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夏休み(ステラとサテラそしてヘレナ)-2

 翌日、ローゼンシュタインへ移動する。当然、シンべロス馬車。


「わあー、大きい、かわいい、ふさふさー」

「ふさふさー」


 とステラとサテラ。その後ろをうちの子供達がついて行く。すっかり仲良くなったみたいでよかった。ちなみに、昨日の段階でこの二人は水鉄砲でびしょびょしょにされており、僕に「水鉄砲頂戴」「ちょうだい」とやってきていた。気に入ったようで、腰に刺さっている。


「あれ、魔法銃なんだろ?」


 アンディが聞いてくる。


「そうだけど、実際には水が出るだけなのを出口を絞ってピュってしているだけだぞ」

「まあそうかもしれないが、本物に興味を持ったらどうするんだ?」

「アンディが見せなきゃいいだけじゃない?」

「見せるつもりはない。だけど、水が出るならって気が付くのも時間の問題だと思うそ」

「そん時は、大人になってからって、言ってくれ」

「十五歳でいいか?」

「二十歳だ」


 まあ、アンディが本当に言いたいことは別にある。今朝、アンディは二人にびしょびしょにされたのだ。だから、なんであんなものを渡したのかと。そういうことだ。


 シンべロス馬車はゴムをまいたタイヤ、ばねのサスペンションのおかげで、シンべロスがものすごい勢いで引いても快適で、好評だった。


「なあ、このタイヤとサスペンションさ、うちの馬車にもつけてくれよ」


 とはアンディ。クララ達もうんうんと言っている。


「そういうのはもっと早くいってくれよ。夏休みの間につけておいてもらったのに」

「まあ、乗るまでわからなかったしな」

「それもそうか」


 よし、ゴムタイヤもサスペンションも売れそうだ。ちなみに、京子ちゃんも販促に余念がない。


「ソフィ、その服なんだけど、王都のキザクラ商会で買えるのかしら?」


 これはクララ。


「うん。頼んでくれれば買えるよ。でも、クララはスタイルがいいから、キザクラ商会で売っているエルフ用の服でも入りそうじゃない?」

「そんなことないわよ。さすがにちょっと食べ過ぎると」

「そんな時におすすめなのがこれ」


 といってカバンから取り出すだふっとしたズボン。


「これ、ウエストのところがゴムになっていてね。たくさん食べたいときにも苦しくないんだよ」

「え、すごいわね。結構伸びるじゃない」

「そうなの。ちなみにこれはパジャマなんだけど、ひもで結んだり、ボタンで止めたりしなくていいから楽だよ」

「ねえ、これ、お義姉さんへのお土産に欲しいんだけど」

「ステラとサテラのお母さんのこと?」

「そう。またご懐妊でね。服が苦しいみたいなの」

「いいね。マタニティとしても売り出そうかな。とりあえず、夏休み中に用意するね」


 うん。毎度ありである。



 ドラゴン族に作ってもらった道を通って山を越え、湖の脇を通り、また山を越え、ローゼンシュタインに入る。途中、気になっていることをさつきに聞いてみる。


「ねえ、さつき。さつきたちは何を守っているの?」

「ん? さあ」

「さあって」

「代々守れって言われているだけだからな」

「あそこに守るべきものがあるの? それとも、危険となるものがあるの?」

「さあ」

「緑ドラゴン族たちも何かを守っているよね?」

「そうだな」

「同じもの?」

「そうかもしれんし違うかもしれん」


 煮え切らない回答ばっかりだ。


「そっか。ローゼンシュタインも何かを守っているらしいんだよね。誰も教えてくれないけど」

「教えられないのか、知らないのか、どちらにしても、知る必要がないってことじゃないのか? 少なくとも今は」

「そう」


 と言って、聞くのをあきらめる。銀髪天使が言っていたシュタインの家系も守るなにかも謎のままだ。このあたり、あいつは絶対に知っているだろう。

 でも、さつきが言っているように知らない方がいいんだろうな。藪をつつくようなものだろうし。と納得することにした。とはいえ、銀髪天使許すまじ。かなでを蹴りやがって。僕は根に持つ方だ。




 ローゼンシュタイン領都につく頃には夕方になりつつあった。

 テイラー兄上に挨拶をして屋敷に入る。兄上がアンディ妹を見て目を光らせていたのは見なかったことにしよう。

 だが、兄上に嫁がせるというのもありか? 三十五歳近く違うけど。いや、ないな。アンディに殺されてしまう。今日のところは遅いことだし、風呂に入って晩御飯を食べて休むことにしよう。


 風呂に浸かっていると、アンディが入ってきた。ボールズの近況を聞く。


「ボールズ、来られなかったんだ?」

「ああ、騎士団の方が忙しいらしい。まあ、いろいろあって不穏な雰囲気がないわけではないからな」

「なんか煮え切らない感じだけど、平和が一番だし、暇になるといいな」

「お前が言うとちょっと考えるところがあるが、まあいい。ボールズな、ようやく婚約者が見つかりそうでな」

「お、どんな人なんだ?」

「王妃につく女性だけの騎士団の子なんだけどな。お互いトレーニングが好きらしく、筋トレしているときに出会ったらしい」

「趣味が合うっていいな。でもアンディが自分の騎士団に入れればいいじゃないか」

「自分の騎士団なんてないよ。今回もいないだろう?」

「そういえばそうだな」

「王子なんてそんなもんだ。いなくなっても代わりはいる」

「そんな寂しいこと言うなよ。いざとなったら囲ってやるから」

「そん時は頼むよ」


 


 風呂を出て食事をする。

 母上とシャルロッテ様は相変わらず別室で。

 兄上と僕ら、アンディたち、それと、この時だけは休暇のもらえるマリンバ隊が一緒に食事をとる。

 兄上に近況報告をするが、逆に兄上から愚痴をこぼされる。これまで聞いてきた貴族会議の件。パブロ様と兄上が孤立しているところにアンディが油を注いだ件だ。当事者である僕は何度聞いてもなるようになれと思っている。

 暗い話をしても仕方ないので、明日からの計画について話をする。基本、ビーチで遊ぶ。街に繰り出す。の繰り返しだ。僕は、せっかくだから、こっちの工場の視察でもしておこう。


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