じものを出す。


「これは、とある魔法陣を組み込んでいて、僕にしか使えません。献上品については、国王様しか使えないようになります。というか、します。さて、これですが、この横にあるレバーをバツからマルの方へ回します。そして、このように握ります。握るとちょうど人差し指のところに丸いボタンがあります。ちょっと離れていてください。いきますね」


 と言ってボタンを押し込む。すると、棒の先に空いた穴から小さな火が灯った。


 それを見た父上が目と口をいっぱいに開いた、ちょっと見せられない顔で固まっている。

 母上も驚いていたが、復帰が早い。咳払いをして父上を現実に戻す。


「これは、私が開発した火の魔法陣を組み込んであります。私にしか使えないのは、盗難されても利用されないためです」


 と、父上に説明する。


「父上、このライターの開発と献上を持って、進言していただけませんでしょうか」

「これ、火の魔法陣、お前が開発したのか。これはすごいことだ。全く新しい技術だ。ご先祖様が領地をもらい、水回り設備の独占を許されたほどの。いや、ご先祖様は、既知の魔法陣を利用した。だが、これは全くの新規なんだろう?」


 と、父上は絶賛して、しかし、考え込む。


「どうしたのですか?」


 と、父上に問う。


「あのな、これは、本当にすごいことで、どうしたらいいかわからないくらいのものなんだ。それを、この程度の驚きしか示せないのは、どうなのかと自分で思うくらいだ。それくらい動揺している。そのうえで言わせてもらう。これは確かに素晴らしいが、公爵様がお前を必要とする、お前を養子に迎えようとする理由になるだろうか。公爵様のメリットはなんだ」

「僕が販売するために開発したのは、実はライターではありません。こちらです」


 と言って箱から出したのは、いわゆるカセットコンロだった。


「同じく火の魔法陣が組み込んであります。見ていてください。こちらは、使用制限をつけていません」


 と言って、鍋をおく。その中に魔法を使って水を入れる。魔法陣を使ってだ。水の魔法陣を小型化して持ってきて、こんなところで使うことにも父上は驚いているが、今はそれにツッコミを入れている場合ではない。


「このボタンを少し長押しして手を離します」


 と言ってボタンを押し込む。すると、コンロに火がつく。


「このように、薪を使わなくても水を沸かすことができる装置です。これをグリュンデールから販売をしたいと思います」

「なぜグリュンデールからなのだ?」

「ローゼンシュタインはすでに水の設備を販売しています。そこに火の設備まで販売することになれば、より一層他の貴族に妬まれるでしょう。なので、公爵家と協力してこれにあたるためにも、公爵家で販売する。それを僕が公爵家で行うことを提案します。そもそもソフィリアが開発に協力していますので、グリュンデールがかかわるのは当然でしょう」


 うーむと考え込む父上。


「うちと公爵家の関係性を高めるための共同開発とはいいアイデアだ。考える価値はあるかもな。ところで、このコンロという装置、火がつきっぱなしだが、魔力はどうしているのだ?」

「コンロの横のところに小さなスペースを空けてあります」


 と言って、ボタンを押して火を消した後に小さな扉を開ける。そこからまさに乾電池状のものを取り出す。


「これは……」


 と言って、乾電池でいいのかな? 魔力が貯めてある池だから魔力池? 呼びづらい。めんどくさい。電池でいいや。


「電池といい、魔力を蓄えてあります。これを使うことで、魔力が供給されて火がつき続けます。切る時は、もう一度ボタンを押します」

「その電池は、作れるものなのか?」

「はい、これはローゼンシュタインで作ります。というか、現状ローゼンシュタインでしか作れません。作り方は、領都に帰ったときにお教えします」

「これらをどうしたいのだ」

「まずはコンロを安く広く販売します。実際の利益は電池であげます。どちらもグリュンデールで販売しますが、電池については先ほど言ったようにローゼンシュタインで作ります。ただ、この電池は魔力を再充填できます。これはグリュンデールでも行えるようにしたいと思います。ローゼンシュタインの方が効率はいいですけど。新品の電池はそこそこの値段で販売しますが、使用後に買い取ります。そして、再充填品は少しだけ安く販売します。これで公爵には私に価値を感じてくださいますでしょうか」

「その前に、その電池、コンロ以外に活用できるだろう。それはどのように考える?」

「はい、アイデアはたくさんありますが、一気に作ってしまうと、買う方も作る方も混乱します。まずはコンロだけにします。アイデアの部分については、グリュンデールとローゼンシュタインとの共同開発ということになります」

「まあ良い。これだけの開発、先祖の開発した水回り設備に匹敵する。国王様も公爵様も納得してくださるかもしれない」


 ただし、と続ける。


「国王様は今、世継ぎのことで頭がいっぱいだ。時間がかかるかもしれない」

「それであれば、もう一つ献上するものがあります。ただし、こちらについては、国王様も宰相様も公爵様ももちろん父上と母上も秘匿していただきたいです」


 と言って、アタッシュケース出す。


「こちらもライターと同じく使う人を制限してあります」


 しかし、見せるだけでは納得させるのはちょっと弱いかも。やはり、自分で使ってこそ納得するものだ。


「もう一つ装置を出しますが、こちらは、使う人を登録する魔法陣を作る装置になります。父上、ここに手を置いてください」


 と装置の上面にある銀盤に手を置いてもらう。僕がスイッチを押すと、一瞬光る。僕は、蓋を開けて中から小さな金属のカードを取り出す。


「この中に魔法陣が組み込んであり、今、父上を登録しました」


 母上がやりたそうにしている。なので、アタッシュケースをもう一つ出すのと同時に、登録されていないカードを登録装置に入れて、母上の分も登録する。


「父上、母上、それぞれそのケースを開けてください」


 中には拳銃が入っている。とはいえ、この世界に銃はない。しかも銃身が大きく、直径二センチくらいの穴が開いている。さらにケースには、直径二センチで先端に一センチ半くらいの穴が開いている筒状のものが入っている。


