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二年参り

 さて、年越しが近づいてくる。

 去年、年越しを龍姫神社のイベントにしてしまったこともあり、今年もやらざるをえない。

 この時限定の龍姫グッズも販売されるため、それ目的プラス年越しを祝おうと他の都市からも人が集まっている。おかげで、この領の宿屋は予約でいっぱいになっている。

 ちなみに大変なのは明日奈だ。龍姫神社をまかされているだけに、この祭りの調整をするのは明日奈とベロニカの仕事。露店商との交渉や、グッズの注文など、忙しくしている。

 まあ、前世の記憶があるから、いろいろとアイデアがあるみたいで、それも原因だ。

 その一つがおみくじ。大吉から凶までそれはもうたくさんの文面を考え、そして、活版印刷までドワーフに依頼した。というか、活版印刷をこの世界に持ち込んでしまった。

 これで、本も印刷になってしまうだろう。まあ、これまでも魔法陣は印刷だけど。

 僕は、ついでにこの神社のパンフレットも作ってもらった。


 さて、問題点の一つ。祀られている神様について。

 武神本人と守護神の娘二人がいるのだ。当日、神社にいてくれる方が、客が喜ぶ。

 しかし、まだ生まれて間もない。さつき改めおりひめに相談すると、「そこにテーブルと酒とつまみがあれば、三日くらいすぐだろう」とのことだった。

 おりひめはともかく、トレスとドゥリーが酔ったら、どうするんだ? まあ、気が向いたら顔を出してくれればいい、ということにした。


 明日奈と京子ちゃんとの打ち合わせもある。

 京子ちゃんは昨年、甘酒とミカンを参拝者に提供した。それを今年もできるか、というところだった。

 結論から言うと、今年は生産量も増えており、問題ないとのことだった。

 ちなみに、甘酒はアルコールを飛ばしてしまうので、ドワーフから狙われることはなかった。


 後は、キザクラ商会へ巫女服の発注と、この時のグッズとおみくじ売りのバイト集めだ。

 基本、チームヒスイは行事にかかりっきり。なので、バイトがどうしても必要。しかも三日間かける二十四時間。百人単位でバイトを雇う。

 キザクラ商会の職員、ドワーフの奥さん、そして、騎士団の奥さんや娘さん、そして住民からの募集とした。

 警備はうちの騎士団や神々の騎士団が交代で行うこととした。


 それから、この第二回から変えたことがある。

 明日奈の提案で、どうしてもお賽銭制度を行いたいとのことだった。

 神社の維持にもお金がかかるから、ということだが、僕としてはさつきの神社なんだから、僕が管理費用を出すつもりでいた。にもかかわらず、


「私たちのお小遣いがないじゃん」


 と明日奈はお賽銭制度を導入したのだ。

 でもな、あれ、まとめるの大変なんだぞ? まあ、やってくれるのならいいが、ちゃんと神社の運営費に回すこと、と念を押した。

 明日奈はがっくりしていた。給料出してるでしょ!?


 こうして大みそかを迎える。

 グッズ販売もあることから、二年参りと行かなくても早くから並ぶ人たちも多かった。

 正面の鳥居をくぐって、そのまままっすぐ本殿まで進む。本殿でお賽銭を投げて参拝したら左右によける。

 そこで、甘酒とミカンをもらう。

 後は、おみくじやグッズの売っている売店でいろいろ買ってもらえればオッケーだ。

 はじめの方に並んだ人たちの目的は基本的にグッズだ。というのも商人が多い。ものすごい勢いでグッズが売れていく。商人によっては箱単位で買っていく。

 僕は黙っているつもりだったが、グッズの運搬を手伝うことにした。

 参拝は三日間だけだが、これは、ものすごい儲けになるかもしれないと思った。なぜなら、ちょい高めの値段設定だから。それでも売れる。


 この参拝、何度か盛り上がるシーンがあった。

 一つはおりひめとトレスたちが夜空をとびまわったとき。神が降臨されたと、そこにいた人たちが皆、手を合わせた。ちなみに、精霊たちによるキラキラ付きで。特にトレスとドゥリーは体が金色なので、光が当たると輝く。

 もう一つは、この街に戻ってきていた母上とシャルロッテ様が、“調子に乗って”ドライアとディーネを使って、また神様のように飛び回ったとき。

 地上には降りてこなかったものの、完全に神様扱い。

 跪いて祈る人多数。ロッテロッテは根強い人気があることもわかった。

 来年は、ロッテロッテ神グッズも売ろう。それと、舞台も作るか。母上たちが舞い降りるかもね。

 ちなみに、母上もシャルロッテ様も風邪をひき、僕のところにやってきた。寒空をワンピース一枚で飛ぶから。




 この三日間だが、かなりの人が訪れ、お賽銭もグッズ購入も、たくさんのお金を落としていった。

 やはり人気なのは、お守り代わりのキーホルダーとブレスレットやネックレスなどの身に着けられるもの。ご利益を得るために、買っては身に着けている。

 それと、商人に人気があった、なぜか龍姫神社の狛犬代わりにされた招き猫をデザインしたお札。店に貼るのだと。

 ちなみに、このお祭りの屋台には皆このお札を貼ってある。こっちはただで配った。

 気になった人がその理由を店主に尋ね、興味を持ったようだ。

 左手を上げた招き猫は千客万来、右手を上げた招き猫は金を招くと。まさに商人のためのお札である。来年は置物を売ってみようかな。

 おみくじは初めは売れなかったものの、占い好き女性陣の一喜一憂する声にひかれ、皆が引いていった。

 中には何度も引いて大吉を狙うつわものもいた。明日奈、やめろ。お前巫女だろう? ほら、ベロニカがやってきて連れていく。来年は舞台を作るから何か出し物をやってくれ。


 三日間の祭りが終わった後は、みんなでお金の計算となる。ちょっと数えきれない。

 物販の方はいい。だが、お賽銭の方は銅貨や銀貨が多数。時々金貨。集めては数え、集めては数えと、巫女たちが大変な思いをしていた。


「このお金、どうするんです?」


 と、明日奈が目を輝かせながら聞いてくる。


「まず、グッズ販売の方、こっちはグッズの仕入れやバイトさんのお給料など、かかった費用を引いて残りを来年の経費として取っておく。お賽銭の方は、龍姫神社の修繕費用として一部をキープ。残りは、キザクラ商会のある町の教会が運営する孤児院に寄付だな、龍姫神社の名前で」

「え、私の、いや、私たちの分は?」

「給料を払っているだろう?」

「でも、祝日出勤だし」

「わかったよ。このお祭りを手伝ってくれた人たちにはボーナスをちょこっと出すから、街に落とすように」

「よし。ベロニカー、おいしいもの食べに行く? それとも服を買いに行く?」

「美白化粧品が……」


 ちなみに、グリュンデールに移り住んでからも活動的な似非ダークエルフ。一向に元の白い肌に戻る気配がない。

 化粧品かぁ。作ったら売れるんだろうな。昔読んだ転生物の定番だもんな。

 いかんせん。全く知識がない。誰か、化粧品の知識がある人が転生していないかな。

 こういった自分で建てるフラグは回収されない決まりだ。

 残念。


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