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転機ー5

 遠くに走って逃げていたキート達がこっちにやってくる。


「助けてくれてありがとう」


 と、キートが頭を下げ、他の子供達も頭を下げる。でも、僕は何もしていない。


「僕らは何もできなかった。メイドさんに守られていることしかできなかったよ。むしろ、キート達を助けにいくべきだったんだろうけど、僕にはその力がなかった。ごめんなさい」


 と謝る。


「いや、だって、君達は、僕たちより年下じゃないか」


 僕は、生まれ変わって五歳とはいえ、実質八十五歳だ。だから、今、年下だというのは僕が子供達を守らなくていい理由にはならない。死ぬのは必ず年上からだと思っている。


「あの猫達、君が飼っているんだよね。すごい猫たちだよね。猫達だけでは敵わなかっただろうけど、それでも向かっていって、僕達から気を引いてくれた」


 またちょっと寂しくなってくる。僕は、猫達が頑張ったことすらできない。


「きっと、君の意思を汲んで、行動してくれたんだろう。逃げてもよかったのに。メイドさん達もすごかったなー。猫達もメイドさん達も、君のために行動してくれたんだよね」


 と、ここでキートは間を開ける。


「申し訳ありませんでした。ここまで大変失礼な言葉遣いをいたしました。不敬を働いてしまったのであれば、如何様にも。あなた様に助けていただいた命です」


 僕は違う意味で泣きそうになった。


「身の危険がすぐそこに迫っているのに、キート達は転んでしまった友達を見捨てることもなく、みんなで手を貸しながら、助け合いながら逃げて。それなのに、僕は何もできなかったんだ」


 と、俯く。


「ごめん。ごめん。僕は弱い。助けることもできない。見ていることしかできない。僕は、僕は強くなりたい。キートみたいに仲間を守れるように」


 僕は続ける。


「強くなるから。きっと強くなるから」


 って僕はついに泣く。ものすごく悔しかった。守るべき人達も守れず、何を驕っていたのか。何を今までのうのうと生きてきたのか。守るべき人達を守るために、僕は一体何をしてきたのか。

 すると、ピンッておでこを弾かれた。


「生意気言ってんじゃない。まだ五歳だろう。俺らの誰より小さいじゃん。強くなりたい? がんばれ。それまでは俺らが守ってやるさ」


 と、キートが笑っている。


「いつまでも俺の方が強いかもしないけどな」


 って。

 危険は去ったが、家族が心配しているかもと、みんな、怪我がなかったことを喜んで、僕達は別れた。


「ねえねえ、グレイス君ってさ、自分の歳を理解している? まだ五歳じゃん」


 とは京子ちゃん。


「これから強くなるんでしょ? しかも、グレイス君のやり方で。グレイス君は、人に使ってもらえる、人に喜ばれる、人に愛される技術を作るんでしょ? そんな技術で人を守るんでしょ? 確かに魔獣とかは怖いけど、マオマオ団もメイドさんもみんなで協力すれば、協力してもらえばいいじゃん。弱ければ頼ればいいじゃん。私もフランちゃんもミハエルもいるよ」

「そうですよ。私はいつでもグレイス様のそばにおりますし、露払いはお任せください」


 と、かなで。なぜか猫達と視線をバチバチさせている。


「私はソフィ様について行きます」


 と、ミカエルはマイペース。

 メイドさん達は、子供がませた会話をしていると思っているのか笑っている。


「とりあえずさ、いろんな意味で、いろんな方法で強くなるために、学園行って頑張ろう! その前に、同じクラスになれるように頑張って勉強しよう!」

「おー」




「カレン、セルフィ、アレク、タマラ、今日はワイバーン退治、ご苦労様だった」


 メイド達を労うのは黒薔薇騎士団長。


「まあ、お前達にかかれば、ワイバーンの一匹や二匹余裕だろうけど」

「いえ、今回は、領民や坊っちゃん達、守るべき人が多かったため、私達だけでは退治は不可能でした。衛兵がいてくれたのはもちろん、猫達が一匹のワイバーンを惹きつけてくれていたおかげで、各個に退治できました。猫達のおかげです」


 とカレン。首を傾げる団長にカレンは状況を説明をする。


「お前達と猫達で連携の訓練をしたことはなかったな。それでも、猫達は、すべきこと自ら決め、実行した、と言うことか。つまりは、お前達より、戦況をみえていたと」


 と、団長は考え込む。


「おそらく、猫達を戦力としてみなせるのは、グレイスがらみの時だけだろう。我々は、これからも訓練しないとな、猫達に負けないように」


 と言って団長は笑う。カレンたちも苦笑する。




「キザクラ、今日はマイヒメ達、君の子供達が僕達を助けてくれたよ。ありがとう。子供達を労ってくれ」


 と、部屋にもどり、くつろいでいるキザクラに言う。キザクラは、


「にゃーん」


 とは鳴くものの、それっきり。

 そして、一緒に戻ってきている第一世代と第二世代。彼らにもお礼を言う。


「君達は、ずっと僕達を守ってくれていたんだな、ありがとう」


 八匹の猫はしらん顔を決め込む。まあいいか。僕はそっと、餌の皿に干し肉を置いておく。なかなか取りに行かないが、尻尾を見ていると、気になっていることが丸わかりだ。僕は見ないふりをしておく。


 僕は第三世代を膝に乗せ、一匹ずつ魔力ぐるぐるをしながら考える。

 今日はメイド達が魔法ファイヤーボールを使っていた。火の攻撃魔法があることを知った。予想はしていたけど。

 僕も魔道具を作れないだろうか。

 武器にするのはちょっと嫌だけど、基本的に技術の発展は、武器や色物から入るものだ。

 使う人の倫理観があれば、武器も抑止力になるはず。

 今日みたいな危険も、もっと簡単に排除できるかもしれない。

 やるべきこともやりたいこともいっぱいある。でも、今は、我慢の時なのかな。


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