「このグリップの下のところの隙間に、先ほど登録したカードを入れてください。そして、次に、この直径二センチ、長さ五センチのカートリッジと呼ぶものを穴が空いている方を前にして、後ろから差し込んでください。このうえのレバーを下ろすとカートリッジがロックされます」


 と説明していく。


「言い忘れましたが、この先端は絶対に人に向けないでください」

「ここからが本番です。まずは私がやります。これは魔法銃と名付けました。これを右手に持って、あの砂山の方に向けます。そして、側面にあるレバーをバツからマルに向けます。で、先ほどのライターと同じです」


 というところで、唾を飲み込む音が聞こえた。僕は


「三、二、一、ゼロ」


 で人差し指でスイッチを押す。その瞬間「バシュ」っと音がして、青白い炎がものすごいスピードで飛び出した。

 魔法のすごいところは反動がないことだ。よって、子供でも難なく撃てる。

 その青白い炎は真っすぐに砂山に突き刺さって砂山を吹き飛ばした。父上も母上も固まっている。


「いかがでしょうか。この恐ろしさがわかっていただけましたでしょうか。ですので、秘匿していただきたく思っています。このケースにはもう一本魔法陣を組み込んだカートリッジが入っていますが、こちらは、アイスバレット、つまり氷が飛び出します。カートリッジを取り替えることで炎と氷を打ち出すことができます」


 父上も母上も魔法銃を恐ろしいものと認識したようだ。父上が聞いてくる。


「今のは炎なのか? 色が青白かったが」

「はい、炎は高熱になると青白くなります。つまりファイヤーボールなどよりかなり高温です。おそらく、鎧などは貫通するでしょう」


 と。父上はまたかたまりかける。が僕は阻止する。


「では、父上よろしいでしょうか」


 と父上を促す。


「まず、銃身を目標に向けます。そして、左手で、この側面のレバーをマルに合わせます。用意ができたら、スイッチを人差し指で押してください」


 父上は緊張している様子。なかなかスイッチを押さない。

 僕を見たり母上を見たり目標を見たり。

 ようやく意を決したのか、目標を睨んでスイッチを押す。

 バシュっという音と共に炎が飛び出す。炎が当たった砂山はやはり吹っ飛ぶ。

 同じように母上も挑戦した。


「あ、撃ち終わったら、レバーをバツの方にしておいてください。安全装置になっています。こればバツに向いているとスイッチが押せませんから」


 と。二人とも一度撃ったらなれたのか、砂山に何度も炎を撃ち込んだ。

 ひとしきり砂山を吹き飛ばした後、アイスバレットの方も試していた。


「これは誰でも使えるのか?」


 と聞いてくる父上。


「はい、先ほどのカードで使用者を登録すれば、その人のみ使うことができます。たとえ、攻撃魔法を撃てない人であっても、これがあれば、魔法で攻撃を行うことができます」


 そこまで言ったところで、父上も母上も、誰を目的にして作ったものか、理解した。父上は


「わかった。国王様に進言しよう」


 と言ってくれた。


「ところで、この魔法銃とライターはまだあるのか?」


「はい、どちらもカードの登録が必要になっています。カードは何枚かありますので、登録が可能です。ちなみに、ライターは献上品として三つ、国王様、宰相様、公爵様に用意しました。それぞれグリップのところに紋章を掘り込んでおきました」


 とライターの入ったケースを三つ出す。


「それと、魔法銃ですが、父上と母上は、その魔法銃をどうされます?」


 暗に返してと言っているのだが、


「国王様たちに説明をするのに訓練が必要だから、もらっておく、ありがとう」


 と先に礼を言ってくる。母上も


「私ももらおう」


 と言い、まだ撃つつもりだ。

 魔法銃だから、魔力が続くまで撃てるとはいえ、撃ちすぎないようにしてほしい。砂山がなくなる。


「父上、それでは、こちらも三セットを献上してください。なお、使用者の登録についてですが、この装置が必要ですが、よろしければ、私が同行して登録を行いたいです」

「わかったそのようにしよう。だが、これは第一王子に使ってもらうために開発したものだろう? 王子のものがないようだが」


 あんまり出したくなかったが、もう一ケース出す。そのとおり第一王子のためのものだ。


「それと、できれば、ソフィリアたち三人も同席できないでしょうか。僕たち四人で開発したものなのです」


 と、もう一つお願いしてみる。


「聞いてみる。荷物持ちも必要だしな」


 と、荷物持ちではない目的を察してくれたようだ。


「だが、最初に公爵様のところへ行き、今日と同じ説明をしてもらう。公爵様が認めてくれない限り、国王様に掛け合っても無理だからな」


そのとおりだ。


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