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ステラー1

 冬の間は寒いので工房にこもって技術開発を続けた。

 妻達も同じ感じだ。妻達は京子ちゃんを中心に服飾部門でデザインを考えたり、試作したり、確認のためのファッションショーを行ったり。

 明日奈は京子ちゃんの服飾部門を手伝いながら、「もしかしたらミサンガも龍姫神社のお守りに使えるんじゃ?」とさつきのカラーである赤を中心としたものを作っていた。

 おみくじも考えたらしいが、印刷技術がまだないのがネックだった。

 それぞれ、自分たちが楽しいだけではなく、買ってくれた人たちが喜んでくれるのがうれしかったらしく、冬の間、みんなはいろいろと開発にいそしんだ。ただ、ドライアとディーネは相変わらず足湯警備隊を続けていたが。




 さて、僕の方。


「グレイス様、エンジンの試作品ができました」


 と言って、どや顔のラナを中心に工房の皆が集まってくる。


「まずは、水平四気筒にしました。電池から魔力線をつなぎ、それぞれのシリンダーに設置した魔法陣を順番に発動させることで、ピストンが下がり、クランクシャフトを回します。それでは実験します」


 と言って、電池とエンジンを接続し、魔力を流すスイッチを入れる。すると、四つの魔法陣が一つずつ順番に発動し、クランクシャフトが回りだす。


「「「おー」」」


 と歓声が上がる。ラナとルナも喜んでいる。成功だ。だけど、


「これ、どうやって回転数を上げたり下げたりするの?」

「「「……」」」

「え。これの回転数を上げたり下げたりですか? エンジンの回転数は一定で、その後、ギアを使って駆動部の回転数を変えるのではなかったのですか?」

「いや、両方だよ。今、回転数はどのくらい?」

「おおよそ一分間に千回転かと思われます」

「それでは千回転から一万回転くらいまでシームレスに上げたり下げたりできるようにしてほしい」

「どうしたらよいでしょうか」

「回転数って何? 多分だけど、魔法陣が魔力をため込んでから発動するまでの時間に依存していると思うんだけど?」

「はい、その通りだと思います」

「ということはさ、魔法陣に流す魔力を増やしたり減らしたりしたら? 一気に魔力を供給したらすぐに発動するでしょ? ゆっくり供給したらゆっくり発動する。それで回転数を変えられないかな?」

「なるほどです。検討を加えます」

「それと、魔法陣は爆発魔法だからやっぱり冷却機能は必要だね。それはどう考えているの?」

「エンジンのひだを多くして風を当てることを考えています」

「あとは、エンジン内に水の通り道を作って、水で冷やす。温まった水を風で冷やすって方法もあるから。それと同時に開発してほしいんだけどさ、というか、一緒にやった方が早い。農作業用の小型の荷車に、そのエンジンを積んでみて。スピードの変化はギアでいいから。スピードは出なくていいよ。地面を走らせるのは危ないからね」

「はい。それはうまくいったら農作業が楽になると思います」


 ラナとルナ、そしてドワーフたち、タイヤを担当するピーター達もやる気になっている。この分だと、来春には農作業用の車ができるかもな。と期待した。




 僕は毎日さつきの下へ通っている。卵の殻の中はどうなっているか全くわからないけどね。だけど、魔力が少しずつ高くなっているのがわかる。


「慌てないでね。ゆっくり育ってね」


 と殻をなでてやる。

 その横で温められている二つの卵も撫でてやる。この子らも順調に育っているらしい。

 多分だが、あの銀髪天使の話を聞く限り、親も自分の意思ではなく転移門につかまってしまってこちらへ来てしまったのだろう。そうすると三つ首のドラゴンも被害者だったのかもしれない。

 ましてや、この卵たちには罪がない。ちゃんと話が通じますように。と祈りながらなでることにしている。生まれた瞬間に暴れてしまうことで殺したくはない。

 この世界が生きづらかったら元の世界に返してあげないとな。でも、転移門、その先はどうなっているんだろうか。それに、こちらから行けるのだろうか。

 大精霊様のところの魔法陣しか見たことがないけど、あの魔法陣と同じところにつながっているんだろうか。アリシアの皇子や皇女がケルベロスを召喚する魔法陣とは違うんだろうか。

 だが、転移門をつついて、今回みたいな三つ首ドラゴンのような手に負えない魔獣が出てきても対処ができない。

 もっと強くなろうと思う。

 それと、倒すための方法を考えるか。この前の方法では、どれだけ命があっても足りない。だが、次がいつかわからないが、それまでにまだ時間があるだろう。

 僕は構想を練り続ける。まあ、今一つ、あれだけの威力を持つ武器は思いつかないんだけど。

 時間があるのかないのかわからないけど、近いうちに開発しないと、二度とあんなことはさせないと、と誓った。




 こうして外での活動量が少なくなってしまう冬が過ぎ、春が近づいてきた。

 屋敷の中でじっとしていた猫達も、少しずつ外に出るようになった。

 京子ちゃんたちは、服飾の開発から農作業の準備に移りつつあった。

 そんな時、


「グレイス様」


 とやってきたのはルナ。


「工房までお越しください」


 と。工房に行くと、工房横の実験場に四輪のバギーがおいてあった。


「グレイス様には荷車につけるように指示をされていましたが、まずは一人で乗るタイプを作りました。まだシャフトの回転数を上げる方法が開発中ですので、魔力の供給を増やしつつ一定にし、このバギーに積んだエンジンは一分間に二千回転となっています。この動力がギアを通して車輪に伝わるようになっており、人が歩くスピードから走るスピードまでギアで変えられるようになっています。ちなみに、荷車ではなく分離したのは、このバギーは荷車を引くだけではなく、田畑を耕す鍬なども引けるようにするためです」

「なるほどね。これ、どこまで実用化されていて、この春には何台が使えるんだい?」

「動かすだけならほぼほぼ完成と言えます。後は問題点の抽出を行っていきます。実際、田畑でも動くことを確認しています。現状、試作品の一台ですが、許可が得られれば、量産いたします」

「そっか、とりあえず、十台作ってみて、ソフィに使ってもらおう。それで現場での問題点を抽出してもらおう」

「承知しました」


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