表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

187/376

ステラー3

 真夜中になって、マイヒメが戻ってくる。コマチ、カゲツ、シュウゲツを従えて。各騎士団団長を部屋へ呼ぶ。


「ジェシカ、コマチについて、バニーたちパールを連れて行って。ベティ、カゲツについて、コテツたちオニキスを。ビビアン、シュウゲツについて、チュチュたちガーネットを連れて。僕とかなではマイヒメにつく。現場がどこかわからないけど、僕とかなでが正面。後は、ジェシカとベティはビビアンをフォロー。たぶん屋敷、屋敷を囲むように展開。それから、万が一だけど、ベティ、何があっても動揺するな。ビビアン、チュチュたちは鼻が利く。ステラとサテラの救出を最優先。裏から入って救出を。よし、マイヒメ、連れてって!」


 と言って、動き出す。ちなみに僕とかなでをはじめ、うちの騎士団も仮面をかぶっている。母上と異なり、うちの騎士団の仮面は黒。さらに、鎌のように笑う口があいている。


「殺す!」


 僕は子供達を悲しめるやつを、苦しめるやつを許さない。京子ちゃんを置いてきてよかった。止められたかもな。



 マイヒメ達に連れられて外へ出る。


「ごめんな、マイヒメ達。寒いのに」


 とねぎらう。


「にゃーん」


 とだけ答えるマイヒメ。その背筋は伸び、しっぽはピンと立ち、とても高齢とは思えない。



 深夜だけに物音もせず、僕らの足音だけが聞こえる。正直、足音をさせているところで修行不足かな、それとも、靴裏を変えた方がいいかな。

 そういえば、せっかくだから、靴の裏もゴムにしようなんて考えながら数十分ほど歩く。見覚えのある、邸宅の前に出る。




 さてと、予想どおりか。行った先は旧カールソン子爵邸。今は誰も住んでいない、はず。あの時の全焼から、立て直された。今は誰が住んでいるのかは知らない。知らなくてもいいことだ。

 ベティにとっては実家のようなものだが、動揺していなければと思う。

 僕とかなでは正面の門から入る。ここまで人の気配はない。が、屋敷の中にはちゃんと人がいる。明かりは見えないけど。

 玄関の前に立つ。両手にナイフを握る。かなでも同様だ。屋敷内で狭いため、鎌も刀も振り回しづらい。今回はとっとと殲滅させる。

 かなでとタイミングを合わせる。気配の察知で扉の向こうの広間に何人も集まっているのがわかる。


 かなでがドアを開ける。その瞬間に、小規模爆発魔法を屋敷内に放り込む。かなでが玄関を閉じると中で爆発が起こる。

 これを合図にして三人娘も突入しているはず。僕とかなでは視線を合わせ、左右に散る。

 人の気配がする部屋へ突っ込んでは瞬殺していく。今回は殲滅なので、確かめる必要なし。

 一階を終えたら二階へ。こういった時の人質は地下が基本。なら、上はすべて殺していいはず。

 誰が首謀者かなんて考えても仕方ない。今回の依頼は二人の救出だからだ。

 とりあえず、上階をすべて片づけて最後に数十人が集まる地下へ。

 僕が突っ込んだ後にかなでも飛び込んでくる。数十人がいる部屋の中央まで進み、僕らは背中を合わせて倒していく。正直、問答無用だ。

 そこへジェシカとベティが騎士団を連れて突っ込んでくる。たかが人間が獣人にかなうと思うな。

 コテツ達はパワーを生かして、バニー達はスピードを生かして瞬殺していく。

 そのわきをビビアンたちが通り抜けていく。すれ違いざまにチュチュと目が合うので、先行してビビアンを守るように頼む。

 が、僕がビビアンを侮っていたらしく、ビビアンは先頭に立って、道を開いていく。恐るべし黒薔薇。決して倒そうとしていない。倒すのは、後ろからやってくるガーネットに任せている。


「ビビアン様、次右です」


 というチュチュの声、ビビアンに後れを取りつつも道案内をしながらついて行く。


「ベティ、コテツ、ビビアンについてフォロー!」


 というと、ベティたちがビビアンを追いかけていく。この場がだいぶ落ち着いたところで、


「ジェシカ、バニー、上へあがって、屋敷に誰も入れるな。最終的に、裏から逃げるぞ、退路の確保を」

「ラジャ」


 そう返事をして、ジェシカが上へあがっていく。


 僕とかなではこの場の敵を殲滅して、ビビアン達が上がってくるのを待つ。


 しばらく待つと、目隠しをされ、気を失った二人を連れてくるビビアンとチュチュ。


「よし、ジェシカ達を連れて裏から出て。散開して足取りを取られないようにして、最終的にローゼンシュタインの屋敷に集合で。よし、ゴー」


 と号令をかけると、皆、地上へ駆けあがり、ジェシカたちと裏へと走っていく。コマチ達猫たちも一緒に走っていく。


「さて、どうするかな。これ、全部燃やしちゃってもいいけど、アンディが調べるかな?」

「では、このまま行きますか?」


 と、かなで。


「そうだね。このまま行こうか。僕らの痕跡あるかな?」

「仮面を落とさない限りないと思います」

「おっけ。じゃあ、僕らも裏から出よう」


 と言って、裏から出て、裏通りの狭い道を通って、屋敷に帰った。




 屋敷に帰ると、玄関で待っていたのは母上とシャルロッテ様。


「おい、グレイス、らいらい研の仕事だよな。なんでうちに来る?」

「は?」


 たしかに。


「ごめんなさい」

「まあいい。見られてなければな」


 僕が居間へ行くと、泣きながら抱き合っている姉妹がいる。ステラとサテラだ。


 僕は二人に近づき、そして、仮面を外す。おそらく目隠しをされたままここへ連れてこられ、ここがどこかわかっていないんだと思う。

 僕が仮面を外した瞬間、二人は一瞬固まって、僕の顔を凝視して、飛び込んできた。


「二人とも、怖かったね。もう大丈夫だからね」


 と言って、僕に抱き着いた二人の髪をなでてやる。二人が落ち着いたころ、


「ステラ、サテラ、ここがどこかわかるか?」

「はい、ローゼンシュタイン邸です」

「じゃあ、それ、忘れてくれるかい?」

「え、何でですか?」

「今回、君たちを助けたのはあくまでらいらい研であって、ローゼンシュタインでもグリュンデールでもない。そこを忘れないで」

「はい。わかりました。ありがとうございました、らいらい研の皆様」


 とステラ。


「明日の朝まで、ここで休むといい」


 とは母上。母上は二人を連れて行った。


「ジェシカ、ベティ、ビビアン、今日はありがとう。三人も休んで。パール、オニキス、ガーネットも休みつつ待機で。僕とかなでは明日、アンディに会いに行く。じゃ、そうゆうことで」


 と言って、この日は解散。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