婚約に向けてー1
そうして、六歳の冬がやってきた。
これまで僕の価値を高めることを目標の一つにしてやってきた。だけど、それだけをしてきたわけでもない。
もう一つの目標は、王立学園に入って四人で同じクラスになること。そのために、この一年勉強をしてきた。
魔力量の測定については如何ともし難かったが、少しずつ増やす方法を見つけた。
また、勉強も必死にした。トップを目指せば同じクラスになることは容易くとも、二番目のクラス、三番目のクラスを目指すのは難しい。ビリのクラス狙いはそもそも入学すら怪しい。そのため、勉強はがちだった。
今年の夏も、京子ちゃんがやってきたのに勉強を中心にした。とはいえ、算術はOK。読み書きもOK。
怪しいのは地理と歴史。そんな項目あったっけ。今年からだって。どこの世界にも変えたがる人はいるんだな。
僕とかなでとミカエルは、馬車に乗って王都に向かう。
が、馬車は途中まで。
王都に向かうのに山脈を二つも超える。しかも、山脈の間は大きな湖がある。
山脈の麓までいき、そこから川沿いを進んでいく。
湖に出たら船に乗り換えて渡り、川を下って、また馬車に乗り換える。
この間三日。
馬車を乗り換えた後、一旦グリュンデールに向かう。グリュンデール領都で京子ちゃんと合流する予定だ。
この行程の護衛は母上と、第二騎士団と黒薔薇十名。黒薔薇はメイドとしてだ。
かなでとミカエルの母親であるミレーヌを筆頭に、モニカ、サリー、アレク、タマラ、カレン、セルフィ、シャトー、マリナ、モティが護衛メンバーだ。
ラナとルナは僕の最重要人物のため留守番だ。
それにマオマオ団第一世代がついてきている。
グリュンデールは川から馬車に乗り換えて二百数十キロのところにある。
つまりは、二つの山脈を挟んだあっちとこっちがローゼンシュタインとグリュンデールだ。
グリュンデールは王都のある広大な大地の南にあるため、それなりに農業が盛んだ。
山脈沿いには森があり、冒険者もたくさんいる。魔獣素材の一大産地でもある。
そのほか、農地としては、麦類が多くを占める。あとは、山地を利用した果樹が多く生産されている。
生産物も似ており、ローゼンシュタインと仲がいい。
特に、ローゼンシュタインの水回り設備がこの街を通して王国中に配送されることもあり、切ってもきれない関係にある。
僕なら、芋も育ててみたいな。なんて思いながら、街を眺めていた。
馬車は領都内に入り、ソフィの屋敷に向かった。
出迎えてくれたのは、ソフィとシャルロッテ様。その旦那様であるパブロ様は王都にて職務についているとのこと。
もうしばらくしたら、この地を継ぎ、公爵になられる予定とのこと。王都で職務についているのは、父上のフリッツと兄上のテイラーも同じである。
今日は、グリュンデール邸でお世話になる。
「テストの対策してきた?」
と、京子ちゃん。彼女は昔からテストが得意らしい。
「してきたけど、ヤマを外すのが僕のデフォさ」
と、僕。
「どんな問題が出るかわかりませんが、グレイス様と同じクラスになりたいです。なれなければ辞めて従者として通います」
と、訳のわからないことを言うかなで。
「ソフィリア様と同じクラスになるために努力しております」
って、ミカエルは、どんなアピールよ。
この数か月の情報交換をして、明日は四人で王都へ向かう。
王都へはここから三日以上かかる。かつては、ここが辺境だったらしい。
だが、我がご先祖様がさらに南の山脈を超えたために辺境でなくなった。
さて、グリュンデール領から、北へ北へと進んでいる。冬に。
と言うことは、どういうことかというと、冬の王都は雪国だ。時には馬車を押したり引いたりしながら、予定より一日遅れで王都についた。
僕ら三人は、父上のいるローゼンシュタイン邸へ。京子ちゃんはグリュンデール邸だ。
受験まであと一週間だ。ラストスパートの勉強をする。
特に歴史だ。この王国の始まりは、様々な国から集まってきた平民達らしい。結局、役職があった方が統治しやすく貴族制度ができ上がってしまった。そういうのとか、各領の特産品をのべる地理も範囲だ。
みんなでトップを狙えるように頑張ろう。
試験当日、学園へ四人で行く。
とはいえ、六歳の子供に付き添いがいないわけがない。四人の付き添いの一人は、母上。ただし、若返ったことがバレないように、銀の仮面をしている。
仮面は銀色で、目のところに細く穴が空いている。鼻も口もないが、スマートというかかっこいい。腕なども出さないように長い手袋をしている。松葉杖は流石に使えないのか、杖を持っている。ただし、この杖は、仕込み武器になっており、鞘を抜けばレイピアになる。この仕込み武器を杖代わりにするなんて、ちょっと贅沢だと思う。
ちなみに、これはこの姿の時の母上のメイン武器だ。母上は普段は黒薔薇団長の姿で、その時は剣を携えている。
そのほかの付き添いは、シャルロッテ様と、アンとミレーヌ。学園の門を抜けて受付まで歩いて行く。ちなみにマオマオ団第一世代は、朝から街に紛れていった。護衛をしてくれるのではなかったか。しかもまだ寒いぞ。
受付を済ませると、子供達だけで教室に入る。ここで試験が行われる。
試験は筆記試験。全ての課題が一度に配られ、二時間で全てを解く。時間がないなら解ける問題から解いていくのがセオリーだが、僕らは余裕で解いていく。あっさりと二時間が終わる。
次に、魔法および武術のクラス分けのための体力測定が行われる。魔力については、測定できる水晶があるらしく、それに触れるだけ。
だけど、体力測定は、グランドを何周も走らされて走った距離で点数をつけられる。次は五十メートルダッシュ。これは時間を測る。そのほか、反復横跳びや懸垂など、前世のころにやったことをやらされた。この辺は世界が変わっても同じなんだな、という感想。こうして試験は終わった。
僕たちは、母上たちと合流して屋敷へ戻った。




